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太宰治「ヴィヨンの妻」を読みました
みなさん、こんにちは。松本浩二です。
読んだ作品は11篇が収められている文春文庫。36ページの短編作品です。
世の中には多くの人がいて、それぞれ様々な事情を抱えている。それは、人には言えないことかもしれないし、法に触れることかもしれない。
それでも、人間は生きていくしかない。
このような人間の宿命を描いているように思いました。
あるとき、詩人・大谷の家に小料理屋を営んでいる夫婦が怒鳴り込んできます。大谷が小料理屋のお金を持ち逃げして、後を追いかけてきたとの事。
大谷の妻である私(さっちゃん)はその場を取り繕い、翌日、小料理屋に出向くことを伝えます。
翌日、小料理屋に出向いたさっちゃんは何の当てもないにも関わらず、「明日、お金を返す目処ができましたので、夫が返しに来ます。それまで私はここで働かせていただきます。」と言ってしまいました。
その時のお金は大谷が返したのですが、他にも付けなどがあり、さっちゃんの小料理屋での労働の日々は続きます。
小料理屋で働き続けるなか、店に来る夫に会えることに喜びを感じ(家にいるときは夫は滅多に帰ってこなかった)、同時に、お店にお酒に飲み日来る人はみな何かしらの罪を犯しているという事に気づきます。
夫である大谷は詩人であるため新聞上で批評されることもあります。あるとき、「人非人(人でありながら、人の道にはずれた行いをする人間)」と書かれることがありました。
そんな大谷に対してさっちゃんは、「人非人でもいいじゃない。わたしたちは、生きていさえすればいいのよ。」と伝えました。
そのなさっちゃんの、「言葉に私は生きていく」という力強い意志を感じました。
小料理屋で働くことを通して、変化していくさっちゃんが印象的でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
では、また。