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よもだ話4 野村町役場①

平成14年に野村町役場に入庁した銅之介は、町民生活課環境衛生係を拝命する。係の主な仕事は、畜犬業務、廃棄物業務、墓地および火葬業務といったものであった。係長は、その年で定年の方で、入庁1年目と退職間際あと1年とのコンビであった。

畜犬業務においては、生涯一度の畜犬登録と年1回の狂犬病予防注射は飼い主の義務となっており、その呼びかけと推進にあたる。入ってすぐの4月には、狂犬病予防の集合注射が始まり、獣医の先生に随行して、野村町全体を7日間かけて回った。当時は毎年、約600頭の犬が狂犬病予防注射を受けるようになる。集合注射にこれない犬は、後日動物病院で受けるようになる。犬も様々でおとなしい犬もいれば、気性の激しい犬もいる。毎年随行していると気性の荒い犬は頭にインプットされるので、近づかないようにするが、先生は、注射しないといけないのでそうはいかない。咬みついてくる犬もいるので先生も真剣である。狂犬病予防注射の時のエピソード(トラブル)といえば、

①シェパードを押さえつける。これは、庭に約30mほどのワイヤーを張ってそれにリングとチェーンをつなぎその間は自由に行き来できるように飼われていたシェパードを飼い主の奥様が連れてこれないといった理由から、自宅まで注射しに行った。先生が注射するので抑える役目は銅之介だ。遠くからくるシェパードが近くになると飛びついてくる。優に銅之介の背丈を超えるくらいに伸びたシェパードの首輪をつかみ押さえつけて、先生に注射を促す。とても生きた心地がしなかった。

②獣医の先生が咬まれる。集合注射の朝一番に黒色のラブラドルレトリバーがやってきて、注射の間合いに入ると今までしっぽを振っていた犬が突然先生の腕に咬みついた。必死になって先生が振りほどこうとするも犬はなかなか離さない。数十秒後にようやく離れたが、ひどいケガのため病院に直行である。その日最初の出来事であったため、その日の注射は中止となり、銅之介は予定していた場所で事情を説明して陳謝することとなる。余談ではあるが、この数年後には、別の黒いラブラドルに銅之介も腕を咬まれることになる。おとなしいと思われている犬種でも油断はできない。

③銅之介狂犬病注射をやられる。高齢の先生と回っていた時に力の強い犬がいた。それを銅之介が押さえていると突然犬が動き出した。その動きに驚いた先生が誤って銅之介に注射を刺す。すぐに抜いてもらったが、多少狂犬の抗体ができたのではないかと思う(笑)

畜犬登録および狂犬病注射とは別に不用犬の引き取りも行っていた。何らかの理由で飼えなくなった犬や生まれたばかりの子犬や捕獲した野犬などを引き取り処分することだ。当時は、安楽死させるために保健所から週1回やってきて、注射を行った後、亡くなった犬を引き取っていた。この業務が一番つらかった。現在は、愛媛県動物愛護センターへの引き取りになっているが、その業務に携わっている方々の苦労は計り知れない。

そういった殺生にかかわる業務であったため、上司の教えもあり、動物の供養するため、月1回のお日切りさんへのお参りは、欠かさないようにした。