見出し画像

漫画名言の哲学 のび太の名言から正月の真理を考える

早いもので、もう大晦日である。私は引きこもりなので関係ないが、世の方々は年末の慌ただしさに追われているのだろう。

そんな絶え間ない活動を求められる現代だからこそ、『ドラえもん』のある一場面が持つ意味は深い。
スマートフォンは24時間私たちを誘惑し、SNSは休む暇もなく更新され続ける。
この状況は、まさに「眠らない」という幻想に囚われたのび太の姿と重なるのである。


のび太の真理

「あったかいふとんで、ぐっすりねる! こんな楽しいことがあるか」

藤子・F・不二雄「ドラえもん」

この言葉は、睡眠を否定する薬を使って徹夜を試みた末に、のび太が到達した結論である。
彼は「24時間を全部勉強に使えば、2倍生きることになる」という歪んだ論理から出発した。
しかし、夜中の空虚な活動、意味のない徘徊、窓ガラスを割るという失態を経て、最後にたどり着いたのがこの深い洞察だったのである。


パスカルの「不幸」

パスカルは『パンセ』で述べている。
「人間の不幸のすべては、静かな部屋でじっとしていられないことから生じる」と。
これは単なる物理的な静けさの問題ではない。
むしろ、自己と向き合う静謐な時間を受け入れられないという、現代人の根本的な不安の表現なのである。

のび太の体験は、このパスカルの洞察を完璧に体現している。彼は睡眠という「無駄な時間」を「生産的な時間」に変えようとした。
しかし結局、本当の幸福は「あったかいふとん」という、最も素朴で本質的な安らぎの中にあったのだ。

夜中の徘徊、強制的な活動、そのすべては「静かな部屋でじっとしていられない」という現代的不安の表れに他ならない。
興味深いことに、のび太が真の悟りに至ったのは、まさにこの不安と正面から向き合った後なのである。


あたり前のことを思い出そう

実は私も若い頃、眠らずに勉強を続けようとしたことがある。しかし結局のところ、最も深い思索は、良質な睡眠の後に訪れるものだった。

のび太の「あったかいふとんで、ぐっすりねる!」という言葉は、パスカルの哲学的洞察を、子供にも分かる形で表現している。
それは単なる睡眠の快適さを超えて、現代社会への深い批判となっているのである。

これこそが真理である。
私も正月は、このドラえもんの回のように、食っちゃ寝の生活を満喫することにしよう。
パスカルも、きっと微笑んでくれるはずである。

いいなと思ったら応援しよう!