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忙しくても大丈夫!薬を飲み忘れないためのシンプルな工夫とコツ

「また薬を飲み忘れてしまった…。」
こんな風に思ったことはありませんか?

実は、私自身もこの悩みと無縁ではありません。
忙しい日々の中で「飲んだかどうか覚えていない」ことが何度もありました。
以前、ひどい風邪を引いたとき、抗生剤をきっちり飲むように指示されていたのに、回復してくるとつい「もういいかな」と思って飲むのを忘れてしまったことがあります。
その結果、なかなか症状がおさまらず、病院で「菌が残っていて、もう一度治療が必要です」と言われてしまい、改めて薬を飲み続ける重要性を痛感しました。

こうした失敗談は、私だけでなく多くの方にも共通するのではないでしょうか。例えば、訪問先の70代女性患者さんからも、こんな相談を受けたことがあります。

「最近、物忘れがひどくて、薬を飲むのをつい忘れてしまうの。気づくのは夕方になってからで…。」

薬を飲み忘れることは、健康への影響が大きいだけでなく、治療そのものを妨げてしまう可能性もあります。


では、健康に対して、どんな影響があるのでしょうか?

例えば、高血圧や糖尿病の薬を忘れると、症状の悪化や重篤な合併症を引き起こすリスクが高まります。
また、抗生物質など一定期間連続で服用が必要な薬では、途中で服用を止めてしまうことで耐性菌ができる可能性もあります。

「飲み忘れたらどうしよう」と不安になり、確認のために「とりあえずもう1回飲む」という行動を取ってしまう方もいますが、これは絶対にやめましょう。
必要以上に服用してしまうと、副作用が強く出る場合があるからです。
どうしても思い出せない場合は、その回の服用はスキップし、次のタイミングから再開するのが一般的に安全です(必ず医師や薬剤師に相談を)。

どちらにせよ、「毎回完璧に飲む」ことを目指すのは、現実的には難しいかと思います。
大切なのは、自分の生活スタイルに合った方法で少しずつ習慣化すること。


この記事では、薬を飲み忘れないためのシンプルな工夫やアイデアをご紹介します。誰でもすぐに試せるものばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。

薬を飲み忘れる原因を知る

薬を飲み忘れるのを防ぐ第一歩は、「なぜ自分が薬を忘れてしまうのか」を理解することです。飲み忘れる原因は実にさまざまです。

例えば、以下のような理由が考えられます。
忙しさで薬のことを忘れてしまう
朝の通勤前や仕事の合間など、時間に追われると薬を飲む余裕がなくなってしまうことがあります。

服用タイミングが複雑で混乱してしまう
朝食後、食間、就寝前など、薬ごとに飲むタイミングが異なると、忘れる原因になりやすいです。

薬の存在を忘れる(収納場所が悪い)
薬を目につきにくい場所に置いていると、そもそも飲むことを思い出せません。

スケジュールが不規則でタイミングがズレる
夜勤やシフト制の仕事をしている人は、生活リズムが安定せず、薬の服用タイミングもバラバラになりがちです。

体調が回復してきたことで、薬を飲む意識が低下する
症状が重いときはしっかり薬を飲んでいても、回復してきたと感じると「もう薬は必要ない」と思い込み、途中でやめてしまうことがあります。


具体例①
風邪を引いたAさん(30代女性)は、体調が悪いときは指示通り薬を飲んでいました。しかし、体調が良くなってきたタイミングで、「もう治ったから大丈夫」と思い込み、薬を途中で飲むのをやめてしまいました。
こうしたケースは特によく見られますが、抗生剤は体調が回復しても最後まで飲み切ることが重要です。
途中でやめてしまうと、菌が完全に死滅せず、耐性菌を作るリスクが高まります。

具体例②
私が訪問した60代男性の患者さんは、日中に外出することが多いため、昼の薬を飲み忘れることが頻繁にありました。
「昼に飲み忘れた分を夜にまとめて飲んでしまうこともある」と話していましたが、これも正しい服用方法ではありません。
まとめて飲むと薬が効きすぎたり、副作用が現れるリスクが高くなります。

