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とあるバレンタインの舞台裏
私はお菓子を滅多に作らない。
大学生何年生かの帰省中に突如ハマり、マフィンやスコーンを作りまくっていたこともあった。しかし、それ以降はほぼやっていない。
理由は、砂糖やバターの量にゾッとしてしまうから。
ヘルシーなレシピももちろんあるが、食事を作るときでさえ油や砂糖を規定より減らしてしまいがちなのだ。計量が命であるお菓子作りには向いていない。
しかし、さすがにバレンタインは手作りしたい。日頃の感謝も込めて、会う予定のあった友人にトリュフを作ることにした。トリュフは材料も工程も少なく、それでいて美味しい。初心者にもってこいのお菓子である。
それなのに、一波乱あるのが初心者の本領発揮というもので……。
いちごチョコ(可愛いでしょう)を湯煎で溶かし終え、牛乳を入れるときのこと。
レシピには、牛乳は温めたものを絶対少しずつ入れてくださいという風に書いてあった。私は既に牛乳を温め忘れていたのだが、それはまあ百歩譲ることにする(いいのか)。レシピの書きぶり的に、「いっぺんに入れるな」というのが至上命題のように思われた。
なので私は、1Lパックから計量スプーンにそそぎ、少しずつ入れては混ぜるを繰り返した……が、3回目だったろうか、手元が狂い、牛乳がスプーンを通り過ぎてビシャッとダイブしてしまったのである。
最終的に入れたい量からはみ出してはいなさそうでホッとしたのも束の間、どんどん濁った液体が出現してきた。そしてチョコも急に固くなり、さっきまでの滑らかさは跡形もなく消えていた。つまり、分離したのである。
チョコってこんなに繊細なのか……と唖然とするも、なんとかならないものかとスマホに助けを求める。すると、レンジでチンしてかき混ぜるを繰り返すと、戻る可能性があるとのこと。よし、やってみよう!
10秒ほど加熱すると、分離チョコはグツグツと煮えた姿となって帰ってきた。キュートなピンク色が途端に恐ろしく見えてくる。しかしそれに臆せず、サッと手に取ったプラスチック製スプーンを突っ込み、高速でかき混ぜた。
するとあら不思議。スプーンの先がクニーンと丸まっていくではないですか。
まるでハンドパワーかのような、なめらかな曲がりっぷり。一般的なハンドパワーは柄の部分だが、私は先っぽからという高等テクニックである(違う)。
実は以前にも、タッパーの蓋をお皿代わりにしてレンジにかけてベコベコにしたことがあるのに、全く学習していなかった。いや、入れて加熱はしなくなったんですけどね? グツグツ状態に突っ込むのもだめなんですね……。
チョコとは別でハプニング起こしつつ、なんとか分離は改善された。しかし、それの影響が尾をひいたのか、完成したトリュフはさつまいものようにもそもそしていた。さつまいもだったら問題ないのだけど、これはチョコだからな……ううむ、残念。
その後チョコを買い直し、本番に臨んだとさ。ちなみに、いちごチョコは採用しませんでした。売っていなかっただけで、決してトラウマではないですよ?
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