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あれ、100円なんだぜ?
タイトルの言葉は、父が夕食時に言ったものである。
彼の視線の先には、落ちている猫じゃらしで1人遊びしている猫がいた。
うちの猫は、ほぼ毎日おもちゃで遊ぶ。そして、手を抜くことを知らない。
以前はホームセンターで購入した、ドアノブに付けるタイプのおもちゃを採用していた。先っぽには蜂を模したものが付いており、セロハン製の羽が光に反射し、ふさふさしたお尻は結構リアル。そして何より、棒部分の針金がカーブを描いていて、猫が攻撃する度不思議な動き方を勝手にしてくれるのが良かった。
しかし、彼女は野良猫出身であることを最大限に活かし……ているかは知らないが、とにかくすぐに蜂をボロボロにするのである。導入して数日で羽が消え、付いていたはずの鈴の音も聞こえなくなり、ふさふさもどこかへ消え、代わりに謎の黄色い発泡スチロールが出現するのだ。
現在ドアノブに付いているのは確か3、4代目で、それも発泡スチロールしか残っていない。彼女が家にやって来てまだ1年ちょっとである(+壊れてもすぐに買い替えはできていない)ことを考えても、おもちゃクラッシャー……じゃなくて生粋のハンターと言っても良いのではなかろうか。
これでは何度買っても同じことになってしまう、ということで、試みに100円ショップのおもちゃが導入された。本物の羽のような素材と鈴が棒の先に付いている、人が動かして遊ぶタイプのものである。
先代よりもギミックが少なくなったが、そのシンプルのおかげか、結構丈夫なのだ。それ故の「あれ、100円なんだぜ?」である。
人が動かさない間もその辺に置かれているのだが、猫は動かない羽にパンチを繰り出すこともしばしば。今までのセルフおもちゃで1人遊びに慣れたのだろうか……それはなんとも可愛らしいのだが、それを凌駕する光景を私は目撃してしまった。
彼女が持ち手をちょいちょいと動かし、すぐに先っぽの羽へ視線を動かしたのである。
もしや、このおもちゃの構造、因果関係をすっかり理解しているのか。〈棒を動かす→揺れた羽に飛び込む〉という流れは、健気さが雲泥の差なのである。
なのでその姿を見ると、いやいや、私が動かしますよ! という気になってしまう(もしや、それが狙い……?)。持ち手に手を近づけるや否や視線を投げてよこすのだが、その目線は期待に満ち溢れており、端的に言って可愛いのだ。
おもちゃでたっぷり遊べるのは今のうちかもしれないので、できるだけお相手をさせてもらおうかな。食いつきが良くなるような動かし方を……とやっているうちに時間を溶かしすぎないように注意せねば。
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