見出し画像

【MTGスタンダード】バントトキシック構築の経緯【ONE環境】

はじめに

 お久しぶりです。ゼットです。昨年の夏に統率者のデッキ記事をあげて以来記事の更新が途絶えていましたが、私は元気に日々マジックに打ち込んでおります。結構ポケモンに浮気したりしたけど……
 さて、今回久々に筆を執ったのは先日リリースされた『ファイレクシア:完全なる統一』の新カードを元にしたデッキを思いつき、数日あれこれ考えたことがあった為、その足跡を残し記したいと思い立った為である。

毒性(Toxic)

 今回デッキの中心となるカード、それは≪敬慕される腐敗僧≫だ。

『ファイレクシア:完全なる統一』の人気カード

 発売前から大人気で、予約販売でも売り切れたりする注目度が高いこのカードを話題にするのは至極当たり前のような気がするが実はこのカード、全然趣味じゃない。統率者戦では勝利へのアプローチとしてより確度の高いコンボギミックをプレイすることは多々あるが、通常の構築フォーマットではコンボデッキを使用することはほぼ無く、私は万年フェアデッキ野郎なのである。加えてゲームレンジの3分類(アグロ・ミッドレンジ・コントロール)ではミッドレンジ~コントロールの中低速デッキを好んで使うので、≪敬慕される腐敗僧≫の第一印象は毒性デッキでよく見るんだろうな程度の感想だった。ではなぜ今回≪敬慕される腐敗僧≫でデッキを組もうと思ったか。単純明快である。4枚揃ったのだ。

思考の足跡

 プレリリースで開ける箱全てから顔を出してきた彼だか彼女だかを使って遊ぶうちにファイレクシアの瘴気にあてられた私は毒性デッキの構築に思考を巡らせることとなった。
 手始めに参考にしたのはTwitterに流れてきていた緑白トキシックだった。最も毒性のカードが集中している色の組み合わせだけあって毒性のカードをふんだんに取り入れたデッキだったが個人的には線の細さが気になった。飛行などの回避能力持ちがおらず、≪離反ダニ、スクレルヴ≫や白の除去札の存在があったとしてもクリーチャーの並べ合いを制するのは難しく思われた。そこで私は安直ではあるが色を足してパワーの増強を試みたのである。

アブザン(緑白黒)

 黒を足して≪グリッサ・サンスレイヤー≫や≪ふくれた汚染者≫で攻撃性能を高め、≪屍気の腐敗僧≫で毒性を後押しするというのが第一プランだった。毒性シナジーもある為強そうに思えたが、3~4コスト域のカードで戦うということは必然ミッドレンジで戦うことになり、現環境を定義する列強ミッドレンジと渡り合うには力不足と思い、断念した。


≪グリッサ・サンスレイヤー≫はともかく、≪屍気の腐敗僧≫は4コストの
クリーチャーとしてはゲームへの影響力に物足りなさを感じる。

バント(緑白青)

 記事タイトルを見てもらえると分かる通り、最終的にはこの色に落ち着くわけだが、この検討段階では≪スクレルヴの巣≫などから出てくるファイレクシアン・ダニ・トークンを≪殺戮の歌い手≫と≪クルーグ公、ウルザ≫でサイズアップして攻めるというプランだった。一見シナジーがあって綺麗そうだったのだが、この案にも問題があった。
 一つに意外にも毒性持ちでアーティファクトであるクリーチャーが少なかったのである。そうなるとそれに付随する問題として≪スクレルヴの巣≫への依存という問題が浮上してくる。シナジーカードという杖を手折られた老人を介護しながら戦い抜けるほど生易しいゲームは思いつかず、こちらも断念。

毒性ではなくアーティファクトビートダウンとしては可能性を感じる。

過去との取り組み

 漠然としたゲームプランのひねり出しでは埒が明かないと思った私は、デッキの基幹部分になると踏んだ緑白から有用なカードをピックアップすることにした。そこで私がピックアップしたのが以下の4枚である。

