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小学校の図書館にて


先日、読んでいたエッセイ集のなかに「代本板」の話があった。

文字面だけだとピンとこないが、音はなんとなく聞き覚えがある。そのまま読み進めていくと、ああ! と記憶の引き出しがガバっと開いたような感覚になった。「だいほんばん」の漢字、初めて知ったかも。

木製の直角台形の板で、側面に学年、組、名前が書いてある。この板をもって図書館へゆき、借りたい本を抜いたあと、空いた隙間に差し込む。まさに、本の占めていた空間を埋める、物理的代用物。

永田紅「代本板とZoom」京都新聞11月13日夕刊 ※注


懐かしい……小学生のときあったなあ。私のときは木ではなくプラスチックだったけど。上に小さな穴が開いていたので、サイドから凹ますとその穴から空気がピュッピュと出てきて、プラスチックのなんともいえない匂いがしたものである。

ずっと忘れていたのに、色や形、代本板がささっている光景もちゃんと思い出せた。小さい頃の記憶って刻まれ具合が深いんだなと思うと同時に、そういう過去の出来事を瞬時に思い出させてくれる本というものの良さを、しみじみと感じた。


それにしても、代本板って1人1個しかないと思うのだけど、そうすると1冊しか借りられないってこと? そんなことないよね……そんなに図書室へ通うほうではなかったからか、そのへんの仕組みが全然思い出せない。あと、誰が何を借りたのかなんとなくバレてしまうから、きっと今はないのだろう。時代だな……(遠い目)。


*****


代本板は今の今まで忘れていたが、小学校の図書室で定期的に思い出すこと、というか本がある。好きだったのに、卒業以降1度も再会できていないのだ。


それは、1冊につき1つの国について書かれたシリーズもの。内容としては国の概説と、地理の要素が多かったはず。好きなくせにざっくりとしか覚えていないのだが、キャミソールを着た夏ファッションのお姉さんが座って何かをしているカラー写真はあった気がする(急にピンポイント)。

文章と写真などで構成されていて、小学生でも楽しく読める本だった。しかし、妙に子ども向けに仕立てられたポップな感じでもなく、落ち着いた雰囲気があって、そういうところも好きだった。


大判サイズでハードカバー。縁や背表紙は国によって色が異なっていて、その中は白かった。ちなみにイギリスは青。あとは覚えていない。他も読んでみたはずだが、イギリス以外全然興味がなかったようだ。



以上が私の持っている情報の全てである。出版社がわかればたどり着けたかもしれないが、当時の私が確認したことがあるとは到底思えない。


そうだ、重要なことを忘れていた。タイトルである。これがあればまだ可能性はあるのではないか……と思いたいところだが、私の記憶が確かならば『イギリス』、つまり国名なのだ。副題などが付いていた可能性はあるが、当時の私が(以下略)。


とはいえ、街の図書館で真剣に探したことがあるわけではない。なので、案外すぐに出会えるかもしれない。淡い希望を抱きつつ、足を運んでみることにしよう。



※注 日本文藝家協会『ベスト・エッセイ2021』、光村図書、2021。


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三谷乃亜
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