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20000406 原子間力顕微鏡

 原子間力顕微鏡$${^{*1}}$$という装置がある。AFM:Atomic Force Microscopeと略される。この顕微鏡は普通の顕微鏡とはかなり毛色が違う。

 最初の顕微鏡$${^{*2}}$$は1590年にハンス・ヤンセンとその息子のザカリアスによって作られた。これにより肉眼では見ることができない世界を見ることができるようになった。
 肉眼は光を感じて初めてものを見ることができるので、微小な部分を見るためにその部分から出てきた光をレンズで屈折させて像を拡大させるという発想はごく自然であろう。

 光を使った光学顕微鏡では観察する対象に光を当て、そこから反射される光をレンズで拡大する。つまり観察する対象に「何か」をぶつけて、そこから跳ね返ってくる情報を拡大するのである。
 この「何か」を光の代わりに電子にしたのが電子顕微鏡である。1931年頃発明された。

 電子顕微鏡$${^{*3}}$$は二種類の代表的なものがある。一つは透過型電子顕微鏡TEM$${^{*4}}$$で、もう一つは走査型電子顕微鏡SEM$${^{*5}}$$である。観察する対象の微小な部分に電子を当ててそこから出てきた電子を捕らえ画像に変換する。光学顕微鏡のように観察する対象から跳ね返ってきた光を拡大するのではなく、電子顕微鏡の場合は微小な領域に電子を当てそこから出てくる電子を検出することにより像を拡大する。微小な領域に電子を当てられば、それだけ小さな場所の情報が得られということになる。

 光学顕微鏡も電子顕微鏡も光線や電子線といった「線」を観察する対象に当てた。
 ところが原子間力顕微鏡は観察するものに「$${^{*6}}$$」を当てて、なぞり、その時の針の上下の動きを捕らえて画像に変換するのである。この方法で物体の表面の原子の配列の様子が観察することができる。原子の並びはせいぜい1~0.1ナノメートル(ナノメートルは10の-6乗mm)だから凄いことである。
 そんな先が尖った針があるのか、と思うかも知れないが、針も物質である以上、原子で構成されておりその最先端は原子一個になっているはずである。従って観察対象の物質表面の原子配列の凸凹を捕らえられるのである。

 針を観察の対象にぶつけてしまうとその対象の形が変わってしまう。だから寸止めの状態で表面をなぞっていく。「寸」止めどころではなく「ナノ」止めである。
 何らかの方法でそこまで近づけると針の先端の原子と観察物の表面原子が力を及ぼし合うようになる。これを原子間力という。この力を測定するか、この力が一定になるように針でなぞれば、表面原子の配列の凸凹を見ることができる。
 この原子間力顕微鏡はG.Binnig と H.Rohler$${^{*7}}$$が1982年に発明した。これは走査型トンネル電流顕微鏡STM$${^{*8}}$$から派生したものである。STMは原子間力の代わりに針と観察対象に電圧を掛けてAFMと同じように近づけていくと、その隙間に急に流れ出すトンネル電流を使う。観察する対象に導電性がないとうまく見ることができない。

 この顕微鏡で得られた画像情報はコンピュータで処理される。画像ノイズを取り除く強力な画像フィルターで、うまく見ることのできなかった表面構造を原子が整然と並んでいるかのように無理矢理処理することも可能である。

 ミリカンのように疑われないよう$${^{*9}}$$、気を付けなければならない。もっとも彼のような偉業を成さないと誰も詮索してはくれない。

*1 原子間力顕微鏡の原理と特徴
*2 顕微鏡
*3 日立製作所:計測機器事業部:知識のこみち
*4 透過電子顕微鏡顕微鏡
*5 日立製作所:計測機器事業部:知識のこみち:走査電子顕微鏡の仕組み
*6 原子間力顕微鏡の原理と特徴
*7 Heinrich Rohrer
*8 ナノメートルレベルでのpn接合の観察に成功
*9 20000205 ミリカンのデータ

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