私が選んだトキシック四銃士

 この4枚を並べて眺めていると、なんとなく既視感を感じるカードがあった。それがこれである。

ダブスト毒兵士とダブスト謀議マーン

 以前MTGアリーナで構築して使っていた時期があるからだろうか、基本のスペックが同じ二人が脳内でオーバーラップしたその時、ある考えがよぎった。

「毒殺ヒロイックドレイク……?」

 思い立ったその瞬間はネタだなと思ったがヒロイックドレイクがオーラをはじめ自分のクリーチャーを対象に取る呪文を多用するアーキタイプである為、≪敬慕される腐敗僧≫とのシナジーがあるということに気づき、これは真面目に検討してもいいのではないかと思った。
 緑白の毒性カード群に青のスペル要素を加えることで3色になるわけだが、ヒロイックドレイクの運用時に漁っていたデッキの中に≪陽気な呪文盗み、アイヴィー≫を採用してオーラを複製しながら戦うバントカラーの亜種を見かけたのを覚えていてテキストを確認したところ、呪文の対象が増えるから≪敬慕される腐敗僧≫の能力を多段誘発させるコンボが成立することに気づいた時は震えた。この瞬間、私の毒性デッキの方向性は定まったのである。

その後

 以上が一人でデッキを模索していた時の思考の足跡である。ある程度デッキが固まった段階で、友人から青緑トキシックがアーリーアクセスで使われていて強かったらしいとの話を聞いた。参考までにと覗きにいったらコンセプトが非常に近いデッキがそこにあった。何より私がオタクカードとして発掘した(つもりになっていた)≪陽気な呪文盗み、アイヴィー≫の姿がそこにあったことに衝撃を受けた。ふ、ふーん。まぁ、勘のいい皆様ならお気づきになられて当然ですわね……
 いややっぱ辛ぇわ……
 更に本記事を執筆している本日、大手MTG通販サイト「晴れる屋」のTwitterでも青緑トキシックが紹介されており、アーリーアクセスで使われたリストからオーラ呪文が追加されていたりと私の思想に似たリストが先にどんどん世に放たれてしまった。

 さささ、さすgいややっぱ辛ぇわ……

デッキリスト

 現行のリストは以下の通りである。執筆現在(2023/2/7)では『ファイレクシア:完全なる統一』は一般リリースされているものの、MTGアリーナでは実装されておらず、実践を踏めていない。その為、対戦を通して変化する箇所は出てくるだろう。ご了承願いたい。
 また、今回は各カードの紹介を割愛する。まだ使用感を確かめられていないのもあり、今回は相対的な話をしていこうと思う。

青緑との差別化

 前の項で触れた流行の兆しがある青緑トキシックだがそれらのリストを見てなおこの路線を外れなかったのはいくつか理由がある。

≪敬慕される腐敗僧≫への依存度

 青緑トキシックは≪敬慕される腐敗僧≫と≪陽気な呪文盗み、アイヴィー≫のコンボを軸に毒カウンターの蓄積で勝利を目指すデッキだが、現行のリストを見ると毒カウンターを付与できるカードは≪敬慕される腐敗僧≫と≪ふくれた汚染者≫のみになっている。そしてデッキのスペル選択は≪敬慕される腐敗僧≫を前提としたカード選択がなされている為、≪敬慕される腐敗僧≫がないと毒カウンターでの勝利を目指しにくい構造になっている。よく同様のカードが8枚あるとデッキになると言われているが、青緑トキシックで速やかな勝利を目指すにはデッキに4枚ある≪敬慕される腐敗僧≫をなるべく序盤で引き込む必要がある。複数回マリガンしても定着して速やかに毒を盛れれば勝利できるが、マリガン回数が増えれば防御札を削らざるを得ず、不安定かつマリガン耐性は低いだろうと思われる。
 その点を緩和する為に私のリストでは青緑で採用されている≪嵐追いのドレイク≫等を不採用とし、コンボ要因の≪陽気な呪文盗み、アイヴィー≫以外のクリーチャーを毒性持ちで固めて、デッキのアイデア元となった≪照光の巨匠≫に習い、≪顎骨の決闘者≫を≪警備の抜け道≫や≪離反ダニ、スクレルヴ≫などでサポートして戦闘による毒カウンター付与も目指す構築にしている。≪敬慕される腐敗僧≫+≪陽気な呪文盗み、アイヴィー≫のコンボとアンブロッカブル毒性アタッカーの2プランがいずれも毒カウンターでの勝利アプローチになっているため、どちらかが出遅れてもゲーム全体としては一貫して勝利に向かえるのではないか、という魂胆である。

