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駄菓子屋のおっちゃん。

※別に良い話とかではありません。

私の住む町は、都会かと言われればそうでもないし、かといってそこまでの田舎でもない、中途半端な場所に位置しています。

自転車でちょっと移動すれば公園が沢山あり、大きいところから小さいところまで様々。

うちの近所には5つも駄菓子屋さんがあった。その中の2つは文房具屋さんも兼ねているのだけど。

自分の学校区域から一番近所の駄菓子屋をホームにするのが子供達の中での暗黙のルールなのだが、

ある日、たまには違う店に行ってみようと誰か知らない子が言い出し、皆それについて行った。(小さい子は特に気にせず誰とでも遊ぶ現象)

私も100円を握り締め、そのいつもとは違う駄菓子屋に向かった。

私の周りは皆1日100円を親からもらい、その100円の中でぴったり何に使い切るのかということに結構頭を悩ませていた。

誰しもこの時間が好きだったはず。

子供でもタイプは様々で、堅実に貯金して1日50円しか使わない子。

チマチマしたお菓子をいっぱい欲しいので10円のものばかり選ぶ子。

今日は思い切って大きめの80円クラスのお菓子に手を出す子。

100円を全部カードダスにぶっ込んでしまう子。

大人になった時の人格は皆ここで分岐するんじゃないの?ってくらい皆一様に違うものだ。

私はどちらかといえばチマチマタイプかもしれない。とにかくあれもこれも沢山手にしたいのだ。

とはいえ型にはめられた子供だったのであまり冒険はしたことがなく、30円で液状のシロップジュースのような『飲み物』を買うという決め事以外は、色々バリエーションは変えていた。

駄菓子屋さんに入ってすぐ、ふと目についた四角い箱。

紙製の箱に長細い丸ボタンがついていて、押すと下の穴から丸いガムが出てくる仕組みだ。

中のガムは赤や黄色、青など色がついていて、その色の結果によってもう一つ貰えたり別の景品が貰えたりする、いわゆる福引のガラガラのような駄菓子だった。(当時20円だったと思う)

私は今日はそれを買おうと決め、1等である黄色の玉が出るよう祈りながらボタンを押した。


すると、出てきたのは黄色のガム。1等のやつだ!横の箱に書いてある色見本と見比べても…

うん、間違いない。

私はあまりくじ運が言い方ではないので、ドキドキしながら

駄菓子屋のおじさんにそのガムを見せた。

「あのっ、これ!どうしたらいいですかっ?」

するとおじさんは私の手を見て


「どうしたらって…食べれば?」



……その日私は1等のガムを噛み締め、帰路につきました。


夜になって、悶々と考えた。

あれはくじであってくじでなかったのか…。

おじさんがくじの存在を把握していなかったのか…。

そもそもあのようなお菓子の売り方は自由だろうし、店の方針が…いやそんな方針ある?

とか色々考え、30年近く経った今でも忘れることができません。

あの駄菓子屋は今はもう無くなり、マンションに建て変わってしまいましたが、


おっちゃん…元気でやってますか?

おっちゃん…結局あれは何だったのですか…?


ガシャポンで100円を詰まらせた時のような、あの日の感覚に似ています。





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ざき
自分には何ができるのか、色々な仕事に就きましたが、いずれは執筆だけで生きていこうと思っているしがないライターです。