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『ハゲテルワールド』

少年とハゲの長い冒険の末、
ついに、次元の裂け目が開いた。

ハゲは言う。

ハゲ「今までありがとうございました。
   僕は、元の世界に帰ります。」

少年「やっぱり行くなよ!
   ハゲだけの世界なんて、変だよ!」

ハゲ「私からすれば、あなた方に毛というものが
   生えていることの方が不思議なのです。
   でも、とても楽しかった。では。」

こうして、ハゲは自分の世界に帰っていった。
ハエテルワールドからハゲテルワールドに。

次元の裂け目は閉じた。

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私の世界と、あなたたちの世界では、
一つだけ、大きな違いがあるみたいです。

それは、あなたたちに、その、、
「生えている」っていうんですか?
その、生えている「毛」が、ないんです。

あなたたちの言葉を借りれば、
世の中の人全員ツルッパゲ。
老若男女問わずにスキンヘッド。
それが当たり前なので、なにも思いませんが。

だけど、戻って来れてよかった。
いつか、私の日常も紹介しますね。

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〜1週間後〜

午前7:00→家

机の上にあるのスマホのアラームが鳴る。

私 「わっ!びっくりした!」
心臓にも毛が生えてない私は、驚いた。

寝ていたベットから起きて、
アラームを止め、
そのままの流れで、カーテンを開けた。
6畳1間の部屋に光が入る。

私 「よしっ。準備するか。」

私は、洗面台で顔を洗った。

私 「よし。あっ、歯もみがかなきゃ」

私は歯を磨いた。

私 「あ、あと、スーツに着替える。」

私はスーツに着替えた。

私  「あ、あと、頭を磨かなきゃ。」

私は頭を磨いた。

鏡を見る。

私 「よし、全身ピカピカだ。」

カバンを持って、会社に向かう

午前10:00→会社

会議が始まった。

社長も出席しているため、緊張が走る。

課長「次は、私の部下の製品を発表します。」

次は私の発表の番だ。

ふぅ。大丈夫。自信はある。

私 「はい、ここから私が発表させてもらいます。
   この製品は社会に革命をもたらすでしょう」

私は、大きめのジュラルミンケースの中から、
人間の頭の模型を取り出した。

課長「洋服屋によくある、マネキンの頭かね?」

私 「そうです。
   でも、これは製品ではありません。」

私は、そのマネキンの頭に、
黒くて細い線のようなものを、10万本くっつけた
丸い物体を乗せた、

課長「これは、、、、」

私 「ご存知でしょうが、
   我々の頭の上には、なにもありません。」

課長「当たり前じゃないか。」

私 「ですが、私は、ハエテルワールド、
   いや、不思議な夢を見ました。
   別世界の夢です。
   そこではほとんどの人が、頭にこのような、
   黒い線を乗せているんです。
   これを「毛」と呼びます。」

課長「ケ?」

私 「その世界の人々を真似て作ったのが、
   「毛」の集合体、「カツラ」です。
   カオの上を、
   ツルッとさせない、
   ライフスタイル、の略称です。
   今回制作したのは、この商品なのです。」

課長「なんだ、そんな物を製品としてだすだと!
   売れるわけないだろう!
   ふざけるな!」

課長はすぐに怒り出す。
髪の毛を逆立てるほどに。
毛があればの話だが。

私 「私は、ふざけてなどいません!」

課長「だいたい、夢の世界なんて...」

社長「落ち着きなさい。神梨課長。
   で、なぜこれが売れるのかね。」

社長は威厳がある。
後光がさして、光って見える時もあるくらいだ。
誰も逆らえない。
この世界に、心臓に毛が生えた人などいないのだ。
だが、私は、、、

身の毛もよだつほど怖い。
でも、私はよだつ毛がないので、大丈夫だ。
勇気を持って次の作戦を実行した。

私 「こちらを見てください。君、入ってきて。」

ドアが開き、
スキンヘッドの女性が入ってきた。

OL「失礼します。」   

私は彼女に、頭の形にサラサラと長細いプラスチックを並べてつけたものを装着させた。
女性用カツラだ。

OL「では、いきます。」

彼女は、長細いプラスチックを、耳にかきあげた。

課長「おぉ。」

課長だけでなく、
その場にいた全員が同じ反応だった。

課長「これは、なんだ。この気持ちは。
   今まで、
   こんなに女性にときめいたことはないぞ。」

社長「ふぅむ...」

課長「だが、それだけじゃないか!
   それをするのが流行るとでも言うのかね!」

私 「それだけじゃありません。」

OLは課長に近づいて、紙をかきあげた。

課長「なんだ、さっきと同じじゃないか!
   って、あれ?いい匂いがするぞ。
   なんだこれは!」

私 「毛に、石鹸の香りをつけました。
   これによって、癒しの効果もあるのです。」

課長「たしかに、これは、癒されるな。
   だけどな、こんなのは、その、あの、な」

私はトドメを刺しにきた。

私 「毛があればこんなことも可能です。」

私は、マジックペンで、課長の目の上に、
への字を描いた。

課長「失礼な!なんだね!人が怒っているのに!」

手鏡を差し出す。
課長は自分の顔を見た。

課長「あれ?私、なんか、表情が柔らかい?」

私 「これが、「毛」の応用、「マユゲ」です。
   まじで、
   ユカイな人に見える
   げんかくな人なのに
   で、マユゲです。」

部屋全体がざわついた。
革命の瞬間だ。

課長「いや、だがね、
   これじゃ私より君が出世しちゃ...」

社長「そこまで!不毛な議論はやめたまえ。」

ん?

社長「この商品を「カツラ」「まゆげ」を含めて、
   すべて採用する!
   君は、
   このプロジェクトのリーダーを務めたまえ」

私 「はい!」

やったぞ。
ひょんなことから別世界に行った甲斐があった。
私に、莫大な利益をもたらしてくれた。
ありがとう少年。

本当は、私もずっとあの世界にいたかった。
だが、それよりも、自分の世界だ。

衝撃の事実だった。

あの世界では、望んでハゲている人がほぼいない。
では、私たちはなんなのだ。
私たちにも、「毛」がほしい。
不平等だ。

いや、私たちの世界だけで見れば、

「平等」

だったのかな。

....もしかしたら、
「毛」の存在はない方が世界は幸せなのかもな。

でも、こっちにだって、争いごとや、差別、
不平等なことはたくさんある。

あんまり変わらないな。
毛が生えたようなものか。

なんて考えながら、本日の業務を終えた。

18:00→家

私は飼っているハムスターに、
「毛」で作った、ふわふわの服を着せた。
こっちの方がもっと人気が出そうだ。

〜終わり〜

あとがき
この世界には、すごく可能性を感じているので、
機会がありましたらもっと深掘りした作品を作りたいと思っています。
自分が薄毛を恐れていることがきっかけでしたが、
より深いメッセージが隠れていそうです。
これからも毎日書いていこうと思っているので、
ぜひフォロー・スキ、おねがいします。
あなたの作品も見に行きます。

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