ヒーローの見えぬ苦労を君は知っているか
朝から楽しそうな知らせあり、自分のことではないにせよ嬉しくわくわくする。
家から出て徒歩30秒で膝近くまでずり落ちるタイツを履いてきてしまうも、なんだか足取りは軽い、軽いが股のもたつきがものすごく気になる。
職場の最寄り駅に降り立つと小雨が降っている。
道すがらで電動自転車が転がっており、傍らに倒れて雨に打たれている女性を大発見、あら大変、と思い駆け寄ると、うう、とうめき声。
声をかけると、こけた、立てない、痛い、と訴えてくるので、わっ三重苦、と思いヘレンケラーが頭をよぎるがウォーターとか言うてる余裕はない、いやこちらがウォーターとか言うて気狂いが来たと思われて怪我人を驚かせてもと思い、とりあえず大丈夫か確認する、なんせ真人間のふりをして生きているのだこちらは。
近くの団地に住んでいる女性とのこと、ご家族はおうちにいらっしゃいますか、と聞くと、家に夫がいるけど耳が聞こえないので多分通じないと思うから言わなくていい、とのことだった、ほー、なるほど。
じゃあ救急車呼んでもいいかな、立てないですもんね、痛いもんね、呼びますよ、いいですね、呼びますよ、と声をかけて119に連絡、初めてのこと。
救急の方と話すが、倒れているおばちゃんも話せそうだったので電話をかわってもらうが、到着までわたしも待つことに。
救急隊員の方に引き継いで、仕事に行っていいと言われたので、おばちゃんにお大事に、と声をかけてその場を立ち去る。
心臓がドキドキした、わたしとは違ういろんな人生がここにも確かにある、と思う、どうか軽傷でありますように。
思いがけないヒーローチャンスであったが、あと少しの道中もどんどんタイツが下がる、おばちゃんを気にかけている間、どさくさに紛れて直せばよかったがそうもいかず、尻が丸出しになってくるほど下がってくる、もうこれは履かんほうがマシ、でもスカートを履いているので対外的には問題なし、真人間のふりをできてる、しかしちょっと下がり過ぎ、なんでこんなタイツが家にあるのか、アホタイツは極悪。
そいつを退治したほうが人助けより己の精神衛生上良い。ヒーローも楽じゃないわね。
そんなこんなで週末、仕事を終えていろんなものをスーパーで買い込んでもちろん出かけずに帰宅、映画を2本見る。