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カルボナーラと牛乳鍋

昼食にカルボナーラを作った。

正確に言おう。昼食に「カルボナーラ的なもの」を作った。

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Twitterで流れてきた料理系のリール動画を見ていて、唐突にパスタが食べたくなった私は、昼食にカルボナーラを作ることにした。

食材を買いに行き、ベーコンと玉ねぎとしめじを炒め、パスタを茹でるところまでは全てが順調だった。


牛乳を注いだところで、事件は起こった。そう、牛乳を入れすぎたのである。瞬く間にフライパンの中は真っ白になり、クリームシチューさながらのどろっとした液体が生成された。

間の悪いことに、近年相次ぐ食材の値上げによって、粉チーズと卵の量を微妙にケチってしまった。結果、やたらと色が白くて水分が多い牛乳鍋のようなものが出来上がった。まあ、不味くはなかったので完食はしたが。

フリー素材ドットコムさまより引用(https://free-materials.com/)。正しくカルボナーラが生成されるとこんな感じになるらしい。私が作った牛乳鍋はお目汚しになるため非掲載。

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ここからが本題なのだが、仮に明日友達に会って、「昨日の昼何食べた?」と聞かれたとき(そんなシチュエーションはないのだが、あくまで哲学的なquestionとして)、何と答えるべきだろうか?

「カルボナーラ作った!」と言う勇気はない。なぜなら、一般的にカルボナーラと聞いて思い浮かぶ、クリームが麺に絡みついたもっちりした食感と、私が精製した牛乳鍋のようなものは似ても似つかないからである。

だからと言って「牛乳鍋を作ったよ」とも言い難い ー 私がもともと作ろうとしたのは牛乳鍋ではないのだ。

なので「カルボナーラであると信じたいけれど客観的に見ると牛乳鍋にむしろ親和性が高い物質を作ったよ」と言うのが理論上は正解なのだが、おそらく求められている返事とはいえない。

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話は変わるが、世の中にはマッチングアプリというものがあり、プロフィールには趣味を書く欄がある。趣味に料理と書くと、最初の会話はだいたい

「ご趣味は料理でいらっしゃるんですわね~」
「はい、最近料理にハマっておりまして~」
「何をお作りになりますの~?」
「最近ですとカルボナーラとか~」
「カルボナーラ!いいですわね~私も食べてみたいですわよ~」

という、100枚切りのパンくらい薄いものになる。(なお、以上の会話は全て私の妄想であり、私はマッチングアプリを使ったことがない。)

だが、この「趣味」というのも考え出すと厄介である。趣味が料理って、1週間に何回料理していればいいの?週に1回?それとも毎食?というか揚げ物はキッチンが汚れるからほぼやらないんですけど、それでも料理好きを名乗っていいんですか?

ちなみに私は音楽を聴くのが好きだが、自分より音楽を聴いていて音楽に詳しい人は日本中に何百万人といて、その人たちからの「お前の音楽鑑賞なんてカルボナーラじゃなくて牛乳鍋じゃい!」という圧力を常に感じながら生きている。でも、趣味を聞かれたら「音楽鑑賞」って言うしかないじゃんね。

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「人はみな 誰にも見せぬ自分を 持っている――」とは”SPY FAMILY”の1コマ目だが、人間というものは「趣味は山歩きです!」とか「ゲームが好きでよくやってます!」とかいうありがちな自己紹介だけでは到底説明できないんだと思うし、そういう牛乳鍋的な側面を知って初めて他人を理解したと言えるのだと思う。


とはいえ、牛乳鍋をカルボナーラに少しでも近づけたいのも人情。とりあえず、次はチーズと卵多めにしよーっと。

#今日のおうちごはん

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