die Maske 1. ニーチェとは何か?それは絶えざる自己からの逃亡であり、また自己への、仮面をつけた回帰である。それは自己と仮面との、自己と非自己との、絶えざる戯れであり、ニーチェという固有名詞がしだいしだいに姿を消してゆく一つの過程である。ニーチェとは、けっきょく、非ニーチェ化を志向する一つの回帰運動に他ならない。
永遠回帰としての「ニーチェ」
(足立, 1976, p.194)
「ニーチェ」思想は、詩的表現に富んだエクリチュールで語られることはよく知られている。
ときに aphorism 形式を用いて展開する。屹立したそのエクリチュールは、読み手を拒むかのような印象をも与える。
自己回帰的エクリチュール écriture (文章表現)。
「自己への回帰」とは、ニーチェにとっては、エクリチュールそのものであったと言った方がよい。
体系を認めず、教えを施すことをも拒む。「事実自体 Faktum an sich」すら容認しないその姿勢。
読む者は、ただその思想を受け容れ、その仮面(エクリチュール)に呑み込まれ融合し、再び消えゆく仮面から引き離される。
仮面をまとって現れるニーチェ思想とは何か?
Ein Philosoph: ach, ein Wesen, das oft von sich davon läuft, oft vor sich Furcht hat, - aber zu neugierig ist, um nicht immer wieder zu sich zu kommen……
(GB.292.)
「哲学者とは、しばしば自己から逃走し、しばしば自己に恐怖を抱くが、しかし、そのあまりな好奇心のゆえに、繰返し『自己へと回帰』する者のことである」
善悪の彼岸292
1844年の今日、ニーチェはザクセン州レッケンの牧師館に生まれた。
そのニーチェの生誕日にあわせて、10年前から、某snsに書き溜めてきたものをここに書出して再考してみたい。
今回は、足立和浩さんの論考から、一部抜粋して引用させていただいた。