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外国人向け国内ECサイトの代理購入ビジネスモデル

【海外顧客と国内ECサイトの仲介ビジネス】

 海外から日本製品をオンライン購入したいというニーズは、アパレル、家電製品、玩具・ゲーム、カメラなど多分野に広がっている。これはインバウンドEC市場として大きく成長していく可能性がある。米国や欧州からはeBay、中国では淘宝網(タオバオ)や天猫(Tmall)などでも日本製品は購入できるが、出品されている品目は限られているため、日本国内のECサイトから直接購入したいという潜在需要がある。

しかし、国内ECサイトの大半は海外からの注文、国際発送には対応していないため、海外顧客と国内ECサイトを中継するビジネスが成り立っている。東証プライム上場のBEENOS(3328)が運営する「Buyee(バイイー)」は、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語など、18言語に対応して日本製品を販売する越境ECモールで、ヤフオク、メルカリ、ZOZOTOWN、楽天などを含めた150以上の国内ECサイトと提携している。

海外顧客は、自国の言語でBuyeeにアクセスすると、これら日本国内ECサイトで販売される商品を購入することができる。注文された商品は、EC業者が国内にあるBuyeeの物流倉庫まで発送して、そこから海外への発送代行が行われる。国際送料は、複数の荷物を個別に送ると高くなるため、Buyeeでは30日間の「国内倉庫預かり」を基本サービスとして、その期間内に購入した商品を一括配送する仕組みにしている。※30日以降の倉庫保管は有料、最長90日まで。

Buyeeのビジネスモデルは、海外顧客に対して注文1件あたりの仲介手数料(300円)と国際配送料の一部を利益としていること、オプションサービスとして梱包のアップグレード、配送時の保険加入などを収益源としている。

■Buyee
https://buyee.jp/

Buyeeの会員顧客数は300万人を超しており、海外在住の日本人、日本旅行で気に入った日本製品をリピート購入するケース、日本限定のコレクターアイテムを購入したいケースなどを中心に活用されている。ただし、Buyeeを経由した国際配送料には複数の輸送手段があり、その選択を上手にしないと割高になってしまうことも指摘されており、商品によっては本体価格に対して、10倍の送料がかかってしまったというレビューもある。

国際送料は、重量とサイズ、到着日数、発送国によっても異なるため、規模の拡大と自動化を目指したサービスだけではなく、ニッチな分野でのアナログ的な代理購入サービスが成り立つ余地もある。

【日本製品代理購入サービスの開発】

 海外からの商品購入を代行するサービスは「プロキシ購入サービス(proxy buying service)」と呼ばれて、日本好きの海外在住者から利用されるようになっている。購入代行の方法は、完全に自動化されたものよりも、スタッフが仲介役となるサービスが好まれている。

横浜を拠点として2015年から運営される「Japan Rabbit」は、利用者から評価が高い代理購入サービスで、海外顧客が購入手続きを行うのではなく、購入したいショップと商品名を伝えると、日本側のスタッフが最適な注文手続き、決済、国際配送を行う。送料は事前に見積金額が提示されるため、びっくりするような高額料金がかかってしまったというトラブルも少ない。

■Japan Rabbit
https://japanrabbit.com/

注文は、日本国内にある大半のECサイト、オークション、フリマサイトに対応している。任天堂の「ポケモンセンターオンライン」で限定グッズを購入することを例にすると、購入希望者は任天堂サイトにアクセスして、ブラウザーの翻訳機能を活用しながら目的の商品を検索して探す。次に、商品ページのURLをコピーしてJapan Rabbitアプリに貼り付けると、スタッフが注文手続きを行い、国内オフィスを荷物の受け取り先とした後に、国際配送の準備を進める流れとなっている。

この方法は、日本限定で発売されている限定グッズをプレ値なしで購入できるため、海外のeBayやAmazonで転売をする副業者からも利用されている。

代理購入にかかる料金は、サービス手数料と1商品あたりのアイテム手数料(100円)により計算されるが、注文合計額が大きくなるほど実質手数料率は低くなるように設定されている。100ドルの注文では約9%の手数料がかかるが、1000ドルの注文では約3%、10,000ドルの注文では約1.4%となり、それに配送料が加算される。

さらに、Japan Rabbitでは東京都内にある実店舗の買い物代行にも対応しており、注文を受けたスタッフが電車に乗って指定された店で商品を購入する。代行料金は、通常手数料に加えて、交通費+1時間あたり4000円の移動料がかかり、秋葉原にある店舗への買い付け(約1.9時間)では、約9000円の料金になる。

商品買い付けのために、定期的に日本出張をしていた外国人バイヤーにとって、日本側で信頼できる代理購入業者を見つけることで、コストを抑えて日本の人気商材を仕入れることができる。日本には、外国人にとって魅力的な商品が沢山あり、不定期に販売される限定商品を購入代行して、成功報酬を受け取るようなサービスにも需要が見込める。

JNEWS LETTER 2024.4.4 号より 


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