このように、自分の生活スタイルや薬の管理方法を見直すことが、飲み忘れや誤った服用を防ぐカギになります。


飲み忘れを防ぐための工夫とアイデア

私自身も、忙しさや気の緩みから薬を飲み忘れることが多かった時期がありました。
しかし、いくつかのシンプルな工夫を取り入れることで、徐々に改善していきました。

ここでは、私が実際に試して効果を感じた方法や、訪問先の患者さんたちの成功例をご紹介します。

(1) 視覚的に薬を目に入るようにする

私が最初に取り組んだのは、薬を目につきやすい場所に置くことでした。
以前は薬を棚の中にしまっていたため、忙しいとその存在すら忘れてしまうことがありました。

そこで、キッチンカウンターや枕元など、自分が必ず目にする場所に移したところ、飲み忘れが格段に減らすことに成功しました。

具体例: キッチンカウンター、洗面所、枕元など、自分が必ず通る場所に薬を置く。

管理場所を分ける方法: 薬を飲むタイミングごとに、生活動線に沿った場所に分けておくと管理がしやすくなります。
例えば、
• 朝食後の薬と夕食後の薬は、食事をする場所(ダイニングテーブルやキッチン)に。
• 昼食後の薬は職場や持ち歩きやすいケースに入れてバッグに。
• 寝る前の薬は、寝室のベッドサイドに置く。

これにより、「いつ・どこで飲む薬なのか」が一目で分かり、飲み忘れのリスクを減らせます。

訪問先のある男性患者さんは、「曜日ごとに仕分けされたピルケースを使い始めたら、薬の飲み忘れがほとんどなくなりました」と話していました。
特に複数の薬を服用している方には、ピルケースや服薬カレンダーが非常に役立ちます。

便利アイテム:
• 透明なケースや曜日ごとに仕分けされたピルケースを活用することで、服用状況を確認しやすくする。
• 服薬カレンダーを使えば、どの薬をいつ飲んだかを一目で管理でき、特に複数の薬を服用している場合に有効です。

もしこれらの工夫でも管理が難しい場合は、薬剤師による訪問管理サービスを利用するという選択肢もあります。
このサービスでは、薬剤師が定期的に訪問し、服薬管理や飲み忘れ防止のサポートをしてくれます。特に高齢者や、服薬管理が難しいお子様にとって大きな助けになるでしょう。

詳しくは、以前の記事「訪問薬剤師サービスがもたらす3つのメリット」をご覧ください。

(2) アラームやリマインダーを活用する

他に試した方法としては、スマホのアラームを活用して薬を飲む時間を管理しています。
実際、これが一番手軽で効果的な方法でした。

最初はアラームが鳴るたびに面倒だと感じることもありましたが、数週間続けると習慣化してアラームを必要としない日も増えてきました。

方法: スマホのアラーム機能を活用し、「薬を飲む時間」に設定する。
アプリの活用: 専用の薬管理アプリを使うことで、リマインダーや服用記録機能を利用できる。

(3) 家族や友人に協力してもらう

一人で薬を管理するのが難しい場合、周りのサポートを頼るのも効果的です。
家族や友人が協力することで、飲み忘れ防止になります。

具体例
家族が声をかけてくれるだけでも習慣化しやすくなります。
あるいは、LINEやメッセージアプリを活用し、飲んだタイミングで確認し合う仕組みを作るのもおすすめです。
実際に、ある患者さんは

「家族とLINEグループを作り、飲んだタイミングでメッセージを送るようにしたら忘れることが減った」と話していました。

このように、ちょっとしたサポートが大きな効果を生むこともあります。

訪問薬剤師サービスの活用例:
家族の負担を軽減しつつ薬の管理を徹底したい場合、訪問薬剤師サービスを利用する方法もあります。
薬の仕分けや服薬スケジュールの見直しをプロがサポートするため、安心して生活を送れるようになります。

(4) 日常の行動に組み込む

既に日常的に行っている習慣と組み合わせることで、薬を飲むのを忘れにくくする方法です。
具体例
• 朝食後に必ず薬を飲むようにする(食卓に薬を置いておく)。
• 就寝前の歯磨き後に薬を飲むルーティンを作る(洗面所やベッドサイドに置く)。
• 休日の服用が不規則になりがちな場合は、食後のコーヒーを飲むタイミングなど、目印になる行動と組み合わせる。

体験談
私が訪問した患者さんの中には、「歯磨き後に必ず薬を飲む」と決めたことで飲み忘れがなくなった方もいらっしゃいます。
初めは意識的に取り組んでいたそうですが、次第に習慣になり、特別意識しなくても薬を飲むことが自然な流れになったとのことです。

