だからあなたを、好きになった
初対面で会ったときの印象はお互いに、最悪だった。
それまで、ネットでの交流は良かったし
一緒に住もう、と言ったのもパートナーのほうからで、
私としてはそれまでに何度も、
あ、もうダメかも。別れるかも。
と内心何度も思う機会があった。
それから、上京して初対面で、お互いに
「あっ。はい。やはり現実ってこうですよね」状態。
お互いに外見ではそれまでのイメージは崩壊。
声だけで同棲を決めたパートナーの勇気はすごい。
人間の妄想力というのは、便利で怖い。
ギクシャクで始まった日々だけど、
このひとで良かったと思うのは、
私が何かをするとすぐに
「ありがとう~❤」
と、言うことだった。
それまでの婚姻生活、何をやっても当たり前。
感謝されたことなんて一度もなかった。
婿入りした元夫に「実家と味が違う」と言われた。
そうだろう。ここは私の家なのだから。
学校に通い始めた子どもたちが言った。
「給食のシチューは美味しいよ」
その日の夜のメニューは、
給食センターに勤務する友人から教えてもらった通りに作った
シチューだった。それから二度と作っていない。
私が得意だったのは魚料理だけだった。
パートナーは、そこに惚れてくれた。
「魚、捌けるなんてすごい!」
ここだけで同棲決めるなんて、人生の選択、良かったのかなんなのか。
それから、
家事全般、本当にすべてにおいて、
「ありがとう~❤」
と、パートナーは言う。
料理をはじめ、食器洗い、洗濯、掃除(これは手抜き)
家事、全部に、「(やってくれて)ありがとう~❤」と言われる。
初めて、照れた。嬉しかった。
やって当然、女の仕事、義務、そういうど田舎に居たから。
ありがとうを、こんなに素直に言えるひとと
巡り合って一緒にいる。
魚料理が得意でよかった。
漁業が盛んなところだから、10kg以内の魚は
なんとか出来る体力と破壊力を持っているのが私です。
けれど、都会にいると、魚って
切って売ってあるから、マイ包丁の出番はなくなった。
なんか、騙したみたいですみません、と思う。
それでも、ありがとうって言ってくれて、
ありがとう。