ヴァルトジャパン 代表取締役 小野貴也さんインタビュー
本日インタビューするのは、ヴァルトジャパン株式会社の代表取締役 小野貴也さん。国内最大級の障がい者特化型BPOプラットフォームを運営しています。6/30にZ Venture Capitalからヴァルトジャパン社への出資の発表を行いました。
ZVCから担当キャピタリストである大久保洸平との対談記事をお届けします。
障がい者が仕事を通じて活躍できるプラットフォーム
大久保:今日はお時間いただきありがとうございます。ではまず、読者の皆さん向けに事業概要やプロダクトについて教えいただけますか?
小野:私たちは、障がいや難病のある方が、仕事を通じて大活躍できるプラットフォームビジネスを展開している会社です。
今の日本では、“社会で活躍したい”という意志を持った障がいのある方においても、雇用機会が限定されているという課題があります。実際、障がい者の雇用率を定めた「法定雇用率」というものがありますが、この目標を達成できている企業は半分くらいと言われています。そうした、企業に就職できない方々が、労働を通じて社会参画できる場所は必要だという観点から、厚生労働省は就労継続支援事業所という障害福祉支援サービスを展開しています。そこでは一般企業のオフィスと同様に障がいのある方働いています。朝9時くらいに出社して、夕方3時や4時に退勤します。このように、仕事をして収入が得られる場所を就労継続支援事業所と呼び、全国に約2万事業所ほど、大手コンビニエンスストアと同じくらいの数存在します。この就労継続支援事業所で社会参画できるわけですが、彼らが得られる収入は、最低賃金の水準(A型)、最低賃金が保証されていないB型事業所の場合、平均して時給200円程度と非常に低い水準です。この状況が10年以上続いています。私たちはこの就労事業所で働く方が、200円と言わず300円、400円と賃金が上がっていって、もっともっと多くの産業・仕事に携わることで、より一層社会に対して貢献し、彼ら自身の経済面も改善される機会をたくさん作っていきたいと思っています。私たちが何をやっているかというと、民間企業・自治体等に対して営業して、お仕事を受注し、そのお仕事を働く意志のある就労事業支援事業所の障がいのある方や一部在宅ワーカーの方に細分化して委託しています。
彼らがマニュアルに沿って仕事をしたものを、私たちが受け取り、クオリティチェックをした後、納品するという受託型のプラットフォームを運営しています。これを2014年から約七年間、ひたすら毎日やり続けてきました。登録事業所の数は1,500を超え、登録いただいているワーカーの数は1.6万名を超え、実際に受発注してきた案件の数は1500件を越えています。7年で築きあげた事業所とワーカーのネットワークは日本最大級となっています。
このように、民間企業・自治体からの発注案件と、就労継続支援事業所・ワーカーのリソースをマッチングさせることで新たな商流を産み出すプラットフォームを運営しております。
大久保:ありがとうございます。非常に分かりやすくお伝えいただけました。
小野:勢いあまって40ページ分くらい一気にしゃべりそうになりました(笑)
大久保:そのままピッチが始まるんじゃないかと思うくらいの勢いでした(笑)
起業当初の挫折と、運命的な出会い
大久保:事業内容と解決している課題・ソリューションをお話しいただきましたが、ここまでの起業の経緯のお話もお伺いできますか?
小野:私は起業する前に、製薬会社でMRをやっていました。当時扱っていた医薬品は精神疾患系の医薬品と、生活習慣病系の医薬品だったんですが、精神疾患をお持ちの方の患者会に参加した時に、「仕事の成功体験がない」ということを多くの方から伺いました。
当時の私は薬を通じて患者さんのQOLを高めることをミッションにしていたので、患者さんにそこまで深刻な仕事上の課題があると思っていませんでした。すべて患者さんの課題は薬で解決できると思っていましたが、それだけが課題ではないということを初めて目の当たりにしました。それから、そうした課題をお持ちの方に仕事の成功体験をしてもらってQOLを高めることで、課題解決ができると感じ2、3か月後に退職して創業したのがヴァルトジャパンです。
大久保:社会の課題を感じて2、3カ月ですぐ退職して起業って、すごい行動力ですよね。毎回お話しするたびに小野さんから熱い想いを本当に感じます。2、3カ月という短いスパンで事業アイデアも作り上げたんですか?
