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札幌定山渓の限界リゾートマンション #限界不動産

競売物件をチェックしていたら懐かしいリゾマンが出ていました。定山渓温泉のライオンズマンション札幌定山渓弐番館です。

念のため、物件概要は下記の通りです。

10階建の2階部分で、債務者(所有者)が占有しています。管理費・修繕積立金の滞納は計37万5156円です。

定山渓にはぜんぶで5棟のリゾマンがあります。すべてバブル期に建てられたもので、うち3棟がライオンズマンションです。その中で、1階部分が大浴場になっている壱番館や各部屋に温泉に引き込まれているため配管の劣化が激しいノースピアと違って、弐番館(と参番館)は10階部分の大浴場に温泉が引き込まれているのが売りです。

私自身、太客から定山渓の物件の売却依頼を受けて足繫く通っていた経験があり、思い出深いエリアです。

どんなお客さんが買うかというと、変人です。

札幌中心部から程近い温泉地なので週末に家族で訪れようと思って購入する方がいますが、当然リゾマンなので食事は自分で作らないといけません。そこで、まず奥さんが行きたがらなくなり、利用頻度は下がっていく一方です。こうしてまっとうな区分所有者は淘汰されてしまいます。

一方で、定山渓に心の安らぎを見出す方もいます。それが変人です。変人は大体相続である程度の資産を持っていて、インカムゲインで生計を立てています。しかも、あまり人と話が合わないので、札幌中心部から近すぎず遠すぎない山奥で暮らしたいと思っています。そこで、札幌市の南端に位置する定山渓が気に入ってしまいます。この先は雪深い峠道で、さらにその先には広大な原野が続いていますからね。

一時期、コロナ禍でテレワークになった東京や大阪の方々が札幌圏にセカンドハウスを持とうと問合せをしてきたことがありましたが、そういう方は小樽を選択するようです。小樽なら朝里川温泉もあるし、イオンやニトリの入る大型ショッピングセンターもありますからね。

なので、売り手は当物件にハマる変人を見つけてくる必要があります。この手の物件はSUUMOやathomeに掲載すれば売れるというものではありません。

続いて、相場を見てみましょう。年末年始でREINSがメンテナンス中だったのでathomeを見ると、掲載中の物件はぜんぶで18件でした。
そのうち、フューデイズコンドミニアム定山渓は元々どこかの会社の保養施設だったそうで、それ以外の4棟のリゾマンと比べてやや趣きが異なります。

そこで、当記事ではフューデイズを除いた13物件を見てみます。

平均平米単価は7.3万円です。もっとも、管理規約で民泊OKのノースピアが平均を押し上げていて、それ以外の3棟だと平均6.1万円です。
なお、7番の物件はメゾネットですが、内階段が小さく登りづらいです。

これを当物件に当てはめると210万円です。

中々渋い金額が出てきました。
もし、落札者の立退き要求に占有者が従わない場合、明渡訴訟だけで弁護士費用が50万円程掛かります。また、明渡訴訟で落札者が勝訴したにも関わらず占有者が占有を継続した場合、強制執行の弁護士費用が追加で20万円程です。
占有者が残置物を残していった場合の処分費用なども考えると、単純に権利関係を整理しただけでは売却益はほとんど出ないでしょう。

当物件の資産性を上げる方法としては、管理規約を変更して民泊OKにするのが一番だと考えられます。
しかし、上記の通り、定山渓の区分所有者は変人ばかりです。どのリゾマンとは言いませんが定山渓のある物件では、管理組合の運営を巡って管理組合が二つに分裂して裁判沙汰に。さらに、総会でヒートアップした区分所有者が別の区分所有者に飛び蹴りを食らわせる事件も発生しています(被害者は骨折して入院。加害者は示談になるまで勾留されたそうです)。
しかも、管理組合が荒れているのはこのリゾマンに限らず定山渓の物件に共通していて、管理規約の変更が円滑に実現するとはあまり考えられません。

主な顧客層が変人なので、「霊感が良い」など滅茶苦茶な理由で相場の倍でも売れるのがこの手の物件の旨味です。しかし、そういう変人を見つけてくるのも中々骨の折れる作業で、当物件はひとまず自己利用を念頭に考えるのが良さそうです。

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