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ピボットとコミュニティの再定義 パレットクラウド代表取締役 梶谷氏インタビュー

今日は、1/28(木)20:00より開催するオンラインイベント「ヤフー出身起業家に聞く!~成功するスタートアップの作り方~」のプレインタビューとして、パレットクラウド株式会社 CEOの梶谷 勉さんへのインタビューをお送りします。

「ヤフー出身起業家に聞く!~成功するスタートアップの作り方~」はヤフー社内向けのオフレコイベントを、外部公開する特別企画です。
ヤフー出身の起業家で2020年にExitを果たした株式会社ヤプリのCEO庵原さんと、パレットクラウド株式会社CEO梶谷さんのお二人をゲストに、ヤフー時代や創業時のハードシングス、Exitに至るまでのストーリーをYJキャピタルCEOの堀をファシリテーターとして伺っていきます。

▼日時、場所▼
1/28(木)20:00 @zoom webinar

▼Webinarへのお申し込みはコチラ▼
https://zoom.us/webinar/register/WN_zfy5cf1wTb2yij_gpLxBlA

▼イベント詳細はコチラ▼
https://note.com/yj_capital/n/n7e1f6dcadcdc

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パレットクラウド株式会社 代表取締役 梶谷 勉
インターネット広告配信ベンチャー企業を経てヤフー株式会社にてアドネットワーク事業の新規立ち上げ業務に従事。その後、2012年に地域コミュニティサービス『マチコエ』で起業。2016年に現社名『パレットクラウド 株式会社』に変更し、不動産管理会社向けの入居者管理サービス『パレット管理』を展開。2020年10月に大阪ガスの株式取得によりDaigasグループに参画。

地域コミュニティに着目した創業期

堀:そもそも起業を決意したきっかけから伺ってもいいですか?

梶谷:そうですね。もともと若い頃から、いずれ起業したいと思っていました。どんなジャンルで起業するかは決めていませんでしたが、ヤフーでの仕事が楽しかったのと、任せてもらったアドネットワーク事業の立ち上げが刺激的で面白く、よい経験をさせてもらっていました。
そこから起業に踏み切った一つのきっかけは、2010年前後に”UGC”という言葉がちょうど出始めたことでした。レシピだとクックパッド、コスメだとアットコスメが伸びていました。
起業するなら、ヤフーがうまくやれていないようなソーシャルの領域をうまく使いたいという想いがありました。地域情報のUGCメディアに関心はありましたが、当時は成功例もなかったので、地域情報のUGCを模索するのは面白いと思っていました。
その頃、結婚して家を購入する機会があったのですが、不動産会社からはその街の住み心地に関する情報があまり得られなかったことに気づきました。最初は不動産会社の代わりに自分たちで街の情報を取材して集めつつ、その街の住民からも口コミを集めていけば面白い事業になるのではないかと思い、2010年に会社を作りました。

堀:その当時は、ヤフーを辞められていたんでしたっけ?
梶谷:いいえ。当時はヤフーも副業は認められてもいなかったので、妻が代表になっていました。

堀:当初は、奥さんを巻き込んで起業されたんですね。初めて知りました。
梶谷:そうですね(笑)妻と不動産会社の代わりに街の情報を集めるのが面白いんじゃないかと思って、ライトに会社を作ったんです。子供が出来たあとは子育てが忙しく、私もヤフーの仕事が忙しかったのもあり、2年位会社は放置しちゃっていました。

堀:その後、本格的に創業を開始されたきっかけは?
梶谷:2011年は東日本大震災もあり、社会が大きく変わったタイミングでした。将来は世のため人のためになりたいという想いを思い出し、またソフトバンクアカデミアで孫さんから「起業家が最初にやる仕事は、自分の登る山を決めることだ」と教わった影響もあり、災害時に役立つような地域の繋がりやコミュニティを盛り上げる仕事に自分の人生をかけよう、と決意しました。
その手段として、単に地域の情報を集めるだけではなく不動産会社と一緒に入居者のコミュニティを作るのは面白そうだと思いつきました。相方の城野(パレットクラウド社CTO)が見つかった2012年のタイミングで、ちょうどヤフーにYJキャピタルが出来ると聞いて、さっそく出資のご相談をしました。

