イギリスで病院に行ったら失明の危機だった③完結編
すっかり長くなってしまった一連の誰得記事も今回で最後になります。①初診編と②トラブルだらけの再診編をお読みいただいた稀有な方がいらっしゃいましたら、こちらの記事までお付き合いいただけますと幸いです。
前回の記事で再診が無事終了しましたが、次は間を空けての再々診を受けるのと、原因究明のための血液検査と胸部X線検査を受けるように指示がありました。日本でもこんな細かく検査してないですし、イギリスの医療は雑なのかしっかりしているのかよくわからないなというのが率直な感想です。
血液検査は予約不要(嘘)
再々診と胸部X線検査は日程が確定したら連絡するとのことで、まずは平日なら何時でもいいよと言われた血液検査から受けることにしました。流石に血を抜いて帰るだけなら通訳さんを呼ぶほどでもないかと思い、今回は単身で突入します。予め聞いていた場所とは異なりましたが、総合案内の方に聞いて「Main Outpatient Entrance」に向かい、受付で再度確認すると「まっすぐ行って左ね!」といった感じで「Outpatient Phlebotomy Department」に辿り着けました。ここまでくればもう勝ったも同然と思いながら入室しましたが、そう簡単にはすみません。受付に血液検査で来たと伝えると「予約はした?」と。は?(いつもの)
そんな話は聞いてないと伝えると、「予約していないと検査はできない。この番号に電話するか、車があるなら別のところで予約なしで受けられるからそっちに行って。」と見出し写真の紙を指差しされながら言われます。この国はこんなことばかり。ダメ元で受付で予約なしで行けると聞いたんだけどと伝えるも、「ごめんけど無理!」と。こういう時だけ謝る。多分しょっちゅう起きるから謝り慣れてる。すっっっごい嫌やけどやむを得ず予約の番号に電話するも、長々と前置きの自動音声が流れた後に「ごめんけど、今誰も出られんねん!」とこれまた自動音声で告げられ、電話をブチ切られ。伝わる伝わらない以前になす術なし。ただの血液検査さえもできぬ無力感(とタクシー代を請求できるかの不安)を抱えてこの日は帰宅するしかありませんでした。
2.無限電話編
翌日に予約電話の再チャレンジです。予約電話は12時〜16時半なので、まず12時になってすぐに電話しました。すると今度はちゃんとつながりました。しかし電話での会話が筆者は本当に苦手で、筆者も予約担当者も双方困惑状態で問答を続けること約5分、四苦八苦して予約できる日を調整していただいている時に事件は起こりました。電話通信が突然のストライキ。初診編の時も書きましたが、イギリスの家は電波状況が悪く、機嫌が悪くなると電話もネットもうんともすんとも言わなくなります。電話通信が回復してすぐに掛け直すも当然やり直しで、今度は待ち列に並ぶことに。あと2人と言われるも10分経っても一向に自分の番が回って来ません。ここで心が折れて、そういえば車なら予約せずに行けるところがあったからタクシーで行けばいいのではと気づき、「これだ!」と勢いよく無限待ちの電話を切りました。ところが、嫌な予感がしてちゃんと調べると、予約なしで行けるのはドライブスルー血液検査でした。我ながらアホすぎる…
予約電話が嫌すぎてタクシーで突撃する案を考えるも、さすがにリスキーすぎるので大人しく予約する方針に逆戻りしますが、時既に遅し。先ほど2人だった待ち列は午後に入る頃には10人となっており、再度心がポッキリ逝きました。とはいえ予約しないと進まないので、開き直って順番待ちの状態でスピーカーにして放置することにしました。イギリスの携帯プランは電話料金に寛容で、現在の最安プランでも1000分間通話無料なので怖いものなしです。
