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ビートルズの"最後の"新曲がリリース! in 2023★
ポール・マッカートニーの81歳の誕生日を5日前に控えた2023年6月13日。
衝撃のニュースが飛び込んできました。
‘Final Beatles Song’ つまり『最後のビートルズの新曲』が
2023年に、
リリースされる、と・・・。
先日、ポール自身が1964年に撮影したビートルズの写真集『Eyes Of The Storm』が発売されましたが、そのPRでBBCラジオに出演したポールが、その会話の中でこのビックニュースを大発表してくれました。
今明らかになっていることは、『ビートルズの最後の新曲が2023年にリリースされる』こと、そして『ピーター・ジャクソン監督のビートルズのドキュメンタリーの制作過程で開発されたAIの技術がそれを可能にした』と言う事です。
『すでに曲は完成している』と言うことにも、『今年中にリリースされる』ってことにも、『解散から半世紀経ったバンドの新曲』ってことにも、もう色々とびっくりなんですが、まだタイトルや各メンバーがどんな形で関わっているかと言うことについては明らかになっていません。
ただこのニュースを報じたBBCは、これまでの経緯などから、楽曲は “Now And Then” と言うジョンが1978年頃に録音したデモテープを元に作られた楽曲ではないかと推測しています。
アンソロジー・プロジェクト
今回、「最後のビートルズの新曲」と聞いて最初に思ったのが、「アンソロジー・リターンズ」ってことでした。
タイトルを妄想するなら 【The Anthology : Get Back】って感じです。
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アンソロジー・プロジェクトは、1990年代半ばにビートルズ熱を再燃した『3枚のアルバムとドキュメンタリー映像と書籍でビートルズの歴史を振り返る一大プロジェクト』でした。
このプロジェクトの企画はなんとビートルズの解散前から、『The Long And Winding Road』というタイトルで動き始めていたそうです。
ビートルズの活動は8年とはいえ、彼らが残してきた記録や情報は膨大で、簡単に作業が進むとは考えにくく、まさにその作業の過程は「長く曲がりくねった道」だったはずです。
しかし、ビートルズがデビューするずっと前の草創期から彼らのロード・マネージャーを務め、アンソロジーの時期にはアップルの代表を務めていたニール・アスピノールが中心となり、また、楽曲面ではビートルズの音楽に必要不可欠なジョージ・マーティンがプロデューサーを務め、ビートルズの解散から25年後に、アンソロジーは遂に完成に至ります。
まず、1995年の11月にアメリカ、イギリス、そしてその後日本などでもドキュメンタリー番組がテレビ放送され、ほぼ同じタイミングでアルバム第一弾『The Beatles Anthology 1』が発売。
1996年3月に第2弾『The Beatles Anthology 2』が発売。
そして、1996年9月にドキュメンタリー・ビデオの発売があり、1996年10月にアルバム第3弾『The Beatles Abthology 3』が発売されました。
やや遅れて2000年10月にアンソロジー・プロジェクトの書籍版となる『The Beatles Abthology』 がリリースされ、一連の壮大なプロジェクトは完了します。
ポール・ジョージ・リンゴ、そしてジョージ・マーティンや当時ビートルズと関わりのあった人たちにとっても重要な意味合いを持ったこのアンソロジー・プロジェクトでしたが、ファンにとっては、ビートルズの未発表・未公開の音源や映像に触れられることに加え、解散から20年以上経ってジョンは不在とはいえ、「ポール&ジョージ&リンゴの “スリートルズ” が一堂に介してビートルズとしての仕事をする」ということは大事件だったでしょうし、
何と言っても、25年ぶりに彼らの新曲がリリースされるというのはとんでもない衝撃だったと思います。
1990年代の "ビートルズの新曲"
結局、アンソロジー・プロジェクトでは、ビートルズの新曲が2曲発表されました。
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まず、『The Beatles Anthology 1』のオープニング・トラックとなっている “Free As A Bird”。
そして『The Beatles Anthology 2』に収録された “Real Love” です。
それぞれシングルでもリリースされました。
わたしも何度も繰り返しCDを聴きました。
多分、アンソロジー・プロジェクト的には各アルバムで1曲ずつ新曲を発表する形を取るのが理想だったのでははないかと思いますが、『The Beatles Anthology 3』の一曲目は ”A Beginning” という未発表曲でした。
