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Lolo 流エジプト神話ー水神が宇宙・天空・地上を創造し、そして龍(蛇)は水神の唾から誕生した
あと数時間で新年です。渋谷は外国人ばかり、しかしちょっと裏側に行くとガラガラです。
さて2024年の干支は甲辰ですが、エジプト神話では蛇及び龍はアポフィスといい、非常に悪者です。そこで今年最後はLolo流エジプト神話です。
なぜLolo流エジプト神話なのかと申しますと、神話というのは様々なバリエーションだらけで、しかもその大半が辻褄が合わない、もしくは難解です。なので以下はLolo流アレンジ版です。それにしても、エジプト神話は何となく日本の古事記にも似ている気がします。
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ーエジプト神話(Loloバージョン)ー
この世は全て「水」で始まる。
地球も宇宙も無かった遥か大昔、「水」は自己創造で誕生した。他に存在するのは「未知」「永遠」「暗黒」のみで、まだ神々も人類もいなかった。
誕生した「水」はヌンと名乗った。ヌンとはずばり「全ての始まりの水」を意味する。つまり水から全て生まれるということで、ヌンの誕生によりまず宇宙が生まれた。
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八個の卵から神々が生まれた
宇宙を生んだヌンは次に八個の生命の卵を生んだ。それらの卵は熟成すると順番に殻を破り、神々が出て来た。男女ペアになっている八元神だ。(*八個の卵から「里見八犬伝」の8つの玉を私は連想しました)
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八個の卵の一個からは太陽神ラー(またはアトム)が出てきた。その時、すぐそばで蓮の花(ロータス)が咲き花びらが開いた。その花びらの中からスカラベが現れた。
スカラベとは甲虫なのだが、人間の子どもの姿に変身する能力も持っていたので、ころころよく姿を変えた。
続いて湿気の女神テフヌト、空気神のシューも生まれた。それによって、これまでは「宇宙」しかなかったが、初めて「天空」が現れた。
太陽神、空気神、湿気神、大地神、空神がそろって、「地上」が生まれた
ラー(太陽)が毎晩東から西まで旅をし不在をする間、残されたシュウ(大気の男神)とテフヌト(湿気の女神)が恋愛関係に陥り、二人に双子の男女が出来た。これが第二世代の神々の誕生であった。
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場合は頭に羽です。
生まれた双子の赤ん坊は息子のゲブ(大地の神)と 娘のヌウト(空の女神)だった。
この二人の誕生により地上の生命に必要なすべての要素が整い(太陽(ラー)、空気(テフヌット)、湿気(シュウ)、大地(ゲブ)、空(ヌウト))、ようやくここで「地上」が生まれ、「宇宙」「天空」「地上」の3つが揃った。
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スカラベの涙から人類が生まれた
新たに問題が生じた。上界にある天空には防波堤や堤防もなかったので、そこから下界の地上に水がしょっちゅうこぼれ落ちたのだ。その都度、地上ではナイルの大洪水が起きた。
ヌンたちは考えた。
「洪水を管理する者を地上に置かねばならない」
「では人類(地上に定住する者たち)を作りましょう」
そう申し出たのはスカラベだった。スカラベはすぐに人間の子どもに姿を変身し、目をぱちぱちさせると涙をポタポタ流し始めた。それは下(地上)
に落ち地面に触れ、スカラベの涙は次々に人間に変身していった。これが人間(人類)の誕生の始まりだった。
誕生した人類はすぐに方舟を作り始めた。いきなり洪水被害を阻止することは難しく、まず自分たちの身を守ろうと考えたからだ。
だから、彼らは洪水が起きるとその方舟の中に避難した。また、誰かが死ぬと遺体をその方舟に乗せ天空へ上がらせた。なぜなら天空は神々の住処、死後の世界とつながる場所で、人類は死ぬと創造神々の元へ戻らねばならないからだ。
人類が作った方舟を見て、太陽神ラーは「これはいい」と自分もそれを利用させてもらうことにした。
