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叛乱するする詐欺のロイエンタール

『銀河英雄伝説』のロイエンタールは序盤から野心を匂わせつつ「今ではない」と何度も叛乱を自重し、ウルヴァシー事件をきっかけに叛乱に至りました。このあたりの経緯はグダグダ感が目立ちますが、辞める辞める詐欺の会社員と同じだと考えるとしっくり来ます。

一般的に、退職を決めている人ほど会社にバレないように水面下で転職活動を行い、進路が確定してから退職願を出します。『銀英伝』だとボルテックがフェザーン占領時にルビンスキーを、グリルパルツァーが第二次ランテマリオ会戦でロイエンタールを裏切りましたが、彼らはラインハルトやクナップシュタインなど協力者に対して叛乱の意思を明かしただけで、他では一切匂わせていません。これが正しいやり方でしょう。

一方、「会社を辞める」と公言する人は周囲へのポーズや会社への牽制目的が大きいため、なかなか辞めません。ロイエンタールも「お前も国を奪ってみろ」「叛逆して玉座を狙うと言われるのは武人の誇り」など危ない発言が目立ちますが、「無理をする必要は無い」「私に反抗の隙を与えないでいただきたい」と内心で叛乱を考えてはすぐ自重しています。ウルヴァシー事件前後でも、叛乱嫌疑をかけられる→ラインハルトの出方を伺うため新領土への御幸を提案する→ルッツが殺され退路を絶たれた という結果から叛乱に至ったのであり、積極的に叛乱を望んで動いたわけではありません。「会社を辞める」を公言していたら会社との関係が悪くなり、色々なトラブルを経て働きづらくなったので転職したようなものでしょう。

辞める辞める詐欺をする人の心理としては「自己肯定感が低いので認められたい」「構ってほしい」「実は辞める自信が無い」など色々あるようですが、これらはロイエンタールに見事に当てはまります。彼は幼少期の母親のトラウマから自己肯定感が非常に低い人ですし、叛乱後のエルスハイマーの無罪を保障したり、ミッターマイヤーに「皇帝を頼む」と言ったりと叛乱の失敗を想定して動いているため、叛乱が成功する自信は全く無かったはずです。辞める辞める詐欺ならぬ叛乱するする詐欺でしょう。

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