建築とWeb ― テクノロジー×デザイン
建築とWebは似ていると思います。(6回目)
デザインというと見た目の話やコンセプトの話になりがちですが、それを成立させている技術の話に言及されることは少ないように思えます。
技術の発展と建築デザイン
建築の歴史は長く有史以前からあります。その発展の影には技術の進歩もありました。
例えば石積みの建築では、構造上縦に長い開口部はとれても、横に長い開口部はとれませんでした。そのため教会のステンドグラスも縦長です。
それが鉄筋コンクリートという新技術の登場で横長の開口部もとれるようになりました。それまで石積みの建築では不可能だった水平な窓を建築のデザインとして取り入れられるようになったのです。そしてそれはル・コルビュジエの近代建築五原則へとつながります。
最近の例では木材を使った大規模木造建築があります。その背景にはエンジニアリングウッドと呼ばれる、木材の弱点を克服した材料の開発があります。それまで、木材で大規模な建築を作るのは強度や耐火の面などで難がありましたが、新建材の登場で大規模建築にも木材を使うという建築デザインの可能性が広がりました。
このように建築デザインの進化の裏には技術の発展がありました。
環境の変化も建築に影響を与えてきた
直接的な建築技術の進歩の以外にも建築デザインは影響を受けてきました。モータリゼーションの進展により、ロードサイドには走る車からでも視認できるような奇抜なデザインや大型のデザインが登場します。(このあたりの話はロバート・ヴェンチューリの著書『ラスベガス』に詳しく書かれています。)
新国立競技場の旧案をつくったザハ氏は曲面を多用したデザインが得意ですが、そうした曲面の構造計算を可能したのはコンピュータの進化でした。構造だけでなく、設計プロセスにおいても3DCADの登場はデザイン上の可能性を広げました。
建築デザインは直接的な技術だけでなく、建築をとりまく社会環境の変化によっても変わってきています。
Webデザインもまた技術や環境によって変わっている
Webデザインも建築と同様、それを支える技術と取り巻く環境によって変わってきています。技術の面ではHTMLやCSSの仕様の進歩、APIの拡充などがあるでしょう。ここではレスポンシブデザインにフォーカスしてみます。
レスポンシブデザイン
スマホが登場する前、PCのみのWebデザインは横幅を固定して考えるのが主流でした。時代によってPCの画面の横幅の違いはありますが、同時代で考えるとどのデバイスも一定の範囲に収まっていました。
それがスマホの出現でデバイスサイズが大きく変わります。初代iPhoneは横幅320pxでした。初期の頃はスマホも320pxの固定幅デザインというのもありましたが、様々なサイズのスマホが出てくるにつれ、対応できず廃れていきました。
そこで登場するのがれレスポンシブデザインです。横幅を可変とし、文章や画像をデバイスサイズに応じて伸び縮みするデザインです。こうすることで横幅に縛られず、どのデバイスでも適切に表示できます。現在のWebデザインの主流となる考えです。
レスポンシブデザインを支える技術
技術面をみてみると、CSSの進歩により可変的なデザインを作りやすくしています。display: flexやdisplay: gridなどのレイアウト系CSSは柔軟な要素の配置を可能にし、srcset属性は環境による画像の出し分けなどを可能にしました。
環境とテクノロジーに影響されるデザイン
デザインはセンスだけじゃない、とは言いますが、建築やWebのデザインには技術的要素も求められる点が、一筋縄ではないかない、けれど面白いくしているポイントです。この辺は「強・用・美」に通じるところもあります。
建築もWebも色々と考えてデザインしなくてはならないのが自分が好きなところでもあります。
Photo by Jenny Marvin on Unsplash