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『パーラー・ボーイ君』Vol.2「パーラー・タウンに雪が降る」

 冷たい風が吹きすさぶ冬ですが、今日もパーラー・ボーイ君たちは元気に外で遊んでいます。
 ハラルド君が持ってきたカイトを飛ばそうと、3人は一生懸命にやりますが、どうにも上手くあがりません。

「Komisch?(おかしいな) ココにちゃんと made in Germany. て書いてあるから、品質に問題はないはずなんだけど・・・・・・」
 ハラルド君は首をかしげます。
 そこで、ラロッカちゃんが思いついたように言いました。
「きっと、走るスピードが足りないのよ!」
 ラロッカちゃんは、「わたしにかして」とカイトを受けとると、自分で走りだしました。
 確かに3人の中では、女の子ながらもラロッカちゃんがイチバン足が速いのですが、それでもカイトは思うようにあがりません。
「くたびれちゃった」
 と、ラロッカちゃんは地ベタに座りこみました。

「そうだ! 自転車ならもっと速く走れるよ!!」
 今度はハラルド君がそう思いつきました。

 3人のなかで、自転車に乗れるのは、パーラー・ボーイ君だけです。さっそくパーラー・ボーイ君の自転車の後ろにカイトをくくり付けました。
 パーラー・ボーイ君が自転車を漕ぎだし、後ろでカイトを持っていたハラルド君がタイミングよく手を放すと、みるみるうちにカイトは高く上がっていきます。

「すごい、すごーい!」
 ハラルド君とラロッカちゃんは飛び跳ねてよろこびます。
「パーラー・ボーイ君、もっと漕いで、もっと漕いで!!」
 2人の声援を受けて、パーラー・ボーイ君はグイグイ、ペダルを踏み込みますが、自分も空を飛ぶカイトが見たくて振り返ったときに、バランスを崩して転んでしまいました。

「大丈夫!!? パーラー・ボーイ君」
 2人は慌てて駆け寄りますが、パーラー・ボーイ君はもう、自転車で転ぶのはなれっこです。テレ隠しに「テヘヘッ」と笑いました。
 その、パーラー・ボーイ君のオデコに、雪がふんわりと一粒落ちてきて、すぐに消えました。

 見上げると、空にはカイトの代わりに雪がヒラヒラと舞っています。
「わーい、雪だ! 雪だ!」
 と3人は大はしゃぎです。
 比較的、温暖な気候のパーラー・タウンでは、雪が降れば大人も子供も、なんだかワクワクします。

 翌日になると、少しずつ降った雪は、ほんのウッスラとではありますが、街に積もっていました。
 パーラー・ボーイ君たちは、朝からよろこんで雪遊びをします。

 ごくわずかな雪。それでも強引に雪だるまを作るのが、子供ごころというものです。
 パーラー・ボーイ君たちは、力をあわせて雪だるまを作りましたが、完成した雪だるまは泥がたくさん混ざっていて、小汚い茶色のものです。
「こんなの全然、キュートじゃないわ」
 ラロッカちゃんが若干キレ気味にそう言うと、ハラルド君は、
「ボク、家から白い粉を取ってくるよ」
 と駆けて帰り、家からベーキングパウダーを取って戻ってきました。
 ベーキングパウダーを雪だるまにまぶすと、これにはラロッカちゃんも、ご満悦で、
「それなら、私はコレを目にする」
 とポケットから取り出したアメ玉を2個、雪だるまの顔に埋め込みました。
「あとは……、鼻と口の代わりになるものないかしら?」
 ラロッカちゃんは周りを見わたしますが、ちょうどよい物が見あたりません。
「今からみんなで探しに行きましょう。どうせなら全部食べられるものでそろえて、お菓子の雪だるまを作るわよ!」
 ラロッカちゃんの号令のもと、3人は雪だるまのパーツを探しに行きました。

お菓子茶色

 みんなの家を廻って、集めた食材を持って3人が雪だるまの元へ戻ると、雪だるまには大量のアリがたかっていて、全身まっ黒になっていました。
 それを見たラロッカちゃんは、
「ぎゃん!」
 と悲鳴をあげ、手にしていたスイーツを全部おっことしてしまいました。
 
 パーラータウンの冬は、だいたいこんな感じです。

雪だるま茶色


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