とはいえ繋がらなかったり、途中で電話通信がストライキしたりと苦戦を強いられ、途中ブレイクを挟みながら挑戦すること13回。最長で30分間ずっと
「trrrr. trrrr. trrrr. You are currently number… Five!! …in the queue.」
と聞かされ続ける刑を受けるも繋がらなかったこともありました。(なんでそんな長い時間誰一人予約できんのや…)。そして運命の14回目。
待ち列2人からスタートして1分おきに減っていき、遂に初回ぶりに繋がりました!今度は初回のやり取りを思い出し、簡潔に予約に必要な情報と希望日時を伝える。すると、オペレーターから提示されたのは翌日の夕方。万が一にも伝達ミスがないように予約日時を確認し、電話を切りました。通話時間は待ち時間を含めてたった5分。繋がりさえすればびっくりするほどあっさり終わりました。
翌日、予約ミスがないかビクビクしながら検査に行くと、ちゃんと予約されており、待ち時間もそこそこに採血する場所に案内されました。担当の陽気な兄ちゃんとの会話はちょっとばかし苦戦しましたが、サクサクっと採血してくれて最後に謎のグータッチ、これまたものの5分で検査は終了しました。
3.再々診編
再々診と胸部X線検査については決まったら連絡するとのことでしたが、3日経っても連絡が来ません。ちょうどその時やりとりしていた保険会社のサポート担当にそのことを伝えると、病院に確認してもらえましたが、当然の如く平日の昼と朝だったので仕事の都合から変更できないか保険会社に調整を依頼します。すると突然電話が鳴りました。辛うじてNHSからの電話とは分かりましたが、相変わらず電話越しで英語を聞き取るのは筆者には高難度の芸当です。とはいえ切るわけにもいかず何度も聞き返していると、日程変更のことで電話してきたとわかりました。平日の夕方から土日に出来ないかとお願いすると、確認するからちょっと待ってと。どうにか通じているようでほっとしていると、返ってきたのは1ヶ月後の平日。しかも昼(は?)。他の日はないかと伝えると、次の提案は2ヶ月後の平日。やっぱり昼(は??)。
こちらの希望を再度伝えるも、再診は平日のみで、朝か昼しか無理と言われました(最初に言えよ!)。なら変更無しでと伝え、私の有給は通院のために消費されることが確定しました。その後、保険会社から連絡があり、NHSの予約は個人情報の問題で本人しか変更出来ないと。この国は英語出来ない人に厳しい…。ちなみに病院からの連絡は郵送で予約日の前日に届きました。
再診当日は、いつもの通訳さんと合流していつものように受付をします。すると、「VISAの情報が必要だからパスポート見せて!」と言われました。今までとは異なる新手のパターンに筆者はおろか通訳さんも困惑していました。パスポートを持っていない旨と、今まで二回はそんなこと聞かれてないと通訳さんが伝えてくれます。どうやらNHSの保険料を支払ってないにも関わらず病院に来る不届き者が一定数いるので、VISAを確認する決まりがあり、前回2回とも聞かれなかったのがダメだったようです。と言いつつも、結局今回もパスポートはもちろんVISA情報を伝えることなく受付してもらえました。また、通訳さん曰く、今まで病院でパスポートを提出したことは一回もないとのこと。今回のは何やったんや…
再々診は眼圧検査と視診だけかと思いきや、前回と同様に眼球の体液循環検査と網膜の検査も受けました。曰く、毎回同じ検査を行うと(とか言いつつ、毎回微妙に違うのが謎)。
また、視診時に割と衝撃の一言が。「初診時にウイルス性って言ってたけど、ウイルス性かはわからない。ウイルス性かもしれないから抗生剤使ってたけど、治ってよかったね!」。いや、雑すぎひん??初診の時の医者は割とハッキリウイルス性って言い切ってたよ!?