ラーは毎日夕暮れになると、夜の十二時間を費やして冥界を旅せねばならず、これはなかなか大変なので方舟を借りられるのは大変有り難かった。もっとも、時にはスカラベがラー(太陽)を転がし、移動の手助けをしてやることもあった。
太陽は毎夜12時間、東から西に「旅」をする
人類は毎日太陽(ラー)が時東から西へと通過し、昇ったり沈んだりする様子を見守り続けるうちに、いつしかラーの動きを自分たちの誕生、成人、死、再生といった人生のサイクルのメタファー(比喩)としてみなすようになった。砂漠の多い環境では太陽が遍在していたことも、初期エジプト人が太陽概念に関心を抱いた理由かもしれない。
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しばらくすると、人類はラーを最高の神様と贔屓して崇めるようになり、ラーのために多くの神殿を建て祀った。彼らはその太陽神ラーを創造したのはヌン水神であることを知っていたが、ヌンのためには神殿を設けることはなくヌンだけに仕える神官も出てくることはなかった。
その理由は未だにナイルの氾濫に苦労させられており、どうにもこうにも「水」神にひれ伏す気になれなかったからだ。
水神ヌンはジェンダーレス
さらに時間が過ぎると、地上で農作業が行われるようになった。この時、人類はナイルの氾濫にはメリットも多くあることに気がついた。氾濫のおかげで農作物がよく育つのだ。ここで初めて水神ヌンに対する見方を改めた。
そこで人類は各神殿に聖なる池を作り、池(水)をヌン水神とし崇めた。またヌン水神を多くの宗教的な碑文にも登場させた。
なおヌンは水なので明確な性別が実のところなく両性具や無性であると考える人間たちも出てきて、ヌンへの解釈が分かれていった。
「ヌンは男なのかそれとも女、はたまた両性具なのか」
そのような事で揉める人類を天空から見ていたヌンはうんざりし、無意識で思わず唾を吐いてしまった。
「あっ、しまった」
しかしもう手遅れだった。ヌンの吐いた唾は地上に落ちてアポフィス(ラーの永遠の敵である蛇または龍)として生まれてしまったのだ。ここからこの世では災害や争い、不幸も起きるようになった。
太陽神が蛇(龍)に負けると日食が起こる
アポフィス(蛇/龍)はとりわけ太陽神ラーに嫌がらせをするようになった。人類に最も信仰され崇められているラーに嫉妬をしたからだ。
だからラーが東から西へ移動している最中に、突然アポフィスが現れ争いを仕向けてきた。ラーとアポフィスが戦うと地上では必ず嵐、地震、雷が起きた。
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そしてある時、どうしたことか初めてラーが負けてしまった。そのせいで途端に地上に日食が起こった。ラーが西までたどり着けずどこかに落下してしまったからだ。
彼らを創造したヌンはすぐに飛んで来て、アポフィスの頭を切り落とし、ラーを探しに行った。これで日食が終わった。再びアポフィスの頭が生えてラーに勝たない限り、二度と日食にはならない。
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時計神と月神のゲームの試合…一年は360日から365日になった
ヌンがラーとアポフィスに気を取られている間、ヌンの卵から生まれたシュウ(大気の神)とテフヌト(湿気の女神)が生んだ双子の姉弟ヌウト(空の女神)とゲブ(大地の神)が恋愛関係に陥ってしまっていた。
実は近親婚はもう繰り返さないということになっていた。シュウとテフヌトが最初で最後である。さもなければ世の平和が乱れるとされていたからだ。
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そのことを双子の姉弟も知っているのに、密かに深い関係になっていたのだ。父親のシュウ神は激怒し二人を引き離した。そして三百六十日逢えないように呪いをかけた。この頃、一年イコール三百六十日だったので、三百六十日逢えないというのは永遠に再会できないということになる。
これを噂で聞いた時間の神トトはこの姉弟カップルのヌウトとゲブを憐れみ、月の神コンスにボードゲームを挑んだ。トトは、自分が勝てば月の光の一部を与えると提案した。ゲームの腕前には自信に満ちたコンスは同意したが、トトが勝利した。
