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「福島原発事故は人災」


岸田政権が福島第一原発の汚染処理水の海洋放出や「原発への全面回帰」を平然と強行する背景に、電力会社・原子力産業を基盤とする政府機関・経団連・銀行・政治家・御用学者・メディアが癒着した「原子力ムラ」がうごめている。

「安全第一」は建前で本音はいかにコストを削減し効率的に経営できるかだ。

著者は地震研究の専門家(元地震学会会長・東京大学名誉教授)として、1995年〜2012年まで17年間、政府の地震調査研究本部(政府の地震防災対策の研究機関)で長期評価部会長として、原子力発電所の津波対策の一端を担ってきた。
本書ではその体験をもとに、政府機関、東京電力、学者の言動を実名で再現し、炉心溶融事故が「人災」にほかならなかったことを浮き彫りにしている。

巨大地震の報告を無視した福島第一原発

東京電力・「原子力ムラ」は事故後、福島原発を襲った津波地震は〝想定外〟だと繰り返してきたが、本書ではそれが全くの嘘であり、地震の専門家たちが警告してきた-

「想定どおりの地震」

であったことを知り尽くしていたことが分かる。
そして、全国の原発のうち、福島県の原発が津波地震にもっとも弱いことを突きつけられた東京電力が「福島県沖では起こらない」と言い張り、政府機関と秘密会合を幾度も開いて書き換えや報告を引き延ばしたことも記されている。

対策をした日本原電は事故を免れた

事実、専門家の警告を嫌い津波対策を拒んだ東京電力とは対称的に、日本原電は茨城県の東海第二発電所で対策をした結果、3・11ではかろうじて事故を免れた。

3・11大津波の対策を邪魔した男たち。 
島崎邦彦著     青志社発行  1400円