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Photo by
dabchick
この時期からの大仕事
外で大根を見かける季節になった。
ベランダに並ぶ大根、アパートの手すりに連なる大根、木に引っかかる大根……お漬物になる時を静かに待つ姿は、冬までのカウントダウンを示すものでもあるだろう。
そういえば、スーパーでもお漬物用コーナーができている。大きなバケツや専用袋をはじめ、丸まんまの白菜や大容量の赤カブ、そして聖護院大根などの珍しい野菜も並ぶ。
ちなみに聖護院大根は名前しか知らず、丸いフォルムを最初に見た時は白カブだと思ってしまった。なぜこの形に? と調べてみると、普通の長い大根だったものが浅い耕土で育てられ続けた結果、今の形になったらしい。へえええええ。適応能力すごい。本来は京都で作られたもののみを聖護院大根と言うが、今では割とざっくりしているとかなんとか……北の大地で見たこの大根は如何に。
「みんな、”大変なんだから”と言いつつ、毎年気合い入れてこさえて、周りに配ったりするんだろうね」
と母が言っていた。かくいう母はお漬物を作らない(むしろ積極的には食べないタイプ)。しかし、彼女が幼い頃は周りでそういう光景を今よりも多く目にしていたのだと思う。風にたなびく大根の群れや、近所のおばさんが嬉しそうに持ってきたお漬物……普段、母に対してジェネレーションギャップを感じることは少ないが、幼少期の環境は結構違ったんだろうなあ、と思った。
私はお漬物も好きだが、日常生活に組み込まれているという距離感ではないし、祖父母が作っているのも見たことが無い(昔は作っていたのかもしれないけれど)。なので大根を干すというイベントは、私にとって本当の意味での身近ではない。だからこそ近頃この風物詩を見る機会が減っているのだろう……それを寂しいと思っている自分もいるが、ザ・我儘で恐縮である。
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