これはジョージ・マーティンがリンゴのオリジナル曲 “Don’t Pass Me By”のイントロとして録音したものの結局使われなかった楽曲でした。
ポール・ジョージ・リンゴの "スリートルズ" は、このプロジェクトのために1994年から1996年にかけて一緒にいくつかの作業を行っています。
その中で自然に「ビートルズの新曲を作ろう」という流れになったようですが、その時ジョンが居ないという致命的な状況を救ってくれたのが、ジョンの妻であるオノ・ヨーコがスリートルズに託した『ジョンが生前に作っていたデモ・テープ』でした。
デモ・テープの中には、ビートルズが新曲として発表した“Free As A Bird”、“Real Love” の他に、“Now And Then” 、” Glow Old With Me” が入っていて、この度、2023年にビートルズの新曲としてリリースされるのではと考えられているのが “Now And Then” という訳です。
"Now And Then" の歴史
実はこの “Now And Then” は、アンソロジー・プロジェクトに取り掛かっていた1995年にも一度「新曲」としてリリースできないか模索されていました。
しかし、ジョンがホームレコーディングしたデモテープはノイズが酷く、またジョンのボーカルの音質も最悪で曲も未完成だったため、結局バックコーラスなどもレコーディングしたものの、特にジョージが反対した事もあって曲が完成することはありませんでした。
アンソロジーで発表した新曲の2曲のプロデュースを務めたのはジョージが連れてきたジェフ・リンで、彼は “Free As A Bird” と “Real Love” でも当時の技術を大いに活用してデモ音源をクリーンにしてオーバーダビングを可能にしましたが、この “Now And Then” はさらに手間がかかりそうということもあり、頓挫してしまったようです。
ポールは「ビートルズは民主主義なので、この時も誰かが嫌だと言ったことはやらなかった」と語っていますが、それでもずっと諦めきれなかったようで、2012年にも「この曲をいつか完成させたい」と話していたようです。
ヨーコから渡されたジョンのテープには「For Paul」と書かれていたということなので、ポールとしてはジョンが残してくれた楽曲はきちんと形にして世に出してあげたいという気持ちもあるのかもしれません。
それがこの度、ピーター・ジャクソン監督の2021年のドキュメンタリー作品『THE BEATLES: GET BACK』で使われた “音声を分離するAI技術” を使って
ジョンのボーカルだけを綺麗に抽出させることに成功した!ということなんじゃないか、というのが2023年6月中旬現在の大方の予測です。
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新曲として考えられるタイトル
ポールは新曲のタイトルをまだ明かしていないので “Now And Then” であるかどうかはまだ憶測に過ぎませんが、可能性は非常に高そうな気がします。
他には、同じくデモ・テープに入っていた “Glow Old With Me” も考えられなくはありませんが、これは既にジョンとリンゴが公にリリースしていますし、今更ビートルズの新曲として発表する可能性は低いかな、と個人的には思います。
それから “All For Love” というタイトルが思い浮かぶ人もいらっしゃるかもしれません。
こちらは、アンソロジー・プロジェクトでポールとジョージが共作し、スリートルズでレコーディングしたという噂も流れていた楽曲ですが、結局アンソロジーで発表されることはありませんでした。
ポールとジョージのクレジットとなると ”In Spite Of All The Danger” 以来じゃないかと興奮したりもしますが、「1990年代の新作オリジナル曲」となるとジョンは関わることが難しいので、これを「ビートルズの新曲」とする事はないのかな?と思います。
あと、アンソロジー・プロジェクトについてあれこれ憶測が飛び交っていた時期、ジェフ・リンが「ビートルズの3曲目の新曲は “Now And Then” か “Miss You” というどちらかのタイトルになるかもしれない」と語っていたという記事も見かけたので、もしかしたら今回発表される『最後のビートルズの新曲』は “Miss You” というタイトルになるかもしれませんが、あまりにもドストレート過ぎてファンの涙腺が壊れてしまう可能性があるので採用されることはないかな…という気がします。
タイトルは未だ不明のビートルズの新曲ですが、「2023年中にリリースされるよ!」とポールが言い切っていますのできっと私たちは半年後には聞くことができているんだと思います。
私の予想では2023年の11月頃、クリスマス商戦の時期ではないかと思います。
そこは現役時代のビートルズのアルバムリリースのタイミングと合わせてくるんじゃないでしょうか。
