三軒茶屋②

やたら狭いバーに連れて行ってもらった。
初見で行くような店ではない。

とにかく暗かった。当時32歳の彼がこんな所に若い女を連れてくなんて、格好つけるにも程がある。あのバーの店主はさぞかし可笑しかっただろう。何も知らない若い女とイギリス人のサラリーマンという組み合わせは最早気味が悪い。

この時も何を話したか覚えていないが

このバーで私たちはある程度お互いの好意の度合いを確認していた。

田園都市線に乗るために吸い込まれるような三軒茶屋の階段を降りていく。その時、彼は私に付き合ってほしいと伝えてきた。

彼は私に付き合ってくださいとはっきり言っていた。

それだけはきちんと覚えているよ。

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