空腹に負けた朝
これは「人(生き物)はお腹が空くとヤバいんだな」ということを痛感させられた、ある人の朝の話である。
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昨晩から、なんとなく胃の中がカラになり始めているような気がしていた。
しかしもっと空腹な時は痛くなったり眠れなくなったりする。それを私は極限状態と設定しているのだが、そのラインには達していなかったので全く気に留めていなかった。
そして翌日。
私は平日の場合、起床してから朝食まで約1時間半ほどのラグがある。なぜなら夫を見送ってから食べることにしているから。
夫は基本的に朝は食欲がなく、一方私はYouTubeを見ながらゆったり食パン(焼かずにマーガリンを塗ったもの)を食べる時間が好き。なので夫にはメイバランスを飲んでもらい、私は彼の出勤後に冷蔵庫からマーガリンを取り出すのだった。
お弁当作り及び冷ます時間が必要なので遅く起きることはできないし、そもそも早起きしたいタイプなので1時間半前起床というのは変えられない。ということで、空いた時間は普段後回しにしがちな読書を集中的にすることにしている。
その日もいつも通りお弁当を作り、顔を洗い、お腹と太もものシェイプ運動を5分ほど行ない、着替えを済ませた。空腹に苛まれている日はシェイプ運動は中止するのだが、先述のように危機感が無かったのである。ちょっと空いているな〜という感じ。
そして読書の時間。ちなみに今読んでいるのは桜木紫乃さんの最新エッセイ『妄想radio』。桜木さんのエッセイはさっぱりしていて、武士のような強さを感じるというか……。北海道生まれというところに勝手に親近感を覚えている。
ペットボトルのお茶を飲みつつ15分ほど読んだ頃、急に気持ち悪くなってきた。
普通、お腹が空くと「痛い」が先に来る。しかし痛みはないままに吐き気を催すほどの気持ち悪さが襲ってきたのである。どっち?空腹?それとも別の何か??
初めてのことに狼狽えつつ、楽な姿勢を探す。パジャマ以外でベッドに寝そべるのも私服でそのへんに横たわるのも嫌なので、とりあえず椅子に座ってみた。ええ、普段立ち読みしているんですよ。
しかし収まる気配はない。これは一か八か、ミニトマトを食べてみるか……?
ミニトマトは朝食の一部。つまり「朝食前倒し」という苦渋の決断だが、夫が出勤するまでまだ15分ほどあり、それまで待てる状況でないことはさすがにわかっていた。気持ち悪すぎてもはや食欲はなかったが、ミニトマト1個でこの原因が空腹なのかどうかきっとわかるはずと信じ、よろよろと冷蔵庫へ向かう。
そしてミニトマトを口に含んだ。さらに寒いのもよくないのかもとウィンドブレーカーに袖を通し、あったか靴下を装着した。そして膝のことは一時忘れてしゃがみこんでみた。
すると、なんということでしょう。徐々に吐き気が収まってきたのである。
これは空腹だあ!と、食べる予定の個数分をパクパク口に運んでいく。そして日々服用(?)している鉄分グミも噛みしめるように食べた。食パンは意地でもYouTubeと共にいただくという硬い意思でもって、あとはひたすら椅子の上でじっとしていた。
そしてそろそろ出勤という頃、けたたましいアラームの音が鳴った。ミサイル発射のお知らせである。
……ふ・ざ・け・る・な。
幸いミサイル落下の可能性はなくなり私も無事に食パンにありつけたが、そこからなんとなくずっと疲れやすい1日だった。
ミニトマトの個数を増やすべきだったのかな(そこじゃないだろ)。