 なお、≪敬慕される腐敗僧≫への依存度問題についてはあくまで"緩和"されているだけであって全体的な構成としては≪敬慕される腐敗僧≫を意識して組まれているので引けないと厳しいゲームになる可能性は高い。頑張って引こう。

積極的、消極的

 依存度の方でも話題に上げたが、青緑トキシックは主として≪敬慕される腐敗僧≫の能力を用いた毒カウンターの蓄積で勝利を目指している。そして自身が≪敬慕される腐敗僧≫の能力を誘発できるカードのほとんどが防御札として運用したいカードになっている。その為、相手からの干渉がない状態では毒カウンターを増やしずらいのではないだろうか。≪敬慕される腐敗僧≫が戦闘に参加できないように壁となるクリーチャーを立たせて除去札を撃たないようにしていると青緑トキシック側としてはなんとも手持ち無沙汰な感じになりそうである。暇だからと≪とんずら≫のような呪文を自分から唱えてしまうとガードを下げて除去を合わせられやすくなり、最悪≪敬慕される腐敗僧≫を失ってしまうとゲームプラン崩壊にもなりかねない。
 他方、アンブロッカブル化したクリーチャーで戦闘を重ねられれば時間制限をかけつつ相手に対処を迫れる為、傍観を許さない体制が取れる。
 この点は青緑トキシックのリストでも問題視されていたのか、「晴れる屋」Twitterで紹介されていたリストでは≪警備の抜け道≫が採用されており、能力以外の部分で圧力をかけることへの意識が見られる。
 

安定性

 安定性の話題は≪敬慕される腐敗僧≫への依存度の項で話題に上げたが、これについては実はバントも大概である。このデッキが抱えたクソデカウィークポイント、それはガバガバマナベースである。採用カード全体が2コスト以下に集中しており、土地を立て続けなければいけないデッキの為、せっかくカードプールにあるのにトライオーム(≪スパーラの本部≫)が絶望的に相性悪く、最序盤のアクションを担保したい為、スローランドも避けたい。残されたのはファストランドとダメージランド。そして一番欲しい青緑のカラーはファストランドがカードプールにないのである。クリーチャーがファイレクシアンで固まっているので≪種子中枢≫なんかも一見使えそうに見えるのだが、青いスペルのキャストに充てられないのでそのうち≪島≫の方がいいと言い出しそうだったから途中で抜けた。
 マナベース全体では青緑に比重を置きたいが、第一ターンに欲しいのは緑か白(≪離反ダニ、スクレルヴ≫のため)というのも頭が痛い。誰がこんなめちゃくちゃな色のデッキを組んだのか。私である。

最後に

 駆け足で書いてきたが各カードの紹介まですっ飛ばして書いたのは新環境が本格的に始まる前にこの記事を上げたかったからである。流行がはっきり見えてしまうと自分なりの思考の足跡として残すものにも何らかのバイアスがかからないとも限らないと思ったからである。
 環境が本格始動して、このデッキを使ってより一層気に入ったならこの記事に加筆することもあるかもしれない。ひとまずは私の思考実験がどのような帰結を迎えるか楽しみである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?