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【瓶詰めの未来】

ジョージは小さな町の郵便局で働いていた。彼の日々の業務は、町の人々から手紙や小包を受け取り、世界中の遠くへと運ぶことだった。ジョージはその仕事を誇りに思っており、手紙一つ一つを大切に扱っていた。

ある日、ジョージは一通の変わった手紙を受け取った。それはガラスの瓶に詰められた手紙だった。巻かれた紙の上には「50年後の私へ」と書かれていた。

ジョージは疑問に思った。この手紙をどこへ運べば良いのだろうか。彼は上司に相談し、最終的にはこの手紙を保管することになった。

50年後、ジョージは老いて郵便局を引退しようとしていた。そして彼は忘れていたその手紙を思い出した。彼は瓶を開け、手紙を読むことにした。

手紙には、「未来の私へ。今の私は若く、夢に溢れている。しかし、未来の私はどうだろうか。夢を追い続けているか?それとも現実に打ちのめされているか?どちらにせよ、君が幸せであることを願っている。」と書かれていた。

ジョージは手紙を読んだ後、窓の外を見た。外は明るく、町は変わらずに静かだった。ジョージは若い頃の夢を思い出し、笑った。彼はその手紙を再び瓶に戻し、机の上に置いた。

そして彼は一瞬だけ考えた後、瓶に小さなメモを追加した。「未来の私へ。私は幸せだ。夢は叶わなかったけれど、それでも私は幸せだ。だって、私は一生懸命に生きてきたからだ。」

ジョージはその後、郵便局を引退した。彼の人生は夢が叶わなかったが、それでも彼は幸せだった。そして彼はその幸せを、瓶詰めの未来に託したのだった。だが、彼が知らなかったのは、そのメッセージが未来の自分ではなく、過去の自分へ届くことだった。そこには「あなたの未来は幸せだ」というメッセージが、彼自身から送られていたのだから。


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財前ゴボウ
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