82【経営者が債務者格付を知る効果】地方在住経営コンサルタントの思索
写真はかつて岡山県に存在した、井笠鉄道で使用された機関車です。記念館で保存されています。
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はじめに
「自社の本当の姿を知ってみたくありませんか?」
私は現在、岡山県倉敷市にて岡山県内と兵庫県を中心に年商10億円規模までの中小、零細企業経営者向けに財務を軸とした経営コンサルタントを営んでおります。その活動の中で日々感じることは、財務面から客観的に企業の実態を把握しなければ改善施策を提案することはできないという原則です。
そこで私はたいていの企業が決算期毎にこっそり取引金融機関に格付評価されているプロセスを活用し、自社の債務者格付と置かれた状況を客観的な数値で理解してもらうようにしています。その中で、経営者の方々の反応は実に様々です。
「自社の債務者格付を知ったところで一体何になる?」
「格付なんか知りたくもない。」
「格付に何の興味もない!」
そういった声はよくあることですし、お気持ちも理解できます。(もちろん前向きに興味を持って接してくださる経営者も多数おられます。)しかしながら、中小零細企業の金融においては、まだまだ銀行を始めとした間接金融が主役です。要は企業の生命線の一つが銀行融資です。
特にこれから増えるであろう再生フェーズの企業は銀行を始めとした取引金融機関の融資抜きには考えられません。
取引金融機関にどう評価さえているのかを知ることは、最短距離で修正点を見つけることになります。
言い換えるなら自社の急所を知る手掛かりになります。
これは大きいことですよね?
世代なのでドラゴンボール的に言えば、戦闘力を計る「スカウター」みたいなものです。ちょっと分かりにくくてスミマセン。
債務者格付とは?
そもそも金融機関がバタバタ倒産していた混乱の90年代後半に不良債権の実態を把握するために、我が地元岡山が選挙区であった橋本龍太郎首相が中心となり、欧米にならって一部日本流にアレンジを加え、現在の格付算定システムが出来上がりました。元々は自己査定といって金融機関の貸出金を自ら査定し、リスクに見合った引当金を積むための仕組みでした。これを融資審査に転用したのが格付制度の始まりです。
財務的な項目=定量的な項目であり、スコアの満点が129点となります。
要素と配点はというと、
安全性項目(34点)
収益性項目(15点)
成長性項目(25点)
債務償還能力項目(55点)
の4項目です。
詳しい説明をしてもマニアックになるだけなので、32点を境目に正常先と要注意先という区分に大きくわかれているという事実を知っていればまずは大丈夫でしょう。
さすが金融機関です。貸したお金が返ってくるのか?ということに主眼があるので、安全性と、債務償還能力項目の配点に比重が置かれていますね。
簡単にひとつの結論を言いますと、、、。
最低でもぎりぎり正常先という区分となる32点以上、欲を言えば、10段階ある格付けの5以上の目安となる、52点以上でありつづけることが経営の安全運転の目安と言えると考えております。
全体の表や算定フローは企業秘密に近いので断片的な説明になります。笑
すみません。
補足ですが、この考え方の基になっている金融検査マニュアルは平成31年に廃止されましたが、依然として金融機関において融資審査の土台であり続けています。(各地域金融機関複数行と県外金融機関へもヒアリング済です。)
点数の計算の仕方は公認会計士さん、税理士さん、中小企業診断士さんや、身近におられる財務の専門家に聞いてみてください。ご存知の方はたくさんおられるはずです。
以下の3つのケース毎に私が独断と偏見で考えるベストな、資金繰りを改善し、業績の向上に持っていくために、あるべきマインドと財務分野において踏み出すべき次の一手について書きます。
ケース①格付上位の場合
点数で言えば65点以上ぐらいのイメージです。言うなれば、優良先です。
経常運転資金部分まで、融資を長期(期間1年以上)で借りてしまっている場合は更に資金繰りが楽になるので、当座貸越(短期継続融資)の設定を試みるべきです。ちょっとお金が必要な場合は、バカ高い手数料が取られるだけで、たいして対外的な信用力が上がるわけでもない融資形態の、銀行保証付私募債なんかの売り込みがよくあると思いますので注意してかわしてください。(お付き合いもあるのでケースバイケースではありますが、、、。)
多少、優位な立場にあって、取引金融機関の支店の成績に貢献しているんだ!という自負があっても大丈夫です。決して偉そうにするというわけではありませんよ。笑
ケース②格付中位の場合
イメージ40点~50点くらいの先です。
まずやっていなければ、運転資金が必要な業種であれば当座貸越の設定を打診して交渉を試みてください。当座貸越を渋られたら、期限一括返済の手形貸付でもOKです。金融機関によってスタンスはこれもまたケースバイケースではありますが、好条件の金利水準で当座貸越枠の設定に応じてくれることもあり得ます。もちろん今までの取引振りや、まじめな経営姿勢、代表者一族の個人資産背景など総合的に判断されます。更に、そのタイミングでの金融機関の拠点長の思惑による部分も大きいです。融資は非常に生もののような部分もありつかみどころがありません。原理原則を知った上で取引金融機関毎へ求める役割と(理想の絵)を描いた上での挑戦が求められます。
金融機関からみると良くも悪くもよくある「普通の先」です。フラットな立ち位置で議論や意見の表明をおススメします。
ケース③格付が下位もしくは要注意の場合
具体的に言えば財務スコアが32点未満の格付7以下の場合は、プロパー手形貸付での調達は困難です。基本的に保証協付融資での対応になるでしょう。
この時、個人の資産状況が非常に重要になってきます。これを格付の3次評価といいます。この点については次回以降にまた書きます。もし保証協会付も含め、手形貸付が厳しい場合は資本性劣後ローン(国民生活金融公庫・来年3月で終了か!?)や年商が4億円を超えてくる場合は中央会に所属し、商工中金の取引を画策し、資金繰り改善の指導をしてもらうべきです。
専門家の助言を仰ぎながら、かなり、慎重に対応していかねばマズイ立場と言えます。
まとめ
ちょっと長くなってしまいましたが、今回のテーマは多くの経営者が知っているようで知らない「盲点」のようなものだと思います。コンサルテーションしていて、
「もう~。早く誰か教えてよ~。こんな大事なことまったっく知らなかった~。」
との感想をよくいただく分野です。
以前74回のブログでも書きましたが、融資には借りる側のセオリーがあります。たいていの場合、セオリーに則していない非効率な調達方法になっています。
要は、大事なのに知らない分野、ということです。
今回説明した格付作業は、これでもかという客観的な視点から経営における改善点をあぶり出してくれます。つまり、実態の把握の強力な一助になるのです。
言うなれば、債務者格付は自社を知る、強烈な健康診断ツールです。
不安がある方は特に、専門家と一緒に行う健康診断をおススメします。
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株式会社なかむらコンサルタンツ
代表取締役 中村徳秀
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