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2nd Album「病み鍋」
こんにちは.残夜草紙です.
今回は2年ぶりのアルバム作品となる2nd「病み鍋」についてのお話です.
12/16よりBOOTHで先行販売開始しました!
12/24より各主要音楽ダウンロード&ストリーミングサービスにてリリースされます!
アルバムのクロスフェードデモも公開しております!
「ポップとマニアックの交差点…幻想的な闇夜へ誘うカオスの楽園!」というキャッチコピーを掲げた今作は前述の通り,実に2年ぶりとなるアルバムになります.
前作「残夜草紙」で描いた夜の神秘性,心の内面に潜む病みといった不変的なテーマを据え置きに,より重厚なサウンドと独自性のあるサウンドへの挑戦,言葉通りのカオスな音楽作品を題材に前作リリース後より密かにデモ音源の作成やアルバムの構想を練ってきました.
今作のアルバム構成について,Alter Ego(オルター・エゴ)に因んで,前半5曲は「Side Alter」として,これまでに発表してきたシングル曲等の一般的に聴きやすくキャッチーな作風で固めて,後半5曲はマニアックかつプログレッシブでカオスな路線を突き詰めた「Side Ego」として分けています.こういった着想から影響元が滲み出ていますね.
様々な側面から音を楽しむことができて,混沌とした感情や音楽性の集合体のキーワードとして闇鍋を連想し,心の病みを表現していることから「病み鍋」というタイトルに決定しました.
そしてありがたいことに今回この記事を書いている段階で,BOOTHで先行販売中のCD版が4枚売れておりました!感謝!✨
作詞・作曲・編曲・アートワーク:残夜草紙
語り手(4曲目「キョコウストーカー」):VOICEVOXナースロボ_タイプT
Manufactured & Distributed by B・U・G(Billion Unreal Gigs)
~収録曲~
Side Alter
01.クラクラ - Album Mix
元々は10作目でリリースした楽曲でボカコレ2022年秋で発表した楽曲になります.今作では1番古い楽曲になります.MV(映像・イラスト)は赤坂るびいさんに担当して頂きました.この映像を送って頂いた時は衝撃でした.楽曲,イラスト,映像すべてで「クラクラ」というひとつの作品が形作られていく様にテンションが高まったことを覚えております.
おはようございます!(朝)
— 赤坂るびい (@akasakaruby) October 6, 2022
本日からボカコレ前夜祭でルーキーの投稿始まりますね!当方がMVお手伝いさせて頂いた曲も本日19時投稿なので是非よろしくお願いします🙇♀️
病み曲でクラクラしてる可不ちゃん描くの楽しかったです🥰✨ https://t.co/xcHUfPvb9r
👏👏👏✨
— 赤坂るびい (@akasakaruby) November 14, 2022
残夜草紙さんのクラクラ、メロディが頭に入ってきやすいキャッチーさもありながら病み感たっぷりな特にAメロの、この繊細なピッチを正確に歌えたらすごいのでは?と思うので歌い手さん方が歌うのも是非聴いてみたいですね😆🎧(instのピアプロへのリンクも作品ページで公開されてます✨) https://t.co/voQ64XoKQp
ボカコレの方では惜しくも結果振るわずでしたが,その後参加した第3回8小節アワードにてCeVIOプロジェクト賞を頂きました.音楽に限らず,自分の作品が実際に業界の諸先輩方から評価され,賞という形で記録として残して頂いたこと大変嬉しく思います.
楽曲としては,当時Avengerを初導入した楽曲になります.サンプリングやボーカルチョップを使っていたりと,その時点ではあまりやったことのなかったアプローチに挑戦しております.過去作だとUnrealぐらいですかね.
当時,通勤中に電車内で人混みやその空間内の情報量に疲れ目眩がした時に思いついたフレーズがサビのメロディになっています.そうした日常のふとした瞬間に曲の断片が降りてくることってあるんだな~と不思議な感覚を覚えました.歌詞に関してはわりと私の素や病みの部分が垣間見えていたりします.人間不信,疑心暗鬼というのは今後もクリエイターや社会人として生きていく上で私が付き合い続ける課題なんだと思います.
