楽園の女王2024(「女王ステ」シリーズ)<2024.06.27~30 六行会ホール>観劇レビュー
はじめに…
17世紀初頭。
オランダ発、341名を乗せた豪華客船バタヴィア号は難破し、その生存者たちが豊かな自然に恵まれた無人島(ビーコン島)に逃げ延びた。
しかし、島の奥地では、まだ幼いメアリーたちが隠れて治療薬の研究を行なっていた。
その数日後、生存者たちによる虐殺が始まる-。
女王ステシリーズ 1stシーズン 「赤の女王」「楽園の女王」「純血の女王」3部作の2作目の再演。
「楽園の女王」は「赤の女王」から数十年後(リリィのセリフからすると40年後)という舞台設定。
主要キャラクターも繋がって登場する。
私は「赤の女王」を観劇したことがあるのだが、その次の「楽園の女王」を観劇できなかったので楽しみにしていた。
物語はこのあとに綴るとして、先にシリーズ観劇した印象をいうと、、
「赤の女王」から「楽園の女王」へと繋がりがあるから、その順で観るのがもちろん良いとは思うけれど、逆に「楽園の女王」を観劇してから「赤の女王」を観劇しても、繋がりの謎解きのような感覚で観劇できるのではないか…あの有名なスターウォーズシリーズみたいにエピソード××のように感じながら観劇できるのでは…?と思った。
それくらい脚本、ストーリーがしっかり練られてるなぁ、素晴らしいなぁと感動しながら観劇することができた。
登場人物
さて登場人物。
これストーリーのネタバレがあるし、最初と最後に綴るのが面白いかも…
ということで、まずは下記の通り。
(※は「赤の女王」と繋がりあり)
①メアリー(ビーコン島で暮らす少女):沖侑果
↓↑(会ったことがある?)
②リリィ ※:大滝紗緒里
③カーミラ(メアリーの想像上の親友)※:西葉瑞希
④イザベラ(貴婦人)※:三田麻央
⑤エマ(イザベラのメイド)※:草場愛
⑥マリア(修道女):佐武宇綺
⑦エスター(修道女):日和ゆず
⑧ルイーズ(製薬会社キュアーズの女社長):中村裕香里
⑨フィオナ(ルイーズの部下):本条万里子
⑩ベル(メアリーの友人):岡田あずみ(STU48)
⑪ゾーイ(メアリーの友人):山﨑悠稀
⑫アン(ロンドンから来た貴族):星守紗凪
⑬グレンダ(アンの付き人):中川梨花
<サーヴァント>
石田みう
杉下希美
藤田こころ
山口輝鈴
結城まお
蘭
簡易あらすじ(ネタバレ)と物語やキャストさんの感想
「楽園の女王」という楽曲を全員で歌唱、ダンスパフォーマンスするオープニング。
場面転換。
オランダ発、341名を乗せた豪華客船バタヴィア号の乗船シーンからはじまる。
開演直後、観客席の導線を使ってキャストを登場させていく演出。キャストに親しみを覚えるし、物語の世界に入れるような感覚にもなって、私はすごく好きな演出だった。
バタヴィア号に乗船するのは、アンとグレンダ、マリアとエスター、イザベラとエマ、そして最後にリリィ。
リリィは、差出人不明の招待状によって、どこへ向かうのかも分からずに乗船した。
この最後に登場するリリィ。全身黒づくめでストローハットを目深に被り登場。素顔を晒したくない彼女の立場を示唆していて、今後何かが起きるであろう雰囲気を大いに醸し出す素晴らしい佇まいだった。
船内では様々な話や交流があり、その中には、ロンドンで殺人鬼が幽閉された収容所を脱走した話もされていた。
その殺人鬼…実はアン。グレンダが支援しながら殺人や脱走を実現していたのだが、アンは悪魔を信奉する殺人鬼だった。
アンが国外逃亡を図る目的で船をジャックしようとする。それを阻止しようとしたリリィと揉みあいになり、舵の操縦を誤った船は大きなサンゴ礁群に激突、難破してしまう。
難破した船。。
その乗員の生存者たちが、豊かな自然に恵まれた無人島(ビーコン島)に流れ着いた。(海岸に打ち揚げられた?)
