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最悪のアフターファイブ、味のない世界

驚くなかれ、わたしは今日警察に行った。
そう聞いてどう思っただろうか、とうとう殺りよったか、とお思いか。
ただ安心をしてくれ、被害を受けた方である、安心もできひんか、なんとキチガイに出くわして怖い目に遭ったのです、どう、ベリーバッドでしょう、だいぶかわいそう、ひどいよ、聞いて。

今日は天気も良かったし職場から途中まで何駅か歩いて途中でひさびさに外でご飯を食べて帰ろうと思い立ち、てくてく歩く、まだ陽が長い、新年度らしくフレッシュマンたちが行き交う、まだ早い時間だけど人通りがけっこうある。
そんな道でひとりの30代くらいの男性とすれ違う際に目が合った、その瞬間、大きめの声であ、と男性が言う、腕を掴まれる、え?とわたしが言う。
今あなた僕に色目使いましたよね、エロい目で僕のこと見てましたよね、と言われる、え、と言う、めちゃくちゃあかん奴きた、と思う、かなり力が強い、離して、と言うが相手はもちろん離さず、ここに書けないほど卑猥な言葉をこちらに投げかけてぐいぐい引っ張る、これはかなりやばい、と思い渾身の力で手を振り払い走る、とんでもない下品な言葉を大声で叫びながら追いかけてこようとするイカレ、周りの人はこちらを見てるだけで助けようともしない、ここにいる全員死ね。
こういう時の全力疾走は本当に速い、死ね死ね死ね、鼓動と同じ回数呪いの言葉を呟きながら走る。
どれくらい走ったのかわからないが、撒くことができたので安堵するとともに泣けてきたので弟に連絡をする、こんな時に連絡をするのが弟だなんて、なんと情けない姉だ、と思いつつ、彼は誰よりも冷静で的確なアドバイスをくれるのだ。

その結果、警察に行く。
相手がキチガイであろうが、結果的に怪我をしたり実際に性的な被害があったわけではないが、危ない思いをした、ということだけは絶対に伝えた方がいいという判断である。
しかし警察の対応はひどいもんで、何があったか、どんなことばを言われたかを事細かに聞かれた挙句、ここから離れてもいるし現行犯ではないのでそれを今聞いてもほとんど対応はできないんです、パトロールしてみます、とのことであった。
被害者が自分の口で恐ろしかったことを思い出させられながら事細かに伝える、下手したらどんなことを言われたか卑猥な言葉すらも言わされかねない状況、しかも伝えたところで何も変わらない、というこの警察のやり方は昔から同じ、何もしてはくれない、犯されてズタボロになってから来ないとあかんかったのかも、とすら思う、思わせる。

全て終えて相当疲弊する、朦朧としてカレー屋に吸い込まれ震えた手でスプーンを持ち無心で食べるが、腕を掴まれた感覚や言われた言葉を思い出す、誰も助けてくれない世界のカツカレーは味がしない。
何事もなかったように友達と連絡をとる、そうでないと心が死ぬ、地下鉄で帰る、家についてから、なんだかすべての事象で自分が悪く、やっぱり汚されたような気がして泣く。

こういう話をすると、あなたが魅力的だったからだよ、とか、危ないところは通っちゃダメだよ、とかお門違いのことを言うひとがたまにいる。
そういうことではないし、それを言われたとて気を取り直せると思ったら大間違い、女である、ということだけである程度の危機感を持って過ごさねばならん世界が問題、危険があった時に誰も助けない世界が問題。
また、こういうことをこういう場に記すことで、40前なのにまだ女アピールですかよろしいな、と思われたり、たいしたことちゃうのに大騒ぎしやがって、これやから女はうるせえな、と思う人も少なからずいるだろう、そういうことじゃない、自分のからだと心は自分のもので、誰であろうと誰かにに好き勝手にされていいものじゃないことを主張したいだけ。
インスタでこういう話をすべきじゃない、とも思うが、していけない話じゃないよな。

穏やかな気持ち欲しくて大喜利を狂ったように見る。
やっぱりお笑いは尊い、ありがとう。

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