*結婚式記念日
10月20日。
この日、葛来にとってはちょっと特別――というのも、結婚式を挙げた日だ。
今更だが、私は既婚者だ。
20歳の時に付き合った大学の同輩と7年付き合った末に結婚した。
早いもので、結婚式を挙げてから2年も経とうとしている。
あれから2年……大変だったけれども、いい思い出だった。
でも、これ以上時が経ったらあの時の気持ちも薄れてしまいそうだから、覚えているうちに書き記しておこうと思う。
その時、葛来家はとても大変だった。
個人的な話だが、私は出版作業(花寺5巻)をしながら結婚式の準備をしていたし、何よりこの年は直前に北海道で震災があったから色々と混沌としていた。
予定通り式を挙げられたのは奇跡だったが、お互い震災のせいで激務だった。
そして旦那に至っては激務過ぎて新郎の挨拶ですら前日まで考えていなかった。
前日に考えた挨拶を本番数時間前……というか、移動中の車内で覚える。
ほ、本当に大丈夫なのだろうか……
私の心配をよそに、旦那は歌う。
「し〜んぱ〜いないさ〜〜♪」
心配しかない。
それに私は君がその歌を歌う時は極度に緊張している時だと知っている。
(なお、前に歌った時は「お嫁さんを僕にください」と父に言いに行く時だった。)
余談はさておき、式場に到着。
そこから殆ど休憩することもなく、私はウエディングドレスに着替える。
そら、髪をセットして、化粧するのだから新婦の準備はかなり時間がかかる。
――と思ったが、地毛の天然パーマのおかげで髪の毛を巻く必要がなく、通常なら1時間かかるところ30分で終わった。新婦だよな?
そんな訳で余裕を持って結婚式のリハーサルへ。
結婚式のここが怖いところ。
なんせ、リハーサルしてからすぐに本番なのだから……。
緊張する新郎、新婦。
共にバージンロードを歩む父も「楽しくやろうや」と言いつつも顔がいつもより強張っていた。
そんな緊張感が漂う中、教会の扉が開かれて神父が登場する――
「ハ〜〜イ! コンチニワー!」
神父、超テンション高え。
しかもオプションなしで最初から外国人。
(※外国人の方を指名すると課金されるところもある)
神父の明るさに頬が引き攣る私。
それでも神父はそんな私たちの緊張をほぐすようににこやかに笑う。
「ワオ、二人トモ綺麗デ格好良イネー。デモ、緊張シテルノ〜? ダイジョブヨー」
うん、やっぱりテンション高え。
でも、我々にはこれくらいの明るさがちょうどいいかもしれない。
さて、いざリハーサル。
とりあえず先に神父の説明を聞き、一旦一通りやってみることに。
だが、教会の扉が開いた途端――めっちゃ親戚がカメラ構えていた。
「これがパパラッチか」とも思う勢いのシャッター音だった。
どうやら本番は写真禁止だから「リハーサルなら撮っていいよ」と言われたらしい。
人生でこんなにカメラ向けられたの初めてだ……いや、この中でリハーサルやるの!?
もう神父の声なんて耳に入らないくらい緊張したまま、とりあえず父とバージンロードを歩く。
そして父と歩みが合わない。本当息が合わねえなあこの親子。
リハーサルからこんなので大丈夫か?
いや、無論本番も大丈夫じゃなかったんだけど。
私が持ち前の左右盲を発揮し、新郎の指輪をどっちの手に入れるかわからなくなったり。
まさか公開接吻するとは思わず、私の顔の位置が決まらなかったり……
ごめん、戦犯私だわ。
そんな若干(?)ぐだついた式でも、姉は始終泣いていた。まだ結婚式でっせ。
まあ、これからの披露宴では姉だけでなく、いろんな人を泣かすのだが。
それと、これは後から聞いた話だが……あの超テンション高い神父は葛来夫婦の大学の英語講師だった。
そら、運命が彼に任せますわな。
後半へ続く……続くの?
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