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生活保護の誤解や実態

  こんばんは。連勤中に筆を取ってみます。何だかすいすい書けそうな予感がします。日頃から働いていたほうがよいのでしょうか。ぜひスキなど、引き続きよろしくお願いいたします。スクショはしませんから。いつも有難うございます。

 さて、今日は生活保護について少し言及してみたいと思います。キーワードは不正受給、窓口問題、就労、スティグマなどを筆頭に抽出していきます。始めに、生活保護の制度や仕組みを事実に基づいて中立的に記したあと、貧者に対するスティグマやキャンセルカルチャーなどを筆者の偏りというバイアスをかけて、書き記して参ります。


不正受給の実際

 始めに、生活保護と連想するとすぐに思い浮かぶのは「不正受給」だと思います。それは何故かと思惟を巡らすと、もしかしたらメディアの報道の仕方も関係あるのかもしれません。また、古来から貧者は差別対象になり易いです。突き詰めると貧者とは国家にとって都合が悪く隠蔽したい存在なのでしょうか。その延長線上として「芸術的」なベンチが増えているとも言われていますが、果たして真相はいかに。

 出来る限り、偏りのないように記述して参ります。

 その上で、不正受給は近年減少傾向にあります¹⁾。2021年のデータでは、全体の0.29%程度に留まっています²⁾。報道のインパクトに反比例して実は非常に少ないんですね。ただし、加えて捕捉率も2~3割と俄然少ない状況です²⁾。本当は受給資格があるうちの2~3割程度しか利用できていないのです。何か申請段階で課題があるのでしょうか。

窓口問題について

 ひとつ、「窓口問題³⁾」というものがあります。例えば生活に困窮してまず行政に向かう際に、第一段階として「相談」というプロセスを挟みます。その段階で申請者へ適切な窓口を紹介することがありますが、これが事前審査として受け取られ、「断られた」という心証を催すこともあります。実際には生活保護法は申請主義の形式を取っていますが、行政あるいは申請者双方の都合を鑑みて、申請書を渡す前に「相談」といったワンクッションを置くことがどうやら合理的なようです。場合に拠ってはこの申請過程が違法な対応に繋がることもあり、語弊を恐れず言うと現場の悲鳴が聞こえてくるようです。とは言え、当然ながら申請者には関係のないことではありますね。

 窓口問題として顕著な例を挙げると北九州の300億円ルールなどがあり、そもそも生活保護による財政負担は決して軽くなく、国の予算が割り振られ、その可動域のなかで賄っています。中々一筋縄ではいかない問題を孕んでいますね。提案としてよく挙げられることは、申請者側に立ち考えると、支援員などの第三者に立ち会ってもらうことが有用と言われています。

生活保護と就労は両立できる

 さて、ではもし自分が仮に生活保護を受給することになったとして、全く働けない状況が続くのでしょうか。第一に、受給者には高齢者や障がい者が多いです。そうした事情も鑑みた上で、受給中に余力が残っており自立したいが、いきなりフルタイム正社員は難しい人の為の中庸な制度が存在します。それが勤労控除⁴⁾です(仔細は注釈にあるURLをご参照下さい)。

 どういう制度か端的に説明をすると、受給者に対してどれほどの保護費が必要か計算されており、それをアルバイト等で補うと、全く働かないで支給される保護費より余分に使えるお金が増える仕組みになっています。つまり、見つからないように隠れて働いて不正受給として摘発され、後で返還金を払ったり生活保護が打ち切られるリスクを避けられるということです。双方にとってメリットのあるこの制度が余り周知されていない理由は何でしょうか?

スティグマの仮説

 ここからは筆者のバイアスが掛かっています。とは言え、やはり素朴に気になること、そして社会的弱者への眼差しを変えることで社会全体が少しでも良き方向へ進むことを願い、やや煽情的に疑問を呈してみます。

 皆様は何故、生活保護に対して偏見を持つのでしょうか。その根拠は何でしょうか。不正受給がごく僅かであったことが今判明しました。それでもまだ残る嫌悪感は何が源泉なのでしょうか。

 ひとつ仮説足り得るのは、日本人に多い「スパイト」効果が影響しているのかもしれません。つまり、一億総貧困時代とも形容されることがある現代日本において、働くのが苦であり、苦労してこそ美徳である規範が存在するならば、心身を休めて生存権を行使している生活保護受給者が正当だとは考えられない心理が働くでしょう。そこで「私も辛いから受給者になろう」と動く人は少ないかもしれません。貧困=悪、自己責任であるといった実体の無いスティグマが植えつけられ、あるいは個人に帰属されてしまっているのでしょうか。

 日本には「世間学」が在ります⁵⁾。日本人はとりわけ世間体を気にします。三親等以内の親族へ扶養紹介を通知されることが耐え難い、受給し偏見の目に晒されたくない、自分の中にある差別意識が活性化される(セルフスティグマ)等々…。実体の無い偏見意識に囚われ受給を避け亡くなっていく人も少なくありません。

 これは高齢者や障がい者にも同じことが言えますが、自分がこの先も健康でいられる保証はなく、生活保護受給者といった当事者になる可能性は誰しも宿っているんですね。そうすると、本当は差別の目を向けられないはずなのですが、つい最近まで優生学に一定の誤った理解がなされていたように⁶⁾、まだ人々の中にも優生思想が内在化している、あるいは新自由主義的な考えが植えつけられている可能性があり、その認知を客観視する必要があります。

おわりに

 最後に今回、生活保護を議題に上げようと考えたのは、ひとえに不正受給の少なさや、スティグマに拠る社会的損失を知って欲しかったからです。しかしながら、それを片方の立場から煽情的に取り上げたとて、読者心理としては却って差別感情が助長されるのが人の心なのではないでしょうか。そこで、中立的に淡々と事実をベースに話していくことで、逆説的にバイアスを持っている人の眼鏡のピントを合わせられるかもしれない、そう考え筆を取りました。

 この記事に限らず、事実をベースに中庸に考えていくこと、アジテートする文章に心を持っていかれないことが、現代において試されるリテラシーなのではないでしょうか。

 少しでも、社会的に困難な状況に陥っている方々の境遇がより良くなることを願って。

参考文献

¹⁾⁴⁾「生活保護制度の現状について」厚生労働省,2024 https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/000977977.pdf(参照 2024/09/20)

²⁾「8割が利用できていない、不正受給率はごくわずか。生活保護について正しい理解を」日本財団ジャーナル,2023 https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2023/94964/poverty#:~:text=%E7%94%9F%E6%B4%BB%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%AF%E5%9B%BD%E6%B0%91%E5%85%A8%E5%93%A1,%EF%BC%88%E2%80%BB%EF%BC%89%E3%81%A8%E3%81%94%E3%81%8F%E3%82%8F%E3%81%9A%E3%81%8B%E3%80%82(参照 2024/09/20)

³⁾長谷川健「生活保護における窓口問題の法的分析 ~行政手続の視点から~」四日市市役所,2020
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jichitaigaku/33/2/33_36/_pdf/-char/ja(参照 2024/09/24)

⁵⁾「新しい学問としての世間学の展開」九州工業大学,2018
https://www.iizuka.kyutech.ac.jp/kit/wp-content/uploads/2018/03/wing_satou.pdf(参照 2024/09/21)

⁶⁾谷口茂「優生思想とその批判―問題の普遍性―」南山国際高校・中学校,2019 https://cir.nii.ac.jp/crid/1390572174556178816  (参照 2024/09/20)

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