悲鳴を上げるワイの髪--うなじを剃るな--
先日、アルバイトを始めて、一日で辞めた。
ちょいと待ってくれ。読むのをやめないでくれ。
確かに一日でアルバイトをやめた人間の文章を読む気にならない気持ちもよくわかる。
しかし、問題はそこではないのだ。
今回はアルバイトの話ではなく、アルバイトを始めるにあたって、うなじの産毛を剃らざるを得なくなった私の悲劇を語ろうではないか。
私は某ファミリーレストランでアルバイトを始めたわけだが、飲食店たるもの、衛生面には気を付けなければならない。
衛生面に気を遣っているのだろうなと感じられる点は様々あるのだが、その中で、「帽子に髪を全て入れる」という点が全ての悲劇の始まりだった。
いきなりカミングアウトするが、
私はうなじの産毛が濃い
コンプレックスである。
どうでもいいかもしれないが、本当に人より濃いのである。
いつもは髪を下ろしているため上手く隠せていると信じたい。
しかし、当時は髪を全て帽子に入れなければならなくなったため、非常に焦った。
「もしかしたら奇跡が起こって薄くなっているかもしれない…!」と思い、試しに髪をお団子にし、鏡でチェックした。
「わし、やっぱ濃いんや…」
焦りに焦り、検索エンジンで「うなじ 剃る」で検索した。
検索の結果、「自分で剃るのはオススメしない」「美容院に行って剃ってもらいましょう」と書いてあったが、しがない大学一年生、お金も時間も何もない。あるのは授業と課題だけ。
したがって、自分で剃ることにした。
画像で美しく見える剃り方のみをチェックし、思い切って剃った。
その結果、なんと大成功した。
見事コンプレックス解消である。
そしてバイトを辞めた。
急展開であるが、辞めたのにはちゃんと理由があるため、そこは安心してもらいたい。少なくとも、髪が原因ではない。
そしてバイトを辞めて以降、剃ったら剃ったでチクチクし、剃らなければ剃らないで生えかけが気色悪いうなじに悩み続けている。
剃るか剃らないかで悩んだ挙句、剃った方が何かと便利(?)だと思い、特に意味も理由も目的もなく剃り続けることにした。
それからずっと週1ペースで剃っているのだが、今日、遂に悲劇が起きてしまった。
産毛ではない髪まで持っていかれたのだ。
悪い予感はした。
いつかやりかねないなとは思っていた。
しかし、生えかけのものほど剃りたいものはないのだ。
今回も欲に負けて剃っていた。
いつの間にか、剃るのが楽しみになっていたのだ。
生えかけの産毛がチクチクになる快感がやめられなかったのだ。
唯一無二のストレス解消法として私の中に溢れてしまっていた。
だが、もう剃るのはやめる。
生えかけのものを剃る快感を得ようとしたせいで、生えきったものまでもを犠牲にしてしまった。
自分自身の欲望のせいで、ハゲになるわけにはいかない。
だがらこれを機に、剃るのをやめる。
欲望から髪を解き放ち、自然と抜けるまで一緒に生きる。
ごめんな、髪。ありがとう、髪。
この物語はノンフィクション・実話である。
しかし、「自分自身の欲望のせいで大切なものを失う」「行き過ぎた欲望で獲得できるものは喪失である」という教訓を伝えたかった訳ではない。
あくまでも「自分でうなじを剃るな」という個人的意見を述べたかっただけである。