僕の人生に影響を与えた3頭の馬を紹介します
この記事はPanasonic × noteのコンテスト『スポーツがくれたもの』の応募作品です
#スポーツがくれたもの というテーマ。何が書けるか考えてみたけどひとつしか思い浮かばなかった。
競馬だ
競馬はギャンブルなのか?スポーツなのか?という議論はしばしば見かけるが、そんなもの僕には関係ない。
競馬はスポーツだ
誰がなんと言おうと競馬はスポーツである。
これはギャンブルという悪いイメージを払拭したくて言ってるわけではない。そもそも、僕はギャンブルは好きだ。昔から麻雀、パチンコなど人並み以上にやってきた。社会人になって1社目を退職して次の仕事が決まるまでパチンコで食いつないでいたこともある。だからギャンブルとしての競馬も好きである。
ただ、それ以上に競馬はスポーツだ
「競馬はギャンブルでもあるしスポーツでもあるよね」
その通り。ただ、今はそういうことが言いたいわけでもない。
僕が!言いたいのは!!!
野球やサッカーなどのメジャースポーツ、もしくはオリンピックなどで日の丸を背負って戦うアスリートから受け取る感動と同等のものを僕はもらっている。それをこのテーマにかこつけて伝えたい。まずは個人的な競馬との出会いを少しだけ伝えたい。
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2001年4月1日。世紀末覇王と呼ばれ、当時無敵を誇っていたテイエムオペラオーが産経大阪杯というレースに出てきた。これが僕が初めて馬券を買った、つまり競馬に初めて触れることになったレースである。
画像引用:netkeiba.com
当時、僕は大学生だった。仲の良かった後輩が、「競馬マジでオモロいっすよ!」というので「まぁそこまで言うなら…」という流れ。正直、馬券の種類とかもよくわかってなかった。とりあえず1着を当てればいいわけよね。よし、決めた。
「オレ、このトウホウドリームってのにするわ」
直感で決めた。
「いやいや、テイエムオペラオーが負けるわけないっすよ!」
「なに?テイエムオペラオーって?」
「ぶり強いんすよ!8連勝中でG1を6勝もしとんすよ!これに逆らうのはありえませんよ!」
今でも脳内で思い出される興奮した声。ほぼ毎日一緒に過ごした、いちばん仲のいい後輩。左手首を右手で掴んで、ぐるぐる回しながら熱くしゃべるというクセがあった。屈託のない笑顔でグイグイくる。いつも楽しそうなやつだったけど、競馬のこととなると一段階ギアが上がってる感じ。
「テイエムオペラオーぶり強いっすから!さすがにここは逆らえませんよ!」
テイエムオペラオーは前年に天皇賞(春)、宝塚記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念という、G1のビッグタイトルを全て勝つという、いわゆるグランドスラムを達成した馬。圧倒的なチャンピオンホース。ここでは断然の1番人気。
単勝は1.3倍。100円買ったら130円返ってくるという、ガチガチの本命。オッズというのは世間の評価だ。世の中のほとんどの人がテイエムオペラオーの勝利を信じてたということ。
「うーん、でもオレはトーホウドリームにするわ」
世の中の評価なんて関係ない。誰になんと言われようと、自分がいいと思ったものに決める。
ネットで情報が誰にでも行き渡るようになった今、無意識に世の中の大多数を正解と信じ、合わせる生き方をしている人は多い。でも、大事なのはいつだって自分がいいと思ったものに決めること。自分のモノサシを持つこと。そんなことを競馬は教えてくれたのかもしれない。
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と、言いたいところだけど、これが初競馬なのでこの信念は競馬から学んだものではない。つまり、これに関しては競馬に出会う前の何かに教わってる可能性が高いということ。
…チクショウ、うまくテーマに落とせると思ったけどそんなに甘くない。まぁそれはおいとこう。初競馬の思い出を引き続き振り返ることに集中する。
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結果を言うと、トーホウドリームが勝った。
単勝はなんと73.4倍もついた。500円買ってたので36,700円にもなった。テイエムオペラオーが圧倒的な人気を集めていたので、これほどまでの高配当になったわけだ。すごい。
大学生だだったので、お金は嬉しかった。
が!それ以上に!!!
なんだこれ…これが競馬?衝撃がすごかった。
スタート前の緊張感…
透き通ったように綺麗な馬の目…
ドドドッと芝を蹴る蹄の音…
それに合わせるようにリズムよく重なってくる実況!!!
カッコいい!!!
ただただカッコいい。
馬も、騎手も。競馬関係者の全てが。
画像引用:Wikipedia
見終わった後、お金が増えた嬉しさより、先に感情が湧き起こってきた。
競馬…これ、すごいぞ。すごいものを見たぞ!