しかし、このビーコン島…無人島と思われていたが、何年も前から製薬会社キュアーズが入り込み、黒死病(ペスト)の治療薬の研究を行なっていた。
そのキュアーズで研究員として働いているのが、メアリーとその友人ベルとゾーイ。(ここで初めて、メアリー、ベル、ゾーイが登場)
ここから様々な関係が動き出す。(すみません、、少しうろ覚え部分あり…改めてディレイ配信観てから修正したい…)
メアリーが積極的にベルやゾーイとともに負傷者の看病や、食料、飲料の対応。
それを研究施設を絶対に発見されたくない社長ルイーズとフィオナが見つけ、メアリー、ベル、ゾーイに怒り。
メアリーとリリィの出会い。リリィはメアリーに、どこかで会ったことある?と質問。(←これ、前作「赤の女王」主演のエルからの繋がりがあるので、ぜひ観劇、鑑賞してほしい!)
メアリーのもとにカーミラが現れ、リリィは危険人物と忠告。
メアリーとアン、グレンダの出会い。アンはメアリーを気に入る。
イザベラとエマは森の中で果物を採ったりと優雅に過ごす。
etc…
そんな中、生存者の中で黒死病(ペスト)に感染した人が発見される。
製薬会社キュアーズの研究施設の入り口前。
社長ルイーズが一時は激怒、困惑するが、治療薬の実験体に出来ると判断し、研究施設に入れる。
そしてその感染者に治療薬を投薬..…感染者が狂暴化…いわゆるゾンビ状態になってしまう…
完全にこの治療薬の研究は失敗。だが社長ルイーズは、人を狂暴化できる薬=人間兵器にすることが出来、大儲けが出来るからと声高らかに大成功!と言う。
このシーン、かなり狂気じみた感じの悪いシーンだが、そう思わせるということはルイーズ役の中村裕香里さんの演技が素晴らしいということですね。
ゾンビ(劇中でゾンビという言葉は出てこないが、説明しやすいのでここではそう呼ぶ)は、生存者の首筋に噛みつき血を吸い、どんどんゾンビを増やしていく。
このあたりのシーン、ずっとサーヴァントの6名が凄い。
サーヴァントの皆さんはエキストラ的に複数の役をこなす演者さんだが、セットを動かす裏方をしたり、重要な場面でダンスを披露したりと、クラシックバレエをはじめダンススキルの高い人達なんだろうな、、ずっと見事なパフォーマンス、そしてチームワークだった。
また、マリア役の佐武宇綺さんとエスター役の日和ゆずさんの殺陣、、武器も結構大きかったし、かなり魅せる努力もされたであろうことがよく分かる素晴らしいパフォーマンスだった。
(シーンの順番はうろ覚えなのだが…様々なシーン👇)(←これ、改めてディレイ配信観てから修正しよ…)
イザベラとエマはビーコン島での生活を楽しんでいる…ように見えるがイザベラが本当に少しだけ意味深な雰囲気を出す。
ベルとゾーイ。ベルが黒死病(ペスト)に感染してしまう。
優しく他人思いのベルはゾーイに自分から離れるように話す。
アンとグレンダ。アンは黒死病(ペスト)に感染していた。実は豪華客船バタヴィア号に乗船する時から首の後ろに黒斑点があり、それをグレンダは気づいていたが黙っていた。
アンは悪魔に不老不死のお願いをすると言う。
悪魔には100人の生贄を差し出す必要がある。
だが、今ビーコン島にはゾンビ化した人が多数いるため何とかなる…と無差別殺人をはじめる。
メアリーとリリィ。ゾンビに襲われそうになったメアリーをリリィが助けるが、傷を負って倒れる。そこにカーミラが現われ、リリィは人間ではないと忠告する。
メアリーは研究室にリリィを連れてくる。研究生活にも行き詰まっている様子のメアリーを見たリリィは一緒に暮らそうと話すが、メアリーはリリィを刺して鎖で拘束する。メアリーはリリィの血を採取し、治療薬を完成させる。
拘束されてひとりになっているリリィの前にカーミラが現われ、招待状を送っておびき出したことや、メアリーは昔の親友の生まれ変わりだと明かす。
そう、カーミラとリリィは初対面でもなく、また2人とも人間ではない。
カーミラは悪魔。リリィは不老不死の吸血鬼。(←是非「赤の女王」の観劇、鑑賞を)
