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【詩】一万回

君の名前を一万回叫びたいときに
君の名前を一万回叫ぶことができるなら
詩なんていらなかった

「愛してる」と一万回叫びたいときに
「愛してる」と一万回叫ぶことができるなら
詩なんて生まれなかった

この唇が君の名前を何度も叫んで
君の名前が反復可能なただの記号になってしまうなら
君の名前をこの胸にしまっておくほうがいい

この唇から「愛してる」なんてうっかり発して
「愛してる」が白けた冗談のように霧散してしまうなら
この愛が君に届かないほうがいい

君の名前を叫ぶたびに込めるはずだった祈りを
一万本の花に変えて
君がいつも歩く目抜通りの脇道に植えよう

「愛してる」と叫ぶたびに込めるはずだった願いを
一万個の淡い灯に変えて
君がどこにいても足もとを照らし続けよう
 



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