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堀:最初のメンバーは城野さんだけだったんですか?
梶谷:僕はコードは書けないので、起業にあたって、まずCTOを探し始めました。色々な人に相談をしたり声をかけましたが、やはり優秀な人ほど忙しく、なかなか見つかりませんでした。
城野は一緒に仕事したことはなかったんですが非常に優秀だと聞いていたので、まさかそんな人が来てはくれないだろうと思っていましたが、優秀な人は優秀な人を知っているのではと期待して声をかけました。起業の相談をしたところ、思いのほかプランが彼に刺さり「私がやりたい」と言ってくれました。そのときは、神様の存在を初めて感じました(笑)

堀:他の方に、お声がけをしたときはどういう感じだったのですか?
梶谷:30人には声をかけました。やはり創業メンバー探しには苦労しました。
本気でリクルーティングしようとした方は10人近くいたので、飲み代で結構お金を使ってしまいましたね(笑)

堀:城野さんは30番目だったんですか!?
梶谷:はい。30番目に1番良い人に巡り会えましたね。

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創業時、広尾のオフィスで撮影された写真(左:城野CTO、右:梶谷CEO)

堀:城野さんは他の人と何が違ったのでしょうか?
梶谷:彼自身もいずれ起業したいと思っていたのと、YJキャピタルからの出資も見え始めていたので、ご家族が安心して起業を応援してくれそうだという見込みもあったようです。

「マチコエ」サービス立ち上げとピボット

堀:開発に取り組み始めたのはいつ頃からですか?
梶谷:ヤフーを辞めて、2012年の10月から始めました。城野は優秀なので、たった3ヶ月でプロトタイプを作ることができ2013年1月に「マチコエ」をローンチをしました。

「マチコエ」とは
パレットクラウド社が起業時にローンチしたサービス。地域UGCサービスで、同じ生活圏の人たちと交流できるコミュニティを提供するサービス。賃貸マンションを中心に不動産管理会社にもサービス展開し、入居者同士のコミュニケーションを促す仕組みを提供した。

堀:ローンチ後、最初の反応はいかがでしたか?
梶谷:めちゃめちゃ良かったです(笑)地域のなくなりつつあるコミュニティを作っていくってきれいじゃないですか。誰も反対しないコンセプトなわけです。
管理会社さんに提案に行っても、「さすがヤフー出身の人は違うね」というような反応で、周りはベタ褒めでした。ですが実際に、お金払ってくれるかというと別問題でした。
例えば、「社長に稟議書を書くから、100万円掛けたらどのくらいの費用対効果になるのか一緒に考えて欲しい」と言われて、代筆で稟議書を書こうとした瞬間にパタッと私の筆が止まりました。100万円もらってコミュニティがうまくいって、入居者の口コミが集まって、コミュニティがうまく盛り上がっても、それがいくらの費用対効果になるのか、僕自身も定量的提案ができなかったんです。
あれだけ戸祭さん(元YJキャピタル副社長。現・伊藤忠テクノロジーベンチャーズ パートナー)から言われていたにもかかわらず、聞く耳を持っていなかった自分に気づきました。そこでこの事業だけでは飯を食っていけないと気づいて、ピボットすることにしました。

堀:それは2013年1月にリリースしてから、いつ気づいたんですか?
梶谷:徐々にではあったんですが、2015年にやっと気づきました。
僕ってご存知の通り頑固じゃないですか(笑)もちろん良い部分でもあると思うんですけれど、「俺は地域コミュニティ事業をやるために起業したんだ」とか、「小澤さん(元YJキャピタルCEO。現ヤフーCOO)になに言われても聞く耳を持たず俺はやりきるんだ」とか、「お茶を80円で仕入れて100円で売るような仕事をするために起業したわけじゃない」というような変なプライドがあったんです。良くも悪くも3,000万円のシード出資はあったので、やりきること、チャレンジし続けることは出来ました。

堀:そこでピボットして2年近く「マチコエ」事業を続けて、どう変わっていったんですか?
梶谷:一つ転換点になったのは、銀行口座のお金がなくなり始めたというのがありました。
もう半分会社を続けられないという悔しさがありました。小澤さん(ヤフーCOO)は、本当にお金がなくなったときに、「会社を続けるべきだ」と唯一言ってくれた方で、「手段を選ぶな。受託開発でもいいから食いつなぎ、誰に何を言われようとキャッシュフローがポジティブになる状態を作ってから次の一手を考えろと」と言ってくれて、シンプルに軌道修正ができたのが本当に助かりました。幸い、元ヤフーの知人等がパチンコメーカーのHPのリニューアル案件とか、食っていくために本業と関係のない受託仕事を回してくれたので、泥臭い資金繰りを続けながら会社を存続させることができました。