小野:いや、まったくなかったんですよ。ミッションバリューはあったんですが、ソリューションはゼロでした。
大久保:そうだったんですね。ミッションビジョンは今のものと一緒だったんですか?
小野:まだそこまで言語化できていなくて、仕事を要因とした自殺者をゼロにしよう、というのを掲げていました。最初はそれだけを掲げて起業しました。
大久保:最初はソリューションがない状態で、ミッションビジョンをどのように実現しようとしていたんですか?
小野:まず、ビジネスモデルの資料作成から始めました(笑)
大久保:まずベゾスの紙ナプキンのように、小野さんの紙ナプキンを作っていたわけですね!
小野:そうですね。就労困難者が仕事で活躍できて、自分の居場所があると気付けるモデルをひたすら考えてピッチしてフィードバックをもらう、というのを3、4カ月は繰り返していました。当初はうつ病など対面でのコミュニケーションが難しい方に対して在宅でのコールセンター事業を提供しようと思っていました。2014年ごろの当時は、IP電話で自宅で電話が受けられるというSalesForceのサービスが注目されていて、「これだ!」と思いました。
対面でのコミュニケーションが難しくても、慣れている人との電話やチャットでのコミュニケーションならできると伺ったので、中小企業の社長秘書のような立ち位置でオペレーターサービスをやろうと思い試行錯誤してました。
大久保:今のヴァルトジャパンとは全く違うビジネスだったんですね。その事業が難しかった点や、学びはどんなものがありましたか?
小野:まずコールセンター事業は、電話をかける側のニーズが自分の思い込みでしかなかったというのがありました。
社長は忙しいから電話一本で、何でもやってくれる人がいてくれるといいと思ってましたが、ニーズがなくて全然事業がうまくいきませんでした。
そうこうしている中で営業先の就労継続支援事業所を運営している経営者の方と出会いました。これが一つのターニングポイントになりました。
その経営者の方に、障がいのあるワーカーが30人くらいいるが、営業がうまくいかず仕事が受注できていない、という課題を聞きました。その時、民間企業が発注する仕事を代わりに受注し、事業所にマッチングすることに相当な価値があると感じました。そこから今のビジネスモデルになっていきました。
大久保:事業を進めている中でペインを抱えている人を発見したということなんですね。
小野:はい。仕事が少なくて流通していないという、構造的な問題があることに、そこではじめて気づきました。
大久保:そこからソリューションの磨き込みをしていったと思うんですが、まずどんなことから始めていったんですか?
小野:まずはサプライサイドの需要は分かったので、あとは民間企業への営業をひたすら行っていきました。何でも屋になって、誰かに託したい仕事があったらまず僕に連絡ください、というアプローチをひたすらし続けました。
ターゲットは絞らず、ひたすら営業しました。
とにかく知り合いの社長に営業して、「例えばメモ書きをパワポに資料化する」という仕事を受注し、納品が完了したらそれを事例化して。その社長から他の人を紹介してもらって、同じ仕事を受注する、という横展開をひたすら続けていました
大久保:長くこの仕事をして、この事業が「いける!」と思った瞬間はどんな時でしたか?
小野:先ほどの「メモ書きをパワポに起こして資料化する」という仕事を就労継続支援事業所に依頼した時に資料のクオリティがものすごく高くて感動したんですが、その瞬間に「これはいける!」と思いました。
大久保:なるほど、明確にそのタイミングがあったんですね。
小野:ありましたね!納品する際にクオリティコントロールも必要ではなく、そのままクライアントにお渡しできるくらいの品質だったので「やっぱりすごい!」と思いました。
なので、サプライサイドへ仕事を教えたりカスタマイズする必要性はなく、単純にマッチングできていないだけだと再認識できた瞬間でした。これが一番大きかったですね。
ビッグデータを収集し、さらにスケーラブルなビジネスへ
大久保:実際のユースケースとして、どのようなものがあるのでしょうか?