メアリーはリリィの血液を混ぜて完成させた治療薬をゾーイと共にベルに投与する。薬が効き治療は成功したように見えたが、もう既に体力が限界になっていたベルは死去してしまう。
このシーン、、実際にベルを演じた岡田あずみさん(あずみん=推しメン)の小柄で心優しい雰囲気がベルの少女っぽさ可憐さを体現していて、推し補正はあるとはいえ(笑)、はまり役だったと思う。
ムードメーカー要素のあるゾーイ役 山﨑悠稀さんから、この数日間が訪れるまでは本当に素敵な友情関係だったんだろうな…という背景が見えて、素敵な温度感が感じられて、それも相まって泣いた(;;))
(↓↓写真:ベルのセリフ「ごめんね」の発音が標準語じゃなく広島弁になるあずみんが取った策、「五反田」と同じ抑揚って頭と体に染み込ませたらしいww なのでせっかくだから終演後に五反田駅に行って帰ってきた笑)
ルイーズが研究室に現れるがメアリーはルイーズを閉じ込め、死去したベルもその研究室に横たわっている状況のまま火を放つ。
アンは、マリアやエスターなど多数の人(ゾンビ?)をその手にかけ悪魔に生け贄を捧げるための100人の殺人を達成し、悪魔を呼び出す儀式をするが何も起こらない。
人数が足りていないと思ったアンは新たに毒牙にかけようと動く。
そこに現れたのは、イザベラとエマ…否、イザベラとエマに扮していたエリザベートとアメリア。
このエリザベートとアメリアも、カーミラとリリィ同様、2人とも人間ではない。
エリザベートは女王、アメリアは付き人という関係性は変わらないが、2人とも不老不死の吸血鬼。(←是非「赤の女王」の観劇、鑑賞を)
エリザベートとアメリアが、アンを追いつめ、エリザベートがアンの首筋に噛みつき不老不死の吸血鬼にする。
そのうえで自慢の顔も斬られ、島の森で採ったたくさんの果物(←これ、劇中に伏線があってここで回収されている)を重しとして体につけられて、海に沈められる。
ここでアンが今回の物語から退場するが、アン役の星守紗凪さん、可憐なビジュアルとのギャップを最大限に生かした潔いほどの狂気が素晴らし演技だった。
そしてペアのグレンダ役 中川梨花さん。アンの最後のシーンで助けろと叫ぶアンに「王族(エリザベートのこと)に触れることは禁じられているので」と言ったのが個人的にはツボだった。いや、今までペアでやってきてたのに、えっ、最後そこ…!?ってちょっとウケてしまった(笑)終始かわいらしかった。
そして、エリザベート役の三田麻央さんとアメリア役の草場愛さん。いや、、もう圧巻…!このエリザベートとアメリアの登場シーン、、本当に鳥肌が立った…
声、表情は、それぞれイザベラ→エリザ、エマ→アメリアになった時に意識とともに変えてる感あるし、パフォ(殺陣)は鳥肌立つくらいの表現力だし、もう演技しているというよりエリザとアメリアとして生きてると思った。(←この超ドS役で生きてるって表現するの微妙かもだけど全力で褒めてます笑)
と思えば、少し遡ったイザベラ、エマのシーンでは、観客席に降りてアドリブで自由自在にふざけてみて盛り上げたりと、このふたりがこの作品の出来栄えを何段階もあげてるなあと思った。
そして…メアリー。実はメアリーも黒死病(ペスト)に感染していた。バタヴィア号が難破して乗客がビーコン島に辿り着いた初日、黒死病(ペスト)に感染していたアンに気づいており、わざと人口呼吸をしてメアリー自身も感染していたのである。
この告白をするシーンが結構好きだった。メアリーは主人公で純粋で儚げなところもあるが、一方で実は今に絶望をしていて死にたいと思っている闇を持っている。それがよく分かる集約されているシーンだと思ったから。
メアリー役の沖侑果さん。STU48ファンなので以前から知っていて、沖さんの舞台初出演を観たいというのもあって観に行っていたが、純粋さと闇という相反する雰囲気があって、観ているこちらも笑みとともにゾクッとさせられるところもあって素晴らしかった。
そしてメアリーは治療薬を海に投げる。魚が口にし、その魚を鳥が口にし、その鳥を動物が口にし、その動物を人が口にし、食物連鎖でいずれ世界中に広がることを示唆して。。