”MAL”という名のAI技術
このドデカ・クリスマス・プレゼントになりそうなビートルズの新曲の完成を叶えてくれたAI技術についてもちょっとまとめておこうと思います。
最近、「ジョンの声でポールの曲を歌ってみた」とか、「ポールの声で他のアーティストの楽曲を歌ってみた」みたいな生成AIを使った動画も話題になっていますが、今回の新曲で使われたのは、その類のAI技術ではありません。
今回言われているAI技術というのは、ボーカルやギターなど楽器の音を学習させて、ごちゃ混ぜになった音源の中から特定の音だけを分離して抽出させる “Machine Learning” の手法で、ピーター・ジャクソン監督のチームが
『The BEATLES : GET BACK』を制作するにあたり、質の悪い音源からビートルズの会話や演奏を綺麗に取り出すために開発したAI技術を指していると思います。
彼らはその技術を、『GET BACK』の映像にも度々登場しビートルズに献身的に寄り添うロード・マネージャーの名前にあやかり、“Machine Assisted Learning” の頭文字を取ってMALと呼んでいます。
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その “MAL” の技術は、『GET BACK』はもちろん、その後、ジョンのボーカルだけを抽出してポールが自分のライブでジョン(の映像)との共演を果たしたり(誰が泣かずにいられようか、いや、無理。)、去年リリースされたアルバム『REVOLVER』のリミックスでも活用されています。
そして今回、またまたそのMALの技術が、1995年には不可能だったビートルズの新曲を完成させるために役立ったということのようです。
MALを使えば、ジョンのボーカルはもちろん、1995年当時にレコーディングしていたポール・ジョージ・リンゴの演奏も活かすことができるとは思いますが、乗り気でなかったジョージがどの程度の素材を残しているのか?ということや、ポールやリンゴは今回新たに演奏しているのか?などは非常に気になるところなので、続報を待ちたいと思います。
ピーター・ジャクソン監督の動向
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本当に、ピーター・ジャクソン監督には感謝してもしきれない気持ちですが、そんな超リスペクトなPJ監督については、去年の夏に「ドキュメンタリーでない新たなビートルズ映画を制作している」というニュースが報じられています。
その時の情報では、ピーター・ジャクソン監督の新作映画は
・ドキュメンタリーではなくフィクション作品になる可能性もある
・ポールとリンゴも参加する
・Get Backとは全く違う
ということのみ明らかになっていましたが、「この作品はビートルズの新曲と何か関係があるのか?」も非常に気になるところです。
2023年の "ビートルズの新曲"
わたしはアンソロジーが世に出てきた頃、まだビートルズを知ったばかりで
多分気持ちも知識も全く追いついておらず、正しく感動することができていなかったような気がします。
「ビートルズの新曲の発売に立ち会える」ということに興奮したようなうっすらした記憶はありますが、残念ながら、アンソロジーをどんな風に受け止めていたのかは殆ど覚えていません。
わたしはその頃アイドル期のビートルズに夢中で、リボルバー以降にはまだ触れてもなかったんじゃないかと思うので、ビートルズの解散のゴタゴタも、4人のソロ活動も、ジョンの死にもまだ全く実感が伴っていませんでしたし、そんな中でのアンソロジーの登場で、情報が膨大すぎて処理しきれてなかったんじゃないかと推察します。
今回は、『GET BACK』を鑑賞し、後期のビートルズに対する想いや情報も更新・整理できた上で「ビートルズの最後の新曲」に向き合うことになり、それでもやはりなにか手放しで喜べないものがあったりして、それは何故なのかな?と思っていました。
そして、こうやって色々調べて妄想していくうちに、自分が何にモヤっているのかもクリアになってきましたし、今はただ続報とリリースが楽しみな気持ちです。
ジョンもジョージも、ジョージ・マーティンも、ニールももうこの世にはいませんが、今も元気に音楽活動を続けてくれているポールとリンゴが、「今、ビートルズをどう解釈しているのか」を知ることができますし、『GET BACK』やリミックス・アルバムのように、ビートルズに大きな愛情や責任を持って対峙している方々の仕事を見ることができることは、ものすごく有り難く、勇気をもらえます。
なので、この「最後のビートルズの新曲」もビートルズの4人を筆頭に、関わっている方々全方向にありがとうございます、と思いながら楽しみに待ちたいと思います。
あなたは、「最後のビートルズの新曲」に何を期待しますか?
▼『ビートルズの新曲がやってくる!2023」動画版はこちら。
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