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薬剤師が解説!ジェネリック医薬品と選定療養の新ルール

みなさん、こんばんは。
在宅医療_薬剤師ラボです。

最近ニュースで話題になりがちな「選定療養」、みなさんはご存知でしょうか。
薬局で薬をもらう時、少し値上がりするんでしょう? といった印象を持たれている方もいらっしゃるかと思います。

薬剤師でもなかなか分かりづらい制度ですが、今日はそのあたりを分かりやすくお伝えさせていただきます。

あわせて、ジェネリック医薬品のおさらいもしていきましょう。


2024年10月からスタートした「選定療養」により、医薬品選びがこれまで以上に重要になっています。
特にジェネリック医薬品(後発医薬品)と先発医薬品の選択に関して、患者さんの負担がどのように変わるのかを理解することが大切ですよね。
今回は薬剤師の視点から、ジェネリック医薬品の特徴や選定療養についてわかりやすく解説します。


ジェネリック医薬品とは?特徴と現状

ジェネリック医薬品は、先発医薬品(特許が切れた薬)と同じ主成分を使用して製造された薬のことです。
先発医薬品の特許期間が終了すると、他の製薬会社が同じ主成分を使って製造できるようになり、これがジェネリック医薬品として市場に出回ります。


ジェネリックの利用状況

厚生労働省のデータによれば、2023年薬価調査において、後発医薬品の数量シェアは80.2%に達しています。
世の中に出回ってるお薬の80%以上はジェネリックだと思っていただければ分かりやすいでしょうか。

また、2021年度のNDBデータでは、80%以上の使用率を示す都道府県が29に上るなど、全国的にジェネリック医薬品の使用が進んでいます。

さらに、全国健康保険協会(協会けんぽ)の令和5年度の報告書によれば、ジェネリック医薬品の使用割合は年々増加傾向にあり、医療費削減に大きく寄与しています。
私自身が勤務する調剤薬局でも、ほとんどの患者さんがジェネリック医薬品を使用しており、国の推奨もあり、患者さんの理解が深まっていることを実感しています。


外用剤(塗り薬・湿布)での注意点

内服薬ではジェネリック医薬品と先発医薬品の違いがほとんどない一方で、外用薬(塗り薬や湿布など)については使い心地や塗り心地に差を感じる場合があります。
これは、主成分が同じでも基剤(薬のベースとなる成分)や添加物が異なることによるものです。

よくある患者さんの声
• 「ジェネリックの湿布薬は粘着力が弱くてすぐ剥がれる」
• 「塗り薬のジェネリックはベタつきが気になる」

こうした違いは薬の効果に影響を与えるものではありませんが、使い心地が大切な外用薬では、患者さんの満足度に影響を及ぼす場合があります。

薬剤師としての提案
外用薬のジェネリックで使い心地に違和感がある場合でも、他のジェネリック製品を試すことで相性の良いものが見つかることがあります。薬局で取り寄せや代替品の提案が可能な場合もあるので、ぜひ薬剤師に相談してください。


昔のイメージと現在のジェネリック医薬品

かつては「安かろう悪かろう」といったイメージを持つ方もいました。
特に初期のジェネリック医薬品では、添加物や製造工程の違いから、先発医薬品と比べて効果が劣るのではないかと懸念されることもあります。
実際、当時は国の基準が甘かったこともあり、効果が劣るものも流通していたと聞きます。

しかし、現在のジェネリック医薬品は、国の厳しい基準をクリアし、先発医薬品と薬効が同等であることが保証されています。
主成分は全く同じで、添加物が異なる点は事実ですが、通常の使用においてその影響はほとんど問題になりません。


選定療養とは?医薬品選びにおける新たなルール

2024年10月からスタートした選定療養制度では、後発医薬品(ジェネリック医薬品)が存在する先発医薬品(長期収載品)を希望する場合に、先発医薬品と、薬価が最も高い後発医薬品との差額の1/4が保険外負担(つまり自費)となります。
この変更により、先発医薬品を選ぶ場合の負担がこれまでよりも増える仕組みです。

例で見る新制度の仕組み

例えば、以下のようなケースを考えてみましょう:
• 先発医薬品の薬価:1,000円
• 最も高い後発医薬品の薬価:800円
• 差額:200円

この場合、200円の1/4(50円)が保険外負担となります。患者さんは通常の自己負担額に加えて、この50円を自費で支払う必要があります。

「保険外負担」とは?

ここで注意が必要なのは、この「保険外負担」が通常の自己負担割合(1~3割)とは異なるという点です。
差額の1/4はそのまま全額を自己負担することになるため、従来と比べて負担額が増えるケースが出てきます。
この仕組みによって、ジェネリック医薬品を選ぶことで医療費を抑える効果がさらに強調されるようになりました。
実際のところ、ほぼ強制的にジェネリックへの切り替えが進んだのではないでしょうか。


海外のジェネリック利用状況

ジェネリック医薬品の利用は、日本だけでなく世界的にも推進されています。

例えば:
• アメリカでは、ジェネリック医薬品の利用率は90%を超えています。
医療保険制度が十分でないアメリカでは、医療費削減のためにジェネリック医薬品が非常に重要な役割を果たしています。
多くの医師がジェネリックを第一選択として処方するよう推奨しており、患者にとっても手ごろな選択肢です。

• ヨーロッパでは、フランスやドイツで70~80%の利用率を記録しています。
これらの国では、医療費削減と医薬品アクセスの公平性を目的に、ジェネリックの使用が政策的に後押しされています。

• インドでは、ジェネリック医薬品が医薬品市場の大部分を占めています。
安価で高品質なジェネリックを国内外に供給する「ジェネリック大国」として知られています。

こうした世界的な動きを見ると、日本でもジェネリック利用のさらなる推進が、医療費削減や患者負担の軽減に不可欠であることが理解できます。


まとめ

ジェネリック医薬品の普及や選定療養制度の導入は、患者さんに新たな選択肢と負担をもたらしました。
しかし、正しい情報を理解し、適切に活用することで、費用面の負担軽減や安心した医薬品の利用が可能です。

• ジェネリック医薬品は主成分が同じで、薬効もほぼ同等。多くの場合、費用を抑える有力な選択肢となる。
• 選定療養制度では、先発医薬品を選ぶ場合に差額の1/4が保険外負担になるため、ジェネリックの利用がさらに推奨されている。
• 外用薬など、使用感に違いが出る場合もあるが、複数の選択肢から最適な薬剤を探すことが可能。

薬剤師や医療機関と連携することで、負担や不安を軽減しながら自分に合った医薬品を選んでいきましょう。



本記事は、「在宅医療を考える 薬剤師ラボ」を運営する薬剤師が執筆しました。
患者さんやそのご家族、医療従事者の皆さまが在宅医療について正しい知識を得られるよう情報発信を行い、生活の質を向上させるお手伝いをしています。

これまでに在宅医療の現場で培った豊富な経験をもとに、在宅での服薬管理や医薬品の適正使用をサポートしてきました。
また、医療費の負担軽減や患者さんに最適な選択肢を提案するため、最新の制度や医薬品情報に常にアンテナを張っています。

「在宅医療_薬剤師ラボ」は、患者さんとその家族の生活をより豊かにすることを目指して、役立つ情報や資料を提供しています。
ジェネリック医薬品や選定療養に関する今回の記事も、皆さまが日々の医療費負担を軽減し、より安心して医療を受けられるようサポートする一環です。

ぜひ、在宅医療や薬剤師訪問サービスに関するご相談があれば、気軽にお問い合わせください。私たちは、患者さんの生活が少しでも楽になるよう全力でサポートいたします。

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