見出し画像

イギリスで病院に行ったら失明の危機だった②トラブルだらけの再診編

前回の記事の続きになりますので、読まれていない方は、そちらを先にお読みいただけると筆者が喜びます。
今回は初診後の再診1回目の時に起こったトラブルを中心に書いていきます。
お役立ち情報ではないかもですが、筆者の不幸事を笑い飛ばしていただけると嬉しいです。


1.再診はすぐ終わる(嘘)

初診時に2日後の土曜日に再診に来てくれと言われました。運悪く、その週末は妻と二人でロンドンに一泊で旅行に予定でした。しかも駅の工事で代行バスを利用する必要があり、時間がシビアなので出来れば予定がひっ迫するのは避けたいと打算に満ちた考えが筆者の頭を駆け抜けます。とりあえず別日にずらせないかと医師に交渉するも、「現在は緊急の状態で、薬の効き等の経過をすぐに確認する必要があるので、土曜日か日曜日じゃないとダメだ」と。至極真っ当な説明を前に最後の足掻きで「どんくらいかかる?」と聞くと、医師は笑顔で「Not so long!!」と。それならばと土曜の10時からで再診を受けることにしました。
当日は旅行の準備を済ませ、妻と二人でタクシーで病院に(保険会社に請求できるので気が大きくなっている)。通訳さんと合流して受付を済ませ、スムーズに眼圧検査を受けると正常値。その後に目の視診を受けて問題なしとのことで、あとは薬を貰って帰るだけなので無事に旅行にいけると思っていました。
しかし、次に待っていたのは追加の検査ラッシュ。目の体液循環機能の検査でレンズを左目につっこまれ(字面はえぐいが痛いわけではない)、その後に瞳孔が開く目薬を点眼し、20~30分おいてから網膜の検査を受ける。初耳な検査が続くも、この辺りまでは瞳孔が開く薬ってコナン映画であったなと思うくらいには余裕がありました(私はヘリの操縦はしないので無問題)。
その後もなんだかんだと待たされ最後の薬の処方待ちの頃には11時半。全然「Not so long!!」じゃないやん!とは思いつつ、ロンドンでお昼は食べられないが15時からのアーセナル戦には間に合うとたかを括っていました。

2.薬が足りない

ところが、薬が足りない。次の再診が2週間後とのことで、今回は大量の薬を受け取る必要があったのですが、病院側が初診時に1週間分渡していたと勘違いしていたのです(実際は再診までの2日分しか受け取っていない)
通訳さんの助けを借りて薬が足りない旨を二人組の看護師さんに伝えるも何故か難色を示されます。
「Too much!」という言葉が聞こえ、嫌な予感が確信に変わりました。
どうやらクリニックに備蓄している薬はそれほど多くなく、これ以上渡すと他の患者に渡せなくなるのでここでは渡せないから病院内の薬局に行け、と。そっちのミスだし今ある分渡してそっちで取りに行けよと思いましたが(軽く暴論)、そう言えるわけもなく急いで薬局に。この時点で12時は過ぎており、15時からの試合に間に合うには13時過ぎに駅に行かないと間に合わないので暗雲が立ちこめるのを感じていました。薬局にはクリニックから話が通っていたので受付で伝えるとすぐに理解してくれ、用意するから処方箋フォームなるものを書いてちょっと待ってなと言われます。
ところが、(なんとなくイヤな予感はしていたが)待てど暮らせど呼ばれません。通訳さんが確認してくれたところ、薬局内に在庫がないので地下倉庫に取りに行っているとのこと。この時点で13時半に駅に着くことはできなくなっており、試合に間に合わなくなりました。SEKAI NO OWARIな気分をなんとか切り替え、試合の後半には間に合うと信じて待ちます。
やっとのこと呼ばれ薬を受け取るも、診断時に渡された薬リストと、処方箋に書かれている薬が違う!(は?)薬局側に伝えると、クリニック側からの指定はこれだとのことで、急いでクリニックに確認してくれました。電話しても繋がらないのでメールしたから返事来るまで待ってと言われます。この時点で想像がつきますが、とにかく一々待ちが長い。そしてクリニックから返ってきた回答は案の定「うちは間違ってないよ!」というもの。
知ってた。こいつら自分の非を認めないんだよ絶対。
薬局側に非はありませんし、薬局で問答しても埒が開かないので、とにかく急いでクリニックに戻ります。この時点で13時45分頃。絶望的。。

3.薬が違う

クリニックに到着し、受付に事情を伝えると待合室で待つように言われます。待ち時間はほんの数分だったと思いますが、精神衛生が劣悪な当時は悠久に感じ、苛立ちを隠す余裕など皆無でした。この時再度移動手段を調べ、14時17分駅発に乗らなければ試合終了にさえ間に合わなくなることを知りました。その後通された部屋には薬を処方した二人組が「どうしたんだ?」という雰囲気で待ち構えていました。いや薬局で説明したの聞いてないんか!?と思いながら、私の苛立ちを理解してくれている通訳さんが捲し立てるように説明します。そんな我々の勢いもなんのその、二人組は「いや私たちは間違ってないよ」から入ります。ほんとまじ絶対非を認めない。
それでも処方箋と実際に貰った薬を見せながら、これが足りないでしょ!わかった!?と示すと、不服そうな顔をしながらやっと薬を戸棚から出します。説得できてからは5秒もかかっていないのに、そこに至るまでたくさんの(不要な)時間と労力をかけ(させられ)、やっとのこと適切な薬を手にクリニックを去ることができました。時刻は14時。Not so long!!な再診はトラブルだらけで計4時間の長丁場となり終焉を迎えました。

