「ミニムーン」は小惑星採掘に理想的…深宇宙探査の第一歩として Morgan McFall-Johnsen によるストーリー
9月から一時的に地球の軌道上を周る「第2の月」は、「2024 PT5」と名付けられた小惑星だ。
このような小惑星は「ミニムーン」と呼ばれ、人類を宇宙の奥深くに送り込むために必要な鉱物の採掘を行う理想的な場所になる可能性がある。
小惑星の中には、地球全体の経済規模を上回る価値を持つものもあることから、宇宙での採掘は非常に大きな可能性を秘めている。
9月から2カ月の間、地球の軌道を周回することになった「第2の月」は、単なる興味深い現象のように思えるかもしれないが、実は未来の宇宙産業の予兆でもあり、それが世界経済を変える可能性もある。
天文学者によると、通常はアルジュナ小惑星帯で太陽を周回する小惑星「2024 PT5」が、2024年9月27日に地球の軌道に捉えられた。この小惑星は約57日間、馬蹄形の軌道に沿って地球を周回し、その後、小惑星帯に戻っていくと予測されている。
このスクールバスほどの大きさの小惑星は、57日の間、一時的に地球の「第2の月」としてふるまう。
NASAが示す「2024 PT5」の概要。
この小惑星は経済的にも興味深い。2024 PT5の地球周回軌道を調査した科学者の1人、カルロス・デ・ラ・フエンテ・マルコス(Carlos de la Fuente Marcos)によると、このような「ミニムーン」は鉱物の採掘に理想的なターゲットになるという。
小惑星の中には、鉄やプラチナなどの貴重な金属や水を含むものがあり、いつの日か人類が宇宙へと旅立ち、太陽系へと活動の場を広げていく際に、小惑星の採掘が役立つことになるだろう。
例えば、イーロン・マスク(Elon Musk)の火星都市構想は、小惑星の採掘にかかっている。2024 PT5のような一時的な衛星が、その重要な足がかりになるかもしれない。
「ミニムーンは、始まったばかりの『宇宙経済』にとって非常に重要だ」とマルコスはBusiness Insiderに宛てたメールに記している。ミニムーンは地球に極めて近く、軌道上に留まっているため、「低コストのミッションで到達しやすい天体のひとつ」なのだという。
莫大な価値のある小惑星
小惑星2024 PT5は玄武岩でできていると考えられているため、あまり価値はないかもしれない。基本的には「巨大な岩」だと、ローウェル天文台の惑星科学者テディ・カレータ(Teddy Kareta)がBusiness Insiderに語っている。
しかし小惑星の中には、地球全体の経済規模を上回るほどの価値がある金属を含むものもある。
例えば、アメリカ航空宇宙局(NASA)が科学調査のために探査機を送り込んだ小惑星「プシケ」は、死んだ惑星のコア(核)が露出したものだという説があり、調査によって、ほとんどが鉄とニッケルで構成されていることが分かった。それらが地球にあった場合の価値は1000京ドル(約14垓円)と推定されている。
「プシケ」の想像図。
小惑星の中には、プラチナ、金、コバルトなどの貴金属を含むものもある。
小惑星の採掘が行われたことはまだないが、NASAは2020年に小惑星「ベンヌ」からサンプルを採取したことがある。
小惑星まで飛ぶのは多大なコストがかかるが、スタートアップの中には、宇宙の岩石を採掘する方法を模索し、コスト効率の良い方法を見つけようとしている企業もある。
そんな企業の1つであるAstroForgeは、スペースX(SpaceX)と共同で小型探査機を打ち上げたが、予定していたテストが実施できなかったとSpace.comが報じている。同社は現在、さらに2つのミッションを計画しており、2025年に金属質の小惑星への最初の着陸を目指している。
Morgan McFall-Johnsen によるストーリー