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トトは勝ち取った光をヌウトに与え、エネルギーのシフトによって地球の公転時間が365日に増加した。
この余分な5日間は、シュウがラーにお願いし呪いをかけた360日に含まれなかったため、ヌウトは4人の子供を産むことができた。イシス、オシリス、セス、ネフティスである。
このようにトトのヌウトとゲブの禁じられたカップルに対する親切な行為は、エジプトがより天文学的に正確な太陽周期に移行したことを意味する。
(※以前の太陰暦では、ナイル川の氾濫を予測することができなかった。これが1年を365日とする太陽暦の開発に拍車をかけ、人類史上最も早く記録された365日の暦となった。追加された5日間はエパゴメナル・デイと呼ばれ(グローバル・エジプト博物館)、「太陽暦の中で、通常の月の外にある日」という意味である(コリンズ辞典))
ちなみにゲブは地面に横たわる人間の男性の姿でよく神話には登場する。彼の頭上には、父親であるシュウに引き離された妹の妻であるヌウトの姿が弧を描いている。エジプト人は彼女の腕と脚を天空の柱に見立て、それぞれの手足を四枢の指標に見立てた。
ようやくオシリス神とイシス女神の誕生
ヌウトは4人の子どもーイシス女神、オシリス神、セス神(またはセト神)、ネフティス女神ーを生んだと述べたが、この中で一人だけ異端神が混ざっていた。セスだ。セスは暴力神だった。
「案の定だ、言わんこっちゃない」
シュウは頭を抱えた。しかしもうどうしようもない。
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四人の子どもが成長すると、イシス女神(愛と美の女神)とオシリス神(豊穣の神)が恋仲になった。またもやきょうだい(兄妹)カップルだ。
それだけでも頭が痛いのに、暴力の神であり弟でもあるセスが兄姉カップルに激しく嫉妬をし、もめ事まで始まった。
もともとセスは兄のオシリスに妬んで憎んでいた。
「お兄さんは豊穣の神で素晴らしいのに、弟のお前は暴力の神だなんて…」 このように宇宙でも天空、地上でもオシリスと比較され続けてばかりだったからだ。
結局、兄弟であるのにも関わらず、セスはオシリス神を殺害してしまった。神が神を殺すという恐ろしい出来事だ。
弟に殺されたオシリスはあの世へ行き冥界の神になり、そしてすでに死んでいるのにも関わらずイシスと結合し、子どもを作った。
(エジプト神話の系図は、近親婚が普通だった古代時代のエジプト王の家系図としても見ることができるのは興味深いです)
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死んだ兄(夫)の子を身ごもり、善と正義の神、ホルスが生まれる
イシスは死んだオシリスの子どもを生んだ。善と正義の神ホルスだ。のちに生きている間は息子のホルスが代表神とみなされ、死後は父親のオシリス神があの世の代表神と結びついた。(ホルスが父親の仇を取るためセスに戦いを挑みますが、それはホルス神殿の壁画に描かれているので、ぜひ見てください)
さて、人類はアポフィス(悪魔の蛇である「混沌の力」)の悪い導きにより、太陽神ラーへの崇敬を欠くようになった。全ての創始神である水神ヌンは激怒し地上を焦土化し人類も絶滅させた。
そして何もかもゼロから作り直した。これはその後、幾度も繰り返された。地上を作り人類を作る。しかしその人類がおごれば消し、ゼロから作り直す。神々は全てヌンに従った。
今度、ヌンが地上を作り変えるのはいつになるのだろう、、、。
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追伸
エジプト神話は紀元前4000年頃に始まり、プトレマイオス朝のクレオパトラ七世の時代まで書き続けられていたと言われています。
しかしその後のエジプトにおけるキリスト教の布教でエジプト神話は途絶え、(死んだオシリスの子を身ごもった)イシス女神は、紀元後4世紀にはアレクサンドリアのキリスト教聖職者らに「娼婦だ」と批判されました。
しかし紆余曲折あったものの、数千年たっても世界に愛されている古代エジプト神話(古代エジプト教)。それぞれの信仰に関係なく、魅入られるものがあるのでしょう。
来年、2024年も宜しくお願いします。 !كل سنة وأنت طيب
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