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20000206 機械の暗号
三鷹光機$${^{*1}}$$は天体望遠鏡や高精度測定器などの製造業者である。ここの社長は自分の会社の製品に絶対の自信を持っている。
三鷹光機の製品を購入したある会社が測定器の精度が全然出ないと怒鳴り込んできたことがあったらしい。三鷹光機の社長は「お宅で装置を勝手に分解したでしょう。一度分解したら元の精度は出ませんよ」と言った。すると怒鳴り込んできた会社の担当者は黙り込んでしまった。
三鷹光機の社長は分解すると二度と元と同じ性能が出ないような仕掛けを製品に組み込んでいると言うのだ。 このことは三鷹光機の社員も殆ど知らないと言う。
製品が組上がって最終出荷検査の段階で社長が自ら検査をする。この時、装置に使われているワッシャー$${^{*2}}$$の一つをステンレス製のものからアルミ製に換えて精度の調整をし直すらしい。だから出来上がった装置のどの部分のワッシャーを入れ替えたのかを知っているのは社長だけらしい。
ステンレス製のワッシャーもアルミ製のワッシャーもメッキがしてあるから外見は全く同じだが、アルミ製のワッシャーはステンレス製に比べて変形しやすいので、分解して組立直すとワッシャーが更に変形してネジの止め位置が微妙にずれて元の精度が出なくなる。
機械に暗号を入れるというのは、高度先端技術なのか職人芸なのか何とも言えないが、面白い発想である。
*1 三鷹光器株式会社
*2 ミッションブロック