好きなものこそ冷静に


その日、今日は絶対に本を買うんだ!という使命感に駆られていた。



私は少なくとも週に1回は書店に行くのだが、たいていはウィンドウショッピングで終わる。予算と本棚のスペースがないからだ。本と棚の隙間に平積みしている本が発生している今、むやみやたらと増やしている場合ではない。

滅多に買えないとなると、よくよく吟味せねばという気持ちになる。さらにハードルが上がる。何度も読み返せるような内容や相性のものを……と気負うあまり、軍資金を持っている日でも収穫ゼロで帰宅することも少なくない。


***

しかしその日は何としても買わねばならない。なぜなら書籍購入で推しのしおりがもらえるから!

不純すぎる動機で大変申し訳ない。しかし推しグッズの入手と企画の応援という大義名分でもって本を購入できるという願ってもない機会なのである。


帰宅後の自分に本棚の整理を課しつつ、購入する1冊を求めて本棚から本棚へ。

以前メモっておいていた書籍たちを再びチェックし、でもやっぱり違うかな……と他の本へふらふら。また戻って来て悩み、そしてまったく別のところへ……。


小一時間を費やし、ようやく決定。私はレジに並びながら、本と限定しおりがもうじき我が物になることに胸を弾ませていた。



***


会計後、いや、店員さんがしおりを持ってきたときだな。
私は自分の気持ちがしゅるしゅるとしぼんでいっていくのを感じた。




あらかじめ申し上げておくと限定しおりは全部で12種類あり、欲しいのはそのうちの1つだった。


勝手に選べるものだと思っていたのだが、なんと店員さんが機械的に持ってくるランダム配布だったのである。1冊ごとに1枚なので今回もらえるのは1枚。そりゃ当たらないよね。




まあ、よいではないか。コンテンツそのものは応援できたのだから……。それに欲しい本は手に入った。これだけでも喜ばしいじゃないか。そう、あくまでも本がメインで、しおりはおまけ。なあ、そうだろ……?



しかしどうにも気持ちが切り替えられず、店内で改めてキャンペーンページを確認した。そしたら、「ランダム」って書いてた。しかも中央に、大きく。


あああああ! 私の目は節穴か?!

店員さんにその画面見せてるし! しかも「これってランダムなんですか?」って食い下がっちゃってたよ! バカバカ!!





キャンペーンが書店で、さらに近くの店舗で開催されるからって舞い上がってはいけない。そういうときこそ冷静に、落ち着いて隅々まで確認しようね……。




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三谷乃亜
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