アルバム収録にあたって,各パートの再エディットから原曲よりも低音を補強したリミックス音源で収録しております.
02.DIVER
アルバム情報解禁後にX限定で先行公開された楽曲です.
残夜草紙 - DIVER feat. #初音ミク(1コーラスver)
— 残夜草紙 / soshi (@zanyasoshi) November 18, 2024
2年ぶりにリリースされる,#ボカロP 残夜草紙の2ndアルバム「病み鍋」より新曲「DIVER」をXで先行公開✨ライブで盛り上がれるような曲を意識しました✌
I released a new song called "DIVER" from my new album beforehand on X. pic.twitter.com/ioBZ5uLAdx
この曲って純粋なラブソングとして私の作風では珍しい部類の詞のセカイだったりするのですが,私自身の日常と空想をリンクして書いています.日常感を曲に付与する為に博多を舞台にしてみたり.実はこのXでの先行公開からミックスと一部歌唱データを修正しております.
イントロのリフはペンタトニック主体のもので,主旋律は私の楽曲で多用しているシンセの音色とクリーントーンのギターを重ねています.
Bメロの終わりからサビ頭へのコード進行なんですけど,「F#7→F#7(#9)→F#aug/C」という流れになっていて,サビ頭がF#aug/Cから始まるという奇妙な響きで突入していきます.いわゆる分数augというコードになります.
ライブ映えするようなドライブ感のある楽曲が欲しいなと思って構想を練っていましたが,全体的にストレートだけどBメロの複雑なギターの絡みがあったり,かなり満足のいく形で仕上がったと思います.
03.Yummy Yummy - Album Mix
昨年のボカコレ2023夏でリリースされた12作目の楽曲です.ボカコレで何か爪痕を残せないものかと私なりに思い描くボカロ曲らしさといったものを詰め込んだ楽曲になります.「クラクラ」と同様にMV(映像・イラスト)を赤坂るびいさんに担当して頂いております.こちらも大変素晴らしい映像に仕上げて頂きました.
残夜草紙様の『Yummy Yummy feat.初音ミク』MV(イラスト&動画)を担当させて頂きました🍷✨
— 赤坂るびい (@akasakaruby) August 4, 2023
おしゃれでエモいポップな病み曲なので是非ご視聴頂き、良いと思って頂けましたら引用元ニコニコのいいね・コメント・マイリスを何卒よろしくお願い致します!🙏#ボカコレ2023夏 #ボカコレ2023夏ルーキー https://t.co/F46vFhsZK8 pic.twitter.com/QyU3fIfkNd
BPM99のリズムのハネた楽曲で,ギターとベースのグルーヴィーなフレーズがあることで,ポップなサウンドの中にも複雑な絡みが生まれました.サビはスラップですが,全体的にシンセベースやサブベースの音色を重ねて低音の補強をしています.LチャンネルのギターサウンドはAmplitubeのアンプシミュレータでジミ・ヘンドリックスモデルを使っております.凄くカッコいいサウンドになりました.
BPMが99であること,100に満たない…1が足りない99というダブルミーニングで冒頭の「ピースが足んない99」という表現にしてみました.そして大人な雰囲気に置いて行かれる青いやつ=私だったりと結構自虐的.
この曲もクラクラと同様に,アルバム収録にあたってリミックスしております.
04.キョコウストーカー - Album Mix
ボカコレ2023春で発表した11作目の楽曲です.詞はメンヘラ寄り,ちょっぴり猟奇的な様相をテーマに書きました.イラストは々さんに描いて頂きました.めっちゃ可愛いです.
キョコウストーカー pic.twitter.com/nfqMy497ID
— 々🦐海老鮭 (@ebijakee) December 11, 2024
曲については,モーニング娘。やそのプロデュースをされているつんく♂さんのようなダウナーで何度も聴きたくなるような中毒性のあるメロディを意識して書きました.
