東京のホテル宿泊記録(⑦NOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYO)
先週の木曜から金曜にかけて、約2ヶ月ぶりにホテルに泊まってきました。今回宿泊したのは野村不動産の手掛けるNOHGA HOTELの2店舗目で、つい3ヶ月前にオープンしたばかりの新しいホテルです。
NOHGA HOTELは『地域との深いつながりから生まれる素敵な経験』をコンセプトにしたホテルで、1店舗目の「上野」ではホテル内のアートやアメニティ等、様々なところで地域のアーティストや職人とコラボして、上質な空間・サービスを提供しています。2店舗目となる「秋葉原」は、街の雰囲気と呼応した形で「上野」よりもエネルギッシュで尖ったものとなっています。
秋葉原の中央通り、ちょうどAKB劇場の入るビルの向かい側から小さな通りを少し入った電気街の真ん中のディープなエリアです。PCパーツ屋、アニメや同人グッズ店、メイドカフェやラーメン屋などが立ち並ぶ、いかにも秋葉原というお店が並ぶ隙間に納まるようにホテルが位置しており、「ここにホテル?」という攻めた立地です。
ホテルの敷地はL字で、東西の通りに面してメインのファサードがあります。外部植栽と、2階テラスの緑、建物の奥に視線が引き込まれるような黒い金属パネルが目に入り、ホテル名のサインはかなり控えめです。
中に入ると目に入るのが、フロントへと続く階段とバーカウンター。秋葉原の街の中ではかなり異質なおしゃれ空間という感じ。階段の踊り場からカウンターを見下ろすと照明やグラス、カウンターの光沢など絵になります。
バーカウンターの奥がレストランゾーンになっており、朝食会場もこちらとなります。店内は落ち着いた雰囲気ですが、窓の外に目をやると電気街の雰囲気が見えて、ここが秋葉原だということを思い出させてくれます。
家具の雰囲気などは、良い感じて落ち着いていますが、ランタン風照明・裸電球などの照明器具が目に留まります。このあたりのメリハリというか、ピンポイントで攻めている感じが、このレストランを印象的なものにしています。
階段で2階にあがるとフロントカウンターの手前で、建物配置と非常階段の都合でできたと思われる中庭空間がお出迎え。ネオン照明とサッカーテーブルが置かれた少し異様な空間です。ネオンの雰囲気は秋葉原の電気街がモチーフになっているようで、近隣のデザイン系の学生の作品だそうです。
サッカーテーブルは、ヨーロッパから輸入してオーダーメイドでガラス天板までつけたものということで、かなり気合が入っています。(スタッフは支配人の趣味と言ってましたが)こういう、一見どうでもいいところに気合を入れる姿勢は、ホテルならではの感性で、そのホテルの個性が光る部分でもあるので、個人的にはかなり好きなポイントです。
チェックインカウンターはこんな感じ。後でも触れますが、このホテルは館内BGMなど「音」にこだわっており、カウンター天板の下の立ち上がり部分はメッシュになっており、スピーカーが埋め込まれているとのことです。
カウンターの左手には、ホテルのオリジナル商品や地域とコラボしたアメニティ、館内着やカテラリーなどグッズが販売されています。ここでもネオン管風の照明を用いたアートが壁を彩ります。さらには、季節柄、クリスマスツリーも飾られており、華やかな雰囲気です。
ただ、先ほどのバーカウンターでも感じたことですが、空間が狭い割りに少しモノが多すぎて、ごちゃっとしている感も否めません。夕方16時過ぎにチェックインしたのですが、数組のお客さんだけで密な感じになっていました。
また、2階にはDJブースや先ほど外からみたテラス席なんかもあるラウンジ空間があるのですが、コロナ禍の状況でイベントらしいイベントはできておらず、少し勿体ない空間となっていました。
共用部紹介が長くなりましたが、ようやくチェックイン。客室へ向かいます。宿泊したのは、スーペリアルダブル(21平米)。部屋に入ると、テレビがオンになっており、心地よい音楽が流れています。ちなみにカードキーホルダーはなく、部屋の照明やエアコンなどは、すべてスイッチオンオフのアナログな感じです。
スケッチのプラン通り客室の手前側が水回り、バスルームはなくシャワーブースのみ。部屋奥にW1800とゆったりした大きさのベッドとソファが設けられており、オーソドックスな構成。壁紙とカーペットと内装仕上げも一般的です。
ちなみにホテルデザインはThe Range Designの寶田さんという方。UDS出身で、グランベルやHamacho Hotelなどライフスタイル系ホテルを数多く手掛けている、今一番勢いのあるホテルデザイナーです。
部屋構成こそ一般的なものですが、テレビ周りの家具や備品の納まり、各種の金物、水回り、照明などのディテールが細やかです。決してゴージャスではないものの、品がよく、品が良いといいつつ、遊び心が見られて、バランスの崩し方も含めて、バランスが良い感じです。
テレビパネル周りを見てみましょう。下の展開図の通り、縦の空間を上手く使いコンパクトにまとめながら、パネルのモスグリーンの色が部屋の雰囲気を強く印象付けるアクセントとなっています。
テレビ上の筒状のレトロな照明がとにかくおしゃれです。
テレビ下にはフェルトの貼られた天板の上にBluetoothスピーカーがメモパッドがオシャレに配置され、その下のメッシュの棚に冷蔵庫や電気ケトルなどが置かれています。このメッシュの棚というのも、ともするとチープになりがちですが、違和感なく納まっていて流石だな、という感じ。
カウンターのくだりでも記載しましたが、このホテルは音にこだわりを持っていて、全室にスピーカーが置かれています。さらには、音楽を楽しむホテルの実験的な試みとして、広い部屋については部屋ごとに違うメーカーのスピーカーが置かれているそうです。私もせっかくなので、ソファに座りながら、チルな雰囲気の音楽を聴いてみましたので、結構エモい気持ちになりました。(語彙力不足)
音楽をコンセプトにしたものとして、ドンディスのサインはレコードをモチーフにしていたり、カードキーにもオーディオのデザインがあしらわれていたりしました。
その他のディテールも見ていきます。真鍮色というのか、金メッキというのか、金色の金物が多く使われています。それに合わせて、アメニティボックスやティッシュケースまで金色で揃えられていますが、金色特有のいやらしい感じは一切ありませんでした。
そして、レストランと同様、オリジナル照明がいちいち可愛く、印象に残りました。特に水回りのフィラメントの見える電球は、バックの細かいチェック柄の壁紙とマッチして良い感じのレトロ感です。
ベッド横の読書灯は半球の傘をかぶった間接照明で、パチパチとオンオフができるスイッチがついていて、使い勝手含めてちょうど良い感じでした。
冒頭にも書いたように、全体としてきれいにまとめられながら遊び心を持ったディテールとなっており、秋葉原の立地という特性のなかで、その立地にフォーカスしすぎるとキッチュになってしまいそうなところ、良い距離感でホテルらしい品格を保っている印象で、客室での滞在もゆったり落ち着くことができました。
B面では何をテーマに話をするか悩んでいますが、地域とのコラボの話や、それをコンセプトとするNOHGA HOTELのポジショニング、さらにはそのコンセプトを掘り下げる上での秋葉原の解釈の仕方など、喋りたいことはいくつかあります。それでは、今回はこの辺で。
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