建築とWeb ー 強・用・美
建築とWebの類似性
建築とWebは似ていると思います。私は大学では建築設計を専攻していて、かつては建築家を目指していた時期もありました。色々あって、現在は建築から離れてしまっていますが、それでもまだ建築は好きです。
大学を出たあとで一から改めてWebの勉強を始めたのですが、勉強していて建築と似ているなと思った点が多々ありました。重厚長大な建築と、重さもないWebは一見すると関係なさそうですが、デザイン根源的な部分では共通項があると思います。
使われるデザイン
建築もWebも「使われるデザイン」です。使われるデザインは他にもプロダクトデザインなどがあると思うのですが、建築とWebが共通するのは機能だけにも、美しさだけにも特化せず、その中間のデザインであるところではないでしょうか。
強・用・美
かのウィトルウィウスは強・用・美という建築の三要素を提唱しました。「強」すなわち丈夫で壊れないこと。「用」すなわち使いやすいこと。「美」すなわち美しいこと。これはWebにも同じことが言えるのではないでしょうか。
Webにおける「強」とは、セキュリティとして安全であり、バグがないことです。セキュリティに不備があり、個人情報がダダ漏れだったら、誰も使いたがらないです。バグやレイアウト崩れといったものがあればWebサイトとしての機能を果たしていないでしょう。
「用」はその通り使いやすいことです。WebでいうところのユーザビリティとかUI/UXとか言われている分野ではないでしょうか。使いにくいサイトというのも嫌ですよね。
「美」も建築と同様、美しさです。一般的にイメージされるWebデザインといったところでしょうか。もちろん、デザインが見た目だけに終始するものではありませんが。
それぞれを要素を満足させながら、時に背反しながら答えを導き出していくのは、建築もWebも同じだと思います。
強 < 用 < 美
強・用・美は建築にもWebにも重要な三要素で、それぞれが建築およびWebたらしめる理由じゃないでしょうか。そして強<用<美の順序で成立している必要があります。強の上に用があり、用の上に美があります。
最近はUXデザインの分野でもマズローの欲求階層を基にした議論などがされていますが、ウィトルウィウスは2000年以上前にこうした視点を発見していたことは興味深いです。
建築的デザイン思考
アウトプットこそ違えど、作り上げる上でのデザイン思考は建築もWebも似ています。建築はローマの時代から2000年以上もの歴史がありますが、Webデザインは高々20年ちょっとです。
本当にWebデザインのあり方について真剣に考えられているのはここ最近でしょう。ブラウザ戦争が終結し、CSS3、Ajax、その他様々な技術によりWebの自由度が飛躍的に高まってきました。自由度と引き換えに、Webのあるべき姿を考える必要も出てきました。
建築も技術の進化や社会の変化により、あり方について当代の建築家は常に考えさせれてきました。建築が経験してきた歴史をWebも同じく辿っているような気がします。そんな時、Webも建築の歴史から学べることがあるのではないでしょうか。