そして自身は海に身を投げる。それをリリィが追いかけて噛みつき吸血鬼、不老不死にする。
「あなたはこの後、私の為に生きなさい」
リリィ役の大滝紗緒里さん。クールビューティーでその眼は冷静沈着、だけど殺陣での強さもあり闇を持つ役柄。佇まいが終始リリィのイメージそのものな感じで、本当に素敵な演技だった。
カーミラ役の西葉瑞希さん。
悪魔にこんな表現するのも変だが、可憐で可愛らしい悪魔、でも圧倒する強さを感じさせる高らかな笑いと妖艶な雰囲気のある笑み。かといって目立ちすぎるわけでもない。
常に涼しい顔をしていて、退屈しのぎに周囲の人間をかき回す悪趣味な感じを表現していて素晴らしかった。
カーミラとリリィのやり取りシーンも、心の中でうぉ、この目には見えないけど青い冷静な感じの炎がバチバチ音を立ててる気がしてすげぇな…って思いながら見ていた、素晴らしいシーンだった。
あと👆に書いていないことで、実は死神と悪魔のシーンもラストの方に出てくるのだが、このシーンも同じようにゾクッとしたシーンだった。
死神役を一人二役で演じられた佐武宇綺さんが美しすぎてビビったのもある笑(←このシーン情けないことにうろ覚えになってしまってるから書けなかった…早くディレイ配信観たい)
フィオナ役の本条万里子さん。ストーリーテラーとしてリリィに操られながら現在を演じ、そして少し過去となる島での出来事を演じ、その切り替えが難しそうと思ったけど、説得力のある演技で話に入ることが出来た。
ラスト…
オープニング同様、「楽園の女王」という楽曲を全員で歌唱、ダンスパフォーマンスするエンディング。
実はここ、あるこだわりが隠されていたのを観てかなり震えた(↓"最後に"の章で記載)
登場人物(改めて)
最初に書いた通り、改めて最後に綴る登場人物。
(※は「赤の女王」と繋がりあり)
①メアリー(ビーコン島で暮らす少女→リリィにより吸血鬼になり不老不死へ):沖侑果
②リリィ(不老不死の吸血鬼)※:大滝紗緒里
③カーミラ(メアリーの想像上の親友→実は悪魔)※:西葉瑞希
④イザベラ(貴婦人)←エリザベート(女王。不老不死の吸血鬼)※:三田麻央
⑤エマ(イザベラのメイド)←アメリア(女王のメイド。不老不死の吸血鬼)※:草場愛
⑥マリア(修道女):佐武宇綺
⑦エスター(修道女):日和ゆず
⑧ルイーズ(製薬会社キュアーズの女社長):中村裕香里
⑨フィオナ(ルイーズの部下。ストーリーテラー):本条万里子
⑩ベル(メアリーの友人):岡田あずみ(STU48)
⑪ゾーイ(メアリーの友人):山﨑悠稀
⑫アン(ロンドンから来た貴族→殺人鬼→エリザベートにより吸血鬼になり不老不死へ):星守紗凪
⑬グレンダ(アンの付き人):中川梨花
⑭死神:佐武宇綺(二役)
<サーヴァント>
石田みう
杉下希美
藤田こころ
山口輝鈴
結城まお
蘭
最後に…
『「女王ステ」シリーズは、「誰も救われない、誰も報われない物語」をキャッチコピーに血塗られた実在の悲劇をモチーフにし、女優のみで描く舞台シリーズ』としてるだけあって、今回の「楽園の女王」も可憐で可愛らしい要素、闇や醜悪な要素、個々の登場人物がその両面を持っていたり、舞台全体でキャストやサーヴァントの皆さんがその両面の雰囲気をつくりあげたりと、このギャップが「女王ステ」舞台の魅力だなぁと感じた。
そして、、
オープニングの全員での歌唱、ダンスパフォーマンス…
エンディングの全員での歌唱、ダンスパフォーマンス…
オープニングは全キャストが首を絞めているようなポーズのシーン
エンディングは死んだ人や普通の人のキャストはオープニングと同じ首を絞めているポーズなのに対し、不老不死のキャストは腕を上にあげているポーズになっている…!
こういった細かいこだわりの演出、描写
こういうのを見つけるのも「女王ステ」舞台の魅力だと思う。(きっとまだ他にもおもてに出ていないこだわりシーンがあるんだろうなあ)
演者の皆さん、スタッフの皆さん、素敵な時間と空間をありがとうございました!
-END-
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