ポイント
新しい習慣を作るのは最初が大変ですが、既にある行動とセットにすることで負担が軽減されます。
「何かをしたら薬を飲む」という流れを意識するだけで、飲み忘れが大幅に減ることが期待できます。


飲み忘れが続いた場合の対策

それでも薬を飲み忘れてしまうことが続く場合は、状況に応じてさらに具体的な対策を講じる必要があります。
ここでは、飲み忘れが改善しない場合に試してみるべき対策をご紹介します。

(1) 医師や薬剤師に相談する

まずは、かかりつけの医師や薬剤師に相談してみましょう。
飲み忘れの原因や生活スタイルに合わせて、服用回数やタイミングの調整を提案してくれる場合があります。

具体例
「1日3回」の服用が負担であれば、「1日1回」で済む薬への変更を検討してもらう。
薬によっては、1回の服用で1日中効果を持続させることができるものもあります。これにより、服薬回数が減り、習慣化が楽になることがあります。

ポイント
処方の変更にはリスクも伴うため、自己判断せず、必ず専門家に相談してください。

(2) 服薬支援機を活用する

最近では、時間になると薬を自動で取り出せる「服薬支援機」も普及しています。
これにより、薬の管理が手軽になり、飲み忘れの防止につながります。

活用方法
服薬支援機に薬をセットしておくと、指定した時間に音や光で通知が届きます。
取り出し忘れがある場合は記録に残るため、家族や訪問薬剤師が状況を把握するのにも役立ちます。
特に、高齢者や、複数の薬を服用している方におすすめです。

(3) 訪問薬剤師サービスの利用

自分や家族だけで薬の管理をするのが難しい場合、専門家の力を借りるのも一つの方法です。
訪問薬剤師は、薬の仕分けや管理を代行するだけでなく、飲み忘れを防ぐためのアドバイスも行います。

具体例
訪問薬剤師が1週間分の薬を服用タイミングごとに仕分けし、飲み忘れがないかを定期的に確認。家族の負担軽減や安心感にもつながります。

リンク: 詳しくは、「訪問薬剤師サービスがもたらす3つのメリット」の記事をご覧ください。

(4) 周囲と協力して習慣化を目指す

自分だけで解決しようとせず、家族や友人、ケアマネージャーなどと協力することも重要です。
生活スタイルに合った服薬管理の仕組みを一緒に考えることで、無理なく継続できます。

「母が薬をよく忘れるので、私が訪問薬剤師と一緒に1週間分の薬をカレンダーに仕分けしました。その後、毎朝電話で確認するようにしたら忘れることがなくなり、体調も安定しました。」

こんなお声をいただくことも多くありました。

ただし、家族や周囲の負担が大きくなりすぎないような配慮しましょう。
無理に周囲だけで解決しようとすると、負担が蓄積してしまうことがあります。このような場合も頑張りすぎずに薬剤師の手を借りることを検討してみてください。
専門家の力をうまく活用することで、家族や周囲も安心してサポートできる環境を作ることができます。


まとめ:無理なく続けられる方法を見つけよう

薬を飲み忘れないためには、自分の生活スタイルに合った工夫を取り入れることが大切です。一度に全てを完璧にする必要はありません。
視覚的に薬を管理したり、家族や周囲と協力したり、日常の行動に組み込むなど、小さな工夫から始めてみましょう。

それでも飲み忘れが改善しない場合は、医師や薬剤師に相談し、服薬支援機や訪問薬剤師サービスといったプロの力を活用することも選択肢の一つです。
無理に一人で抱え込む必要はありません。

日々の服薬管理が負担にならず、安心して治療を続けられる環境を整えることが、健康を守る第一歩です。この記事が、皆さんの服薬習慣を見直すきっかけになれば幸いです。



この記事は、現役薬剤師として在宅医療に携わり、大手調剤薬局で在宅医療の責任者を務めている「薬剤師 × 在宅医療アドバイザー」が執筆しました。
これまで多くの患者さんやご家族と向き合い、安心して治療を続けられる環境作りをサポートしています。専門知識と経験を活かし、服薬サポートや在宅医療に関する情報をお届けしています。


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最後までご覧いただきありがとうございました。

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