小野:例えば、ECサイトの運営委託としてバナーの画像制作や、アップロード等の更新作業の代行や、事業所の作業スペースを有効活用した、自社専用ロジスティックサービスなども行っています。
様々なECモールが出てきて、ECサイトの運営工数も増えてきていますが、こうした業務を就労支援事業所で行っています。
現状、ディレクターやデザイナー、エンジニアの方が仕事の合間を探してやっていることが多く、倉庫では、人手不足等を要因に、検品や封入・梱包といっや細かい作業を行うことに限界があり、供給側が圧倒的に不足しています。働き方改革の影響もあり、現場でもより業務効率向上が求められるようになり、こうしたニーズは年々大きくなっています。
大久保:発注側の民間企業からすると、様々な委託先がある中で、ヴァルトジャパンが選ばれる理由はどんな点なんでしょうか?
小野:私たちは、競合優位性が高いマーケットにターゲットを絞って深く事業展開していっています。全国1000以上の事業所をフル活用できるマーケットに集中していて、webの運用やロジスティック、清掃の三つのジャンルに集中しています。
こうした注力マーケットでの仕事の品質を高めることが、他の企業との競争優位性に繋がっています。また、SDGsが世の中で重要視される中で、コストドリブンではなく、企業の事業成長と社会課題解決の両立に共感くださり、私たちを選んでくださる企業もたくさんいます。
大久保:今回の資金調達の背景や、資金調達を経て実現していきたいことを教えてください
小野:私たちは就労継続支援事業所と民間企業を繋ぐプラットフォームを運営していましたが、7年間蓄積してきた、事業所やワーカーの「できる仕事」「挑戦したい仕事」のビッグデータに耐えうるプロダクト強化に資金を使います。
その上で、「できる仕事」「挑戦したい仕事」などといった潜在的なビッグデータをさらに収集して、そのデータを基に効果的に民間企業に営業し、データに基づいて事業所に細分化して仕事を発注していきたいと思っています。
大久保:今まで手運用をマッチングしていたところを、テクノロジーの力で効率化して、よりスケーラブルにしていくということですね。
小野
はい。その通りです。
深刻な社会課題をベンチャーの力で解決する
大久保:最後に、会社のカルチャーや募集している人材像をお教えください。
小野:カルチャーの部分では、私たちは「social impact teams」と自分たちのことを呼んでいます。
社会課題を解決するために集まったチームであるという前提の上で、国レベルで解決しようとしている深刻な社会課題をベンチャーの力で解決することに熱量を感じる価値観を持っている人がフィットしてくれると思っています。
職種としては、まず一つはデマンド(民間企業)サイドとサプライ(就労継続支援事業所)サイドの仕事をマッチングさせるディレクターが重要な人材です。
加えて、データドリブンなプラットフォームを作っていくためにエンジニアの方や、就労継続支援事業所と経済市場との認知のギャップを埋めるために、ビジョンを分かりやすく社会に伝えていただけるデザイナー、クリエイターの方も募集しています。
大久保:例えばディレクターさんだと、どういう方が活躍しているんですか?
小野:対民間企業側へのディレクションだと、コンサル営業の経験があるメンバーが活躍しています。その企業の課題を構造化・体系化できる方は活躍しています。
対就労継続支援事業者へのディレクションでは、実際に障がいのある方に活躍してもらうためにマニュアルの作り方や作業分解、品質担保の仕組みづくりを構造的に整理して、準備できる方が活躍しています。
当然、ビジネスとしてステークホルダーの課題解決が必須なので、構造的にニーズをとらえてソリューション提供できることが重要だと思っています。
大久保:有難うございます。非常に勉強になりました。今回の資金調達でさらにスケールアップして社会により大きなインパクトを与えるヴァルトジャパンで働く方を大募集しています。ぜひご応募ください!
小野さん、今日はお時間いただきありがとうございました!
下記よりヴァルトジャパンで働く仲間を募集中!
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