最適解はスタンドバイミーと違うか
昼ごはんを食べながら、一番好きな映画はなに、と聞かれたらなんてこたえる?と友達に聞かれる。
一本?と聞くと、神妙な面持ちで、いっぽん。と言う。
わたしが考え込んでいると彼女は、実は今少しいい感じの人がいてそれを聞かれた時に震え上がった、と言う。
彼女はバチバチのサブカルの出なので今のどフェミニンな風貌とかけ離れた趣味嗜好を持っている。
出会った当時、江戸川乱歩のパノラマ島綺談を一言一句暗記しておりひとりでそれを演じることができるという怪特技をもっており、それでなんと魅力的なひとだ、と思い仲良くなったのだ、サブカル生き字引のようなひとである。
彼女が好きな映画はきっと一般企業で働くバレーボール部出身のすくすくサラリーマンにはきっと伝わらない、いちから説明をするのも面倒だし、そんな趣味を持ってるなんて、と引かれても悲しい。
え、どう答えたん、と聞くと、ドラえもんのび太と雲の王国、と言う、いや名作やけれども40代女性が少し年上の意中の人の前でいの一番に叩き出す最適解ではない気がする、しかしながらそれを最適解だと思った彼女はなんと愛おしいのや、と思い、ビールを頼んだ。
いろいろ話し合った結果、誰も損をしない最適解はスタンドバイミーではないか、ということになった、金曜ロードショーで散々やってたし見たことぐらいあるやろうし何より本当にちゃんと好きな映画だ、嘘はついていない。
自分の好みを他人からジャッジされることの恐ろしさ。
本棚やレコードの棚を人に見せたくない感覚。
バカだと思われるのもイキってると思われるのもおもしろを狙ってると思われるのも全部嫌、もはやこちらの自意識過剰ではあるのだがカルチャアと社会と自我、この三角形のいびつさに我々は何年も頭を抱えてイカをしがむ。
別れ際に彼女は、スタンドバイミーの話になった時になんでも答えられるように今日からしばらく見続ける、スティーブンキングも読む、また見解したためて送るわ、と言った。
そういうところやぞ、とは思う。