それからというもの、毎週欠かさず競馬を見ている。2001年の4月1日からだからもう20年以上にもなる。
何をやっても長続きしない、飽きっぽい僕が競馬だけは飽きもせず続けてる。いや、正直続けてるって感覚もない。毎日ご飯を食べるのを「生まれてからずっと続けてるんですよ!」って言わないように、衣食住と同じラインに競馬がある。
とにかく競馬は美しいのだ
大穴馬券を当ててお金が増えた事実より、惹かれるものがそこにあった。僕はそれを知ってしまった。さぁ、前置きは終わった。ここまで読んでくれてありがとう。それではいよいよテーマである #スポーツがくれたもの に移ろうと思う。(まだ始まってなかったんかい)
僕が競馬からもらったものは厳選すると3つに絞れる。それを今回はみんなに伝えたい。競馬が生み出す感動はスポーツそのものだ。
1.圧倒的という存在
僕は「圧倒的」という言葉が好きだ。何かをやるときは「圧倒的になろう」と思ってやってる。
その言葉を初めて意識したのが実は競馬である。
画像引用:日刊スポーツ
白い馬体のクロフネ
僕が最も好きな馬。この馬から「圧倒的」という言葉を教えてもらった。クロフネの走りを見れば、誰もが「圧倒的」という言葉の意味を知り、「圧倒的」という存在に憧れ、「圧倒的」を目指したいと思うはず。
初のダートG1で衝撃の7馬身差、レコード勝ち。7馬身離れてゴールした2着の馬が通常なら1着だと言えばどれだけ「圧倒的」だったかわかるはず。
どんな叱咤激励を受けるより、いや、まだまだやれる!クロフネはこんなもんじゃなかった!と己を奮い立たすことができる。是非みんなも一度レースを見て欲しい。
2.最後まであきらめない
競馬は最後の最後まで何があるかわからない。これはよく言われることだけど、二重の意味でこれを体現した馬がいる。
画像引用:JRA-VAN
黄金旅程・ステイゴールド
この馬はずっと2着続きでシルバーコレクターと言われてた馬。勝てそうで勝てない。初勝利は6戦目、重賞初勝利は6歳の春。生涯成績は50戦7勝という、数字だけみると地味な存在。
栄冠まであと一歩届かない…善戦してるけど報われない。そんなもどかしさが多くの競馬ファンから愛された。世の中は勝つ人より負ける人の方が多い。勝てなくても、がんばってる姿に自分を重ねてしまう。そんなファンが多かったように思う。
ところが!
この馬から僕がもらったものは「勝てなくてもがんばろう」という生やさしいものではない。
50戦目となったラストラン。香港で行われた香港ヴァーズという世界のG1。ドラマはここにあった。
ステイゴールドは最後方からレースを進めた。直線に向いたとき、先頭までは絶望的な距離。ラスト200メートルの時点で約5馬身。誰もが「やっぱりダメか…」と思った。
しかし!そこからがすごかった。最後の直線で追い込み、ゴール直前でギリギリ先頭の馬をアタマ差交わしてゴール。ラストランで海外のG1を勝つというドラマが待っていた!しかも絶望的な位置から。最後の瞬間は異次元のスピードに見えた。通常の競走馬ならありえない瞬発力。それはステイゴールドを応援してきたファンと関係者の想いの結晶にも見えた。
最後まであきらめない
G1を勝つまで50戦を要した長い道のり。絶望的とも思えたレース中の位置どりからの奇跡的な追い込み。ふたつの意味で最後まであきらめないことを教えてもらった。
ステイゴールドの香港ヴァーズは公式動画がなかったので興味ある人は検索してみてほしい。
ちなみに、これが日本生産馬として初の海外G1制覇。ステイゴールドは日本競馬史に名前を刻んだ。そして種牡馬になってからの活躍は競馬ファンなら誰もが知る限り。競馬ってやっぱりおもしろい。
3.言葉にならない感動
最後3つ目はもう…なんといったらいいかわからない感動。まさに競馬がスポーツだと言えるところ。
2011年3月26日。あの東日本大震災からわずか2週間後。重苦しい雰囲気が漂う日本。いちばん初めに飛び込んできた明るいニュースは競馬だったことをご存知だろうか。
画像引用:https://number.bunshun.jp/
ヴィクトワールピサ
日本を代表して世界で戦うアスリートたちに勇気をもらうことは多い。サッカーや野球のワールドカップに熱くなった経験がある人も多いだろう。実は競馬にもワールドカップがある。それが世界最高峰の賞金で行われるドバイワールドカップ。
芝やダートや距離など、さまざまなコース形態でレースを行う競馬で世界一を決めるのは難しい。ドバイワールドカップは世界最高の「賞金」という最も説得力のある要素で世界一を決めるレースを名乗った。ここまで日本馬は20頭挑戦して未勝利。世界の壁は厚かった。
2011年のドバイワールドカップは、震災直後ということもあってドバイでも震災のことが大きなニュースとして取り上げられていた。ヴィクトワールピサ陣営は「2011.3.11」という震災の日付や「HOPE」という文字の入ったTシャツを着て臨んだ。いつも以上に日本を背負って挑んだ。
レースがはじまる。最後方につけていたヴィクトワールピサは1000メートルを通過するあたりでスルスルと外から進出を開始し、先頭に並びかけた。この機動力が持ち味。
直線に入ると、これまた日本代表であるトランセンドとヴィクトワールピサのマッチレースになった。激しい叩き合いの末、ヴィクトワールピサが前に出たところでゴール。日本馬のワンツーフィニッシュとなった。
世界最高峰のレースで日本馬が勝つ。日本に明るいニュースを届けた。競馬のワールドカップはサッカーや野球と比べるとメジャーではないかもしれない。けど、震災直後のこのタイミングでのこの結果に何とも言えない魂を感じる。
日本がどん底だったあのとき、最も早いタイミングでの明るいニュースはこれだったと記憶してる。言葉にならない感動を味わった。
ヴィクトワールピサのドバイワールドカップは公式動画がなかったので興味ある人は検索してみてほしい。
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以上が僕が競馬からもらったもの、つまりスポーツからもらったものである。
人生のがんばりどころや、何かを背負って奮い立たなければならないとき。
僕はこれらのレースを見る。そして勇気をもらう。僕にとっての競馬がギャンブルだけでなくスポーツであることが伝われば嬉しい。
もし競馬好きな人がこの記事を読んでくれてたら、あなたの好きなレースと馬を教えてね。