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アンパンマン裏話『ジャムの葛藤』


ある日、パン屋さんではなく、パン工場で起きた事件です。 
ここで一番偉い、ジャム工場長は、
パン工場のくせに、手作業でパンを作ってました。

すると、

空から「いのちのほし」が降ってきて、あんぱんに命が宿りました。
こうして、アンパンマンは生まれたのです。

ジャム工場長は思いました。

「わしの顔そっくりのパン作ってたら、命が宿っちゃった。」

しかし、落ちてきたのは、「いのちのほし」だけではありません。「いのちの星」を追って、たまごも落ちてきたのです。

そのたまごから生まれたのが、バイキンマンなんです。
バイキンマンは、アンパンマンに宿る、「いのちのほし」を狙っていたのでした。

そして、後は皆さんもお分かりの通り、
街を襲うバイキンマンと、ピンチになりながらもそれを倒すアンパンマンのお話が毎週金曜日に放送されているのです。

ジャムおじさんは、いつも思ってます。

「街襲われてるの、アンパンマンのせいじゃね?」

バイキンマンは、「いのちのほし」を狙ってます。
アンパンマンを誘き寄せるために、
街を襲っているんです。

「こいつがいなかったら、解決じゃね?」

放送28年目、ジャムおじさんは、
ついに気づいてしまいました。

ジャムおじさんは、決意をかためます。

夜。草木も眠る丑三つ時。
パンでもぐっすり寝ていました。
っていうかパンって寝るんだ。

「ごめんよ。アンパンマン。」

元々は、自分が作ったパン。
我が子のようなものです。
ジャムには、子供がいましたが、パン作りに没頭しすぎて、妻と出ていってしまったのです。
それに自分の顔そっくりに作ったパン。
情がうつらないはずありません。
だから、28年も気づかないふりをして、アンパンマンを守り続けてきたのです。

でも、もう耐えられない。
何の関係もない一般妖精が被害を受けるのを黙って見ているわけにはいきません。

ジャムおじさん、
手に持った、
あの、
パンを伸ばすための、
木の棒をゆっくりと振り上げ、

パンっ!!!!!
アンパンマンの体を叩きます。
顔を打っても、また再生できるからです。

カランコロン、カラン。
木の棒が床に落ちる音。

「な、なんだ、、これは。」

ジャムおじさんが作ったとき、体に詰めたあんこは、こしあんだったはずです。

しかし、そこに詰まっていたのは、粒あんでした。

「私が、作った、アンパンでは、ない?」

「なぁんだ、バレちゃったのか。」

「!?」

体の崩れたアンパンマンの、頭が、喋りだしました。

「だ、誰じゃ!お前は!私のアンパンマンを、どこにやった!」

「ひどいなぁ。
ずっと僕と一緒だったじゃないですか。
「いのちのほし」に宿ったのは、「ぼく」の体で、あなたが作ったアンパンは、28年も経ってるんだ、とっくに腐ってますよ。」

「そんなはずはない!私は確かに、私のあんぱんに「いのちのほし」が宿るのを見た!」

「それは、僕が作った幻覚だ。「いのちのほし」の力を使えば、そんなの容易い」

「なぜ、幻覚などを見せたのじゃ!」

「それは、僕という存在を受け入れてもらうため。自分が作ったパンに宿った命だと思えば、ずっとあなたのところに入れると言われたんだ。」

「言われた...?」

「おっと、口が滑ってしまった。」

「でも、お前は、わしが作っていた、わしの顔そっくりのパンなのは事実じゃないか!」

「だから違うって、あなたが作ったんじゃない」

「わし以外に、わしそっくりの顔のパンを...?」

「そう、あなたのことを愛していた。
だが、あなたは年齢差からその気持ちを遠ざけた。
だから、彼女は、パンを作った。
あなたそっくりのパンを。
その時、そのパンに「いのちのほし」が宿ったんです。」

ジャムおじさんには、1人の女の顔が浮かんでいました。
あの、いつも一緒にいた、本当の娘のように思っていたバ、バ、

バタン、

「バレちゃったのね....」

「くっ、がぁっ」
ジャムおじさんは、パンを伸ばす木の棒で叩かれました。

「あなたがいけないのよ。
私の気持ちに気付きながら、本当に好きだった!
でも、あなたは。
アンパンマンと一緒に戦って、2人で協力したあの日々も全部無駄。
もう、いいのよ。」

「バ、バ、バタコ...」

「あなたそっくりの顔の、アンパンマンさえいればいいわ。
28年経って、あなたは、ただの、おじさんになってしまったもの。
あなたが私を受け入れてくれれば、こうはならなかったのにね..」
出ていくバタコさんと、アンパンマンの顔。

「ちが..う、バ、タ、コ、」
ジャムおじさんは、胸からペンダントを取り出して、写真を見ました。
パンを食べながら、笑う、家族写真。
娘は、とてつもないボールコントロールで、ジャムおじさんの口にパンを入れています。

「私の選択は誤りだったのか.....」

パン工場の煙突から、煙が出ることは2度とありませんでした。

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