堀:その時の銀行口座はどれくらい残っていたんですか?
梶谷:おそらく覚えている範囲だと、100万円は切っていましたね。入ってくるはずの受託のお金がなかったら、給料払えない状況になっていました。

堀:従業員の方はいらっしゃったんですか?
梶谷:いえ、城野だけでした。アルバイトも従業員も含めて給料払えなくなったら終わりだと僕の中では思っていました。そして、給料が遅れるような会社を誰が信用するんだと思っていたので、給与を期限どおり払うということだけは徹底しました。

堀:他の方に相談はされていたんですか?
梶谷:相談をして教科書どおりの回答はもらうんですが、実体験を基に方針を示してくれる人はいませんでした。YJキャピタルは、相談してきたなかでもシンプルにアクションプランを示してくれたので恩を感じています。

コミュニティを再定義した「パレット管理」立ち上げ

堀:「パレット管理」の新サービスの立ち上げはどのように行ったのでしょうか?

「パレット管理」とは
200万戸以上で導入されている、不動産管理会社向けの入居者管理サービス。入居から退去まで、紙などで行われていた管理業務を入居者向けのアプリを通じてDXしている。入居者向けのクーポン配信や、電気供給プラン『パレット電気』なども付帯サービスとして展開。

梶谷:100万円払った後に100万円以上の価値が得られる、管理会社にとって分かりやすい価値は、入居者とのコミュニケーションや手続きにかかる業務コストを削減することでした。
例えば、入居者とのやり取りをDMで1枚につき100円がかかるところをアプリで1万戸に送れるようにすれば、100万円分のコストは回収できる。コミュニティを諦めるのではなく、サービスのコアを作ってからコミュニティのチャレンジをしようとしました。
名前を変えて絵の具のパレットのように、必要な機能やコンテンツを自由に組み合わせて、管理会社から入居者に提供できる仕組みですよ、と見せ方を変えたのですが、売り方を変えただけで引き合いが増えました。誰に価値を与えるか、わかり易さを考えました。

起業してからの学び

堀:経営者としていろんなご経験されてきたと思うのですが、どんな学びがありましたか?
梶谷:ヤフーはトラクションのあるメディアだったので、パワープレーで売上が作れましたが、一番の頑張りどころは社内調整や商流を整える点でした。
スタートアップの場合は世の中に必要とされているニーズを、どれだけシンプルに、かつ競合に負けないようなスピードで提供できるかが一番大事です。そこは大企業にいたときはフィルターがかかっていて見えていませんでした。そして、それが最初の苦労に繋がりました。しかし、リスクを背負って市場の生の声を聞きに行くことで、はじめてプロダクト開発力のようなものが身につきました。

今後チャレンジしていきたいこと

堀:M&Aを選んだ理由と、これから実現したいことを最後に教えてください。
梶谷:起業してからIPOを目指して経営をしていましたが、パレットクラウドのサービスで電気を売るビジネス(パレット電気)が軌道に乗り始めたタイミングで複数のエネルギー事業者から提携オファーをいただいたこともあり、会社を大きくする手段の一つとしてM&Aの可能性を考えはじめました。

最終的に大阪ガスを提携パートナーに選んだ理由としては、安定した経営基盤を持っているのでコロナ禍でも地に足をつけて事業を大きくしていける安心感が得られたのと、代表の藤原社長含めてパレットクラウドの事業を本当にリスペクトしてくださったのでグループに入ったあとも社員が幸せになれるイメージがしっかりと持てたからです。

大阪ガスのグループ全体で900万世帯くらいのお客さまと2万人くらいの従業員がいるので、今後はそのバックボーンを活かした研究開発を進めつつ、グループ全体のDX推進にも貢献していきたいですね。

堀:大企業のDXは壮大なチャレンジですね。グループは変われど、今後も応援させてください!
本日は、取材ありがとうございました!


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