とまあ、やっぱりイギリスの医者は適当でどこまで信用していいかわかったもんではないですが、経過は良好でした。
4.胸部X線検査
再々診も無事終了し、残るは胸部X線検査です。これも平日朝だったので、まずは予約変更を試みます(これ以上有給削られてたまるか)。ところが今回は血液検査と同様驚く程あっさりと終わりました。そうなるとこの章がすぐに終わってしまうので、ここで予約時に引っかかった表現をご紹介します。
例えば"15:30"と伝えるとき、私が希望を伝える時に使っていた表現は「three thirty PM」でしたのですが、予約担当者が使っていた表現は「half past three」でした。また、"15:10"なら「ten past three」といった使い方をするそうです。今回の予約電話ラッシュの際に複数回聞いて、イギリスでは一般的な表現なのかなと思います(そもそも英語できる人からしたら常識レベルで、筆者が恥を晒しただけかも知れませんが)。
そんなこんなで予約ができたので、今回も検査だけなので通訳さんなしで挑戦してきました。胸部X線検査も「Main Outpatient Entrance」だったので、また受付で確認して「まっすぐ行って右行ったら左手にあるよ!」といった感じで「X-ray department」に辿り着けました。受付の際に、GPの病院を確認されていたのに聞き取れず苦労しましたが(固有名詞を流暢な発音で言われるとまじで聞き取れない)、その後は順番になって検査室に呼ばれ、肌着でX線を撮ってはい終了。帰っていいよ!といった感じでものの15分で帰宅しました。日本だったら検査を1日にまとめてくれるのにな…
5.保険金の請求について
最後に保険金の請求についても書いておきます。加入している保険の種類に依ると思いますが、何かしらがどなたかの参考になればと思います。
今回提出した書類は以下の5項目でした。
1.保険契約証
2.保険金請求書
3.診断書
4.薬代の領収書(的なもの)
5.交通費の領収書
以下で一つずつ説明いたします。
1.保険契約証
読んで字の如く。
契約内容がわかる書類であればOK(インシュアランスカードなど)。
原本を携帯で撮影してパソコンにてPDF化して提出。日本でスキャンしておけばよかった。
2.保険金請求書
保険会社指定の書類。メールにて送付されたPDFに電子上で記入して提出。記入はAdobe Acrobatの無料ツールで頑張りました。
印刷して記載してもOKとのこと。
内容としては、共有項目(保険金請求者の情報・他の保険契約について(保険金の二重請求防止のため)・病状・振込先)と治療費用といった感じ。
そのほか、事故の場合は個人賠償責任保険など請求によって記載内容が変わるので、保険会社に記入が必要な項目を確認すると良い。
3.診断書・処方箋
4.薬代の領収書(的なもの)
病院で貰う。携帯で撮影してパソコンにてPDF化して提出。
5.交通費の領収書
バス :運賃支払い時のレシート。
携帯で撮影してパソコンにてPDF化して提出。
タクシー:配車アプリで領収書(PDF)をダウンロードして提出。
4.にて”(的なもの)”と記載したのは理由がありまして、②トラブルだらけの再診編では内容的に触れませんでしたが、薬代の領収書をもらえなかったからです。当然ながら筆者は領収書を請求しましたが、「プリンターが壊れているから印刷できない」と言われました。すかさず優秀な通訳さんが手書きでいいから領収書を出してと言いましたが答えは"NO"。前回の記事でちょろっと登場した処方箋フォームなるものに、薬代を記入して「これでなんとかして」と言われました。通訳さん曰く、数ヶ月前からプリンターはずっと壊れているとのことで、イギリスでは機械の故障が一向にされないことはあるあるのようです。筆者もエミレーツスタジアム付近のマクドナルドのレシートプリンターが何台も永遠に故障中なのを思い出しました。
当然ながら処方箋フォームでは申請はすんなり通らず、領収書を出せと保険会社から言われましたが、事の顛末を伝え、通訳さんにも確認してもらっていると強調してゴリ押ししたら、どうにか認めてもらえました。海外での保険金請求はトラブルだらけで審査が優しくなっている説。また、予約必須で血液検査受けられなかった問題も、事前に保険会社に伝えておくことでどうにか認めてもらえました。
以上のような感じで、現代ではすべて電子上で完結するので意外と簡単に保険金請求できました(電子化が多少面倒ですが)。振込もスムーズかつ、ポンド払いの場合は日本円換金時のレートまで教えてくれる明朗精算。円払いの場合はクレジットカードの利用明細など、実際に支払った金額を提示すると、その額を満額精算してくれました。
といった感じで、突如勃発したドキドキ通院イベント in the UKは無事(一旦ですが)完遂しました。改めて振り返ると、初診編で書いた通り保険に入っておいて良かったというのは間違いないですが、保険に入っていたとしても使うことになると大変でした。最初は払った分取り返せたかなという気持ちもありましたが、終わってみればやっぱ健康が一番、病院にかからないほうが幸せだなと当たり前のことを再確認しました。何もなければ安心を買ったと思えばいいのです!
ここまで読んでいただいた皆様が息災なことを願いつつ、イギリスの病院にかかったり、保険について考えたりする際にこの記事が少しでも助けになればと思いながら、この記事を締めさせていただきます。