4.病院内の薬局及びNHS処方箋について

このまま終了するとただ愚痴を垂れ流すだけになってしまいますので、閑話休題、お役立ち(になるかわからないけど)情報を頑張って書きます。
先に書いたとおり、今回はクリニックで薬を全て頂けなかったので、急遽病院内の薬局で残りの薬をもらうことになりました。
ここで一つ目の注意点ですが、初診時も再診時もクリニックで薬を貰う際には薬代は支払わなくてよかったのですが、薬局で貰う際には薬代を請求されます。
…は?どういうこと??
実際に言いました。しかしながら薬局では薬を受け取る際に専用のフォームを書いて、年齢や収入などの条件に当てはまる人以外は薬代を払わなければなりません。ダメ元でChatGPTに理由を聞いてみたところ、

クリニック内では処方箋料が発生しない場合がある一方、病院の薬局では通常、地域の他の薬局と同じように処方箋料を徴収するため処方箋料が発生する。

うーん、よくわからん。。
今回は保険会社に請求できるのでまあいいやとなりましたが、この記事をまとめるにあたり改めて文字に起こすと、せっかくNHSに高い保険料を支払っているのに、薬のもらい方次第で薬代がかかったりかからなかったりするのは不可解と感じてしまいます。まあそもそも薬代が無料になることの方が珍しい気もするので文句を言うようなことなのかというお話ですが…
二つ目の注意点は、Addenbrooke's Hospital内の薬局は現金しか利用できないという点です。今回はたまたま旅行のためにキャッシュカードを携帯しており、病院内のATMで現金を下すことができましたが、そうでなければ現金なしで詰んでました。キャッシュレスが進んでおり、ロンドンに至っては交通機関でさえ非接触型ICカードで支払えるため完全に油断していましたが、ちゃんと最低限の現金は必要と再確認。もちろん全ての薬局でカードが使えないわけではないと思いますが、事前の下調べはちゃんとしないとですね。
最後は注意点ではなく耳寄り?情報をひとつ。NHSの処方箋料金は薬によらず一律£9.90(2024年現在)であり、今回筆者は3つの薬を貰ったので£29.70の支払いでした。こういった具合に処方される薬の種類が多いほど(当たり前ですが)薬代の負担が大きくなります。
このような方に適しているのが、NHS Prescription Prepayment Certificate (PPC)という薬代の前払い制度で、3ヶ月ごとに£32.05(2024年現在)、もしくは12ヶ月ごとに£114.50(2024年現在)を前払いすることで、その期間は薬代を支払うことなく薬を受け取れます。それぞれ3種以上、12種以上の薬を受け取ることで元が取れる計算ですね。今回は長期化する予定もありませんでしたし、保険でカバーしてもらえるので利用することはありませんでしたが、症状よっては有意義な制度だなと思いました。まあそもそもの処方箋料金高くねって話なんですがね。
ちなみにこの処方箋料金一律の制度は興味深いなと思い、21世紀に入ってからの料金の変遷を(ChatGPTが)調べてグラフ化してみました(見出し写真)。やはり毎年のように値上げを繰り返しており、21世紀頭には£6.00だったのが今や£9.90と1.5倍以上に。今後も頭打ちにならず値上がりするのであれば恐ろしい限りですね。。

5.通訳さんという偉大な存在

それっぽい情報も書けて満足したのでそろそろ記事を締めます。
14時過ぎにクリニックを出るとすぐさまUberでタクシーを呼びダメ元で駅に向かいます。運転手にごめんけど急いで!と伝えると、わざわざ何時の便が確認し、できるだけ急いでくれました(こういう時は優しさが染みる)。
駅近くの信号に引っかかったところで咄嗟に、ここで降ろして!その方が早いから!と伝えて駅へダッシュ。そしてどうにかこうにか、アーセナル戦への最終バスに飛び乗ることができました。
それでも試合は半分以上見逃し、運動不足の体に鞭を打ってダッシュしてスタジアムたどり着いた瞬間に得点の地響きが聞こえ、嬉しさと悔しさで意味不明になったのを今でも鮮明に覚えています。
移動の間はやることもないので流石に落ち着きを取り戻し、思ったことは通訳さんへの圧倒的感謝でした。妻の帯同とはいえイギリスに住むことを決意した筆者は日本だとそれなりに英語が得意な方だと思います。それでも、とにかくイギリスの英語は聞き取れない。伝わらない。普段はほんとに必要な時は何度も繰り返し聞いて伝えてどうにか生きながらえています。そんな私にとって今回のようなトラブルは胃に穴が空くほどと思います。日本だと語気を強めてクレームを入れるところも、英語では伝えられず我慢するしかない。そんな中で幾度トラブルに遭おうとも瞬時に対応してくれた通訳さんはまさに神。日本語で雑談している時はおっとりとした口調なのに、英語でクレームを入れるときはハッキリとした語気でキッパリと伝える。イギリスで生きていくにはこうしろと生き様を見せつけられているようでした。この場を借りて(見てないでしょうが)改めてお礼を述べさせていただきます。

今回も無駄に長くなってしまったせいで完結まで辿り着けませんでした。一番書きたかったところが終わり、あとはさらっと流したいとは思いますが、まだ小さなトラブルなど書くことがありますので、次回に仕切直しさせていただきたいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!