勿論一気に重ねているわけではないですが,シンセだけで20トラック以上使っていて,当時の制作環境ではPCの耐えられる負荷としてもかなりギリギリラインを攻めた楽曲構成,アレンジでした.中盤の台詞はVOICEVOXのナースロボ_タイプTに喋って頂いております.いい具合に迫ってくる恐怖心の描写ができた気がします.
この曲もアルバム収録にあたってリミックスしております.
05.死にきれないや
無色透名祭Ⅱというイベントに参加した楽曲になります.元々は今回のアルバムからの先行リリース曲という立ち位置になります.
死にきれないやってタイトルのインパクトもあってか,もしくは運が良かったのか想像以上に聴いて頂けて嬉しく思います.歌詞については今後の活動について示唆しているような詞をイメージして書きました.このままで終わるわけにはいかない,まだ私の曲を届けたい,音楽を続けたいという意志の表出だと思います.
イントロはR指定のサドマゾのような雰囲気にしたくて,アコーディオンやピアノの音色を重ねて作っています.この傾向は後に発表された15作目の「壊騒宴への招待状」にも繋がってきますね.
2コーラス目のAメロの後に俗に言う発狂地帯のような展開を見せるのですが,ここのギターはタッピングにスウィープフレーズの応酬でかなり暴れています.
前述のイベント以外ではリリースしていなかった為,今回アルバム上では記載されていませんが,収録にあたって動画で出したテイクからリミックスをしております.
Side Ego
06.病み鍋狂騒曲
ここからはすべてが未発表曲の領域.そしてマニアックでディープな音楽性を追求した「Side Ego」の幕開けになります.この曲は本作の核になる楽曲として曲の構造を先に考え,しばらく寝かせてから制作に着手していて,特異な曲構成なこともあって完成には時間がかかりました.それこそ配信登録の直前までミックスしていました.
「病み鍋」というアルバムタイトル,キーワードがある中で初期構想の段階で複数の楽曲がごちゃ混ぜにされたカオスな楽曲といったテーマでした.学生の頃から患っている鬱病が悪化して,制作過程でフラッシュバックとの格闘もあって,精神的にも身体的にもかなり疲弊してぶっ壊れていた頃に書いた詞がベースになっています.生きること全般に対して不器用なんですよね.そんな社会に適応できていない私自身を敢えて道化として描いて,憎悪であったり理不尽な思考,アンバランスな日常を詞のセカイで追求してみました.滑稽ながらも狂気を持ち合わせた不気味なポップさというものがこの曲の持ち味かもしれません.
BPMチェンジ,リズムチェンジに一部変拍子,そして残夜草紙名義の楽曲では初のデスボイスが使われています.中盤のハネた曲調に変わるところはナイトメアのkiller showってアルバムの雰囲気にインスパイアされました.ダークなサーカス団,陰りがありつつも美麗な様です.
07.FAKE
この曲は変拍子命ですね.イントロとAメロでは小節ごとに4/4と7/8,間奏の後半では5/8と7/8が交互に切り替わっています.意図的に難解な感じを狙ってみました.こちらもラクリマ好きなところが濃く出ている気がします.ちなみに冒頭のシャウトはFuckと叫んでいます.
内面に渦巻く感情というものをメモ帳へその時に浮かんだ単語や架空のストーリー,人物を交えて書き込んだりするんですよね.案外そういった一時的な負の感覚が詞として当てはまったりして,鬱屈とした憎悪や怒りの発散になるのかもしれませんね.メモに書き込んだ段階での精神状態はともかく,比較的ドライに制作を進めていた気がします.
ギターのバッキングではワーミーペダルを多用しています.あと「DIVER」とか他の楽曲でもよく使うんですけど,B7(#9)のコードをサビの直前に持ってきていますね.結構この響きが危険な感じがして好きだったりします.
08.ZOMBIE'S BRAIN
リードからバックまでシンセを多用しているので「Side Ego」の中では1番これまで発表したシングル曲の空気感に近いサウンドかもしれませんが,それでもトリッキーな雰囲気を出しているのは「嗚呼異国ノ~」のメロディでしょう.Cフリジアンでボーカルのメロディを作っています.
