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『ポトスライムの舟』を読んで
先日、慣れない読書感想文を恐る恐る投稿したのだが、スキもコメントもいただけてすごくハッピーな気持ちになった。温かく出迎えてくださってありがとうございました。
それと同時に、やはり本に関心が高いかたが多いんだなあ、本いっぱい読んでですごいなあ、とこれまた初心者丸出しの感想を抱く。コメントでおすすめいただいた本も、もちろん私は未読だった。背表紙は見た記憶はあったけどね!(自慢にならないよ?)。
エッセイに比べて小説は読むハードルが高い。しかしお寄せいただいたコメントを拝見していると、なんだか読めそうな気がした。どうやら「主人公が基本真面目」らしいし……。
ということで、津村記久子さんの小説に手を伸ばしてみました。まずは芥川賞作品をば。
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『ポトスライムの舟』
私は植物と縁遠い人生を送ってきたので、作中で主人公が「あれは、ポトス」(62頁)と言うまで〈ポト/スライム〉だと思っていた。それまでの描写で観葉植物であることはわかっていたのに。物語も半分過ぎた頃になって「ああ、ライムか!」と気づく。スライムの葉っぱってなんだよ。
久々に小説を読むし、芥川賞作品だし……という一抹の不安は1ページで吹き飛んだ。エッセイと空気感がほとんど変わらない。もちろん登場人物と作者は別人格だが、本当に存在しているような、この世界と地続きのような生々しさがあった。
偶然にも、主人公と私はほぼ年齢が同じ。正社員を退職し、現在は契約社員という経歴も他人事に思えなかった。彼女はさらにバイトも掛け持ちしているので私よりよほど働き者だが、性格(属性?)にちょっと似たものを感じることもあって、彼女の一挙手一投足が気になった。
彼女の大学時代の友人3人にも正社員はおらず、それぞれ別の境遇にある。
本書の主軸は別のところだとは思うのだが、もうじき30歳を迎えようとする4人の生きかたにフォーカスしてしまった。どうしても考えてしまうのだ。私はこのままでいいのだろうか、と。
ちなみに、セリフのある登場人物に刺々しい人がいないのも個人的にはすごくありがたかった。意地悪な言葉や怒鳴られるシーンがあると読めなくなる人も、安心して手に取ってほしい(その点でいうと、同時収録されている2話目はちょっと刺さるので注意)。
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おすすめいただいた『この世にたやすい仕事はない』は、また次の機会に書かせていただきます。またお付き合いくださると幸いです。
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