高校生だもの。#10
「 晴夜、舞台。」
夜は全部違った景色に見える。
都会じゃないのに大人チックになる駅前は、歩くと大人になった気がする。
居酒屋の前を照らす紅い提灯も、定食屋の温かい灯りも、煌々と光る街頭ですら、どこか昼間と違った雰囲気を醸し出す。
ゆっくりと歩いてみる。お気に入りの曲を聴きながら。曲と歩幅を合わせれば、私は今だけ女優になれる。
今日はジャズを聴きながら、当てもなく夜の街を歩く若者の役。
昨日はメロウな曲を聴きながら、家出してきた学生の役。
半分ほんとで半分うそ。
私の影を照らすスポットライト。これは街頭と店先の灯り。
主演もキャストも私だけ。監督もエキストラもいない。
ふわふわとした気分のまま、私は帰路につく。
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