ゲームの戦闘BGMのような雰囲気作りにゴシックで暴力的なヘヴィロックに仕上がりました.詞は情緒が乱れた自分をイメージしていますが,社会に揉まれて心の壊れた自身をまるでゾンビのようだと思って書きためていたものがベースになっています.これまた結構自虐的.
完全に無というわけではないですが,ドラムはあまりフィルっぽいフィルを入れてません.機械的に叩いて無機質で生命を感じない…人間的ではない表現を意識してみました.
最後に鳴らしているのはチャイニーズゴングです.B'zの「TOKYO DEVIL」って曲があるんですけど,曲の締めに思いっきりチャイニーズゴングを叩いているのがとてもカッコよくて真似してみました.このゴングの響きが次曲へのいい繋ぎになったと思います.
09.Destiny
壮大なバラードを書こうと思って2年近く試行錯誤して仕上がった楽曲です.その結果イントロに40秒,サビまでに2分,間奏も1分以上…とサウンドのみならず曲全体のスケールとしても昨今のボカロ曲では珍しいインパクトが出せたような気がします.
詞のテーマは失恋ですね.かなり重ための笑
たとえフィクションであっても実体験に付随する想像であったり,妄想,夢の続きというものが書く詞へ結びついたりするのですが,失意にある自身を詩人に投影して救いようのない,果てしなく長く続く受難の旅を歩む様を描いてみました.詞を書きながら苦しみながらもがき,疲弊しきって視界がグラつきながらも旅を続けているイメージがあったので,Bメロやサビの裏ではフェイザー系のエフェクターを使ったギターのアルペジオで表現しています.
バラードではあるんだけどヘヴィなサウンドと詞であったり,エスニック系の楽器も使っていたりしてつかみ所のない曲に仕上がっていますね.ファンタジーが舞台のゲームBGMにもありそうな…イントロはラスボス戦前の緊迫感,間奏では6/8のリズムに切り替えて一気にケルト感に引き込むパートがあってこれも魔法の森のようなイメージ.「The wizard who makes music(音を紡ぐ魔法使い)」という私のもうひとつの活動の題材にも通ずるアプローチになります.そのケルト風味のパートが終わったら一気にギターソロへなだれ込むという怒濤の展開を見せてます.ド派手にひっちゃかめっちゃかやってます.
10.Shambalah
この曲はとんでもないです…曲の構成としてはサビというサビのような立ち位置のセクションが終盤まで一切登場してこない曲です.間奏の比率が高く,インストゥルメントの楽曲としても聴けそうな感じですね.シタールを随所で使っています.今作では最も変拍子やBPMチェンジが使われていて,一聴で全体像を掴むことが難解な芸術作品の領域に踏み込めた気がします.
詞についてですが,珍しく曲先で書いた楽曲になります.前曲「Destiny」の続きというか,ifの世界線ってイメージが強いですね.愛していた人というのは実は幻想だった…と.あらゆる面で奇妙な単語のチョイスや組み合わせをした内容の詞になりますが,それが架空の理想郷を描き,救いを求めて彷徨う空虚な自分らしさが出ている気がします.結局1番のポイントで伝えたいことは終盤の「上辺だけの愛で今も生きてる」ってことなんです.
知り合いの絵師さんに聴いて頂いた際にラクリマの影響を感じると言って頂いたのですが,実際にかなりラクリマ特有の異国情緒な雰囲気やイメージ作りに感化されて書いていました.あとはDream Theaterとか,あくまで曲が持つ失意の底へ沈みゆく私が思い描くユートピアという大枠のテーマから外れない範囲で変拍子の扱い方やギターのアプローチを参考に練ってみました.
漠然とプログレッシブ・ロックな感じをボカロックで昇華したいと思って,前述の影響元に限らず,ファンキーでグルーヴィーなパートがあったり,どの場所を切り取っても何らかのハイライトになってしまうような曲へ仕上がったと思います.聴き終えた頃には短編映画のような満足感が得られると思います.
ここまで読んで頂きありがとうございます.ぜひ2年ぶりの新譜「病み鍋」を受